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松本哉ののびのび大作戦

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これまで「高円寺一揆」や、「クリスマス粉砕デモ」など、
数々の脱力系にして最強の「運動」を繰り広げてきたカリスマ店主、松本哉のコラム連載です。
高円寺から世界へ「のびのび大作戦」、日本のみならず世界各地でも増殖中!
翻訳ツールもつけました。

まつもと・はじめ 「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)

※アマゾンにリンクしてます。

第21回「新春!新宿大騒動」

 いまさらですが、あけましておめでとうございます。
 いつから決まったのか、新年はめでたいということになってるようだが、そうは問屋が卸さない。今年は新年早々、ひと波乱あったので、ちょっと紹介してしまおう!

 昨年(09年)末は、高円寺でインターネットラジオの年越しスペシャルを放送しようということになり、大みそかの夜から、素人の乱のイベントスペース(12号店)で、鍋をつつきながらの公開放送イベントを開始した。とりあえず適当に始めていると、素人の乱の関係者や、ラジオを聴きに来た人、ヒマを持て余した近所に住んでる連中なんかが集まって来て、ラジオ放送をしていた!
 今年を振り返ったり、歌を歌ったり殴りあったりと面白くも何ともないテレビ番組の文句を言っていたところ、午後11時を回ったころ、妙なやつが会場に入ってきた。ちょうど1年前の大みそかの日に新宿駅前で人間筆をやらかしてしまった5号店バイトの村上くん(この連載でも頻出)が仲間を引き連れてやってきたのだ。しかも、こっちはラジオ放送中だって言うのに「今年も新宿でやりましょうよ!」と、言い出した。で、当然のように巨大な紙なんかも用意してきて、すでにやる気満々だった! このテンションは危ない! マズイ、これは行かないと!!

 こっちも乗せられたらやってしまう性格なので、「よし、行こう!」っていうことになり、ラジオは人に任せて急遽新宿に向かうことになった。軽トラックに、紙、バケツ、ダンボール、トラメガなどを積み込み、ヒマ人6~7人で新宿アルタ前を目指した。

 で、現場に着くと、ちょうど12時を回ったところで、群衆が大騒ぎをしていた! しかし、なんでこう、毎年毎年、日付が変わるだけだというのにこんなに人が街に繰り出してきて大盛り上がりになるんだかよくわからない! だが、まあ深いことは特に考えずに、街に人がごった返してお祭り騒ぎになるのは、いいことだ。 

 さて、そんな新宿の群衆の前に、軽トラは到着し、準備万端の人間筆を今年も決行!! 用意していた数メートルの巨大な紙をすかさず広げ、墨汁を入れたバケツを用意! そしてトラメガで「やいやい! みなさん、祭りはまだまだ続くよ~! 新年といえば書き初め!!」などと宣伝を始めると、カウントダウンも終え「なんかねえかな?」とヒマを持て余している数百人の群衆も大喜びで、集まってくる!! で、あとは、筆役の人を数人で持ち上げ、紙に墨を付けて、超巨大な書き初めをするだけ! 群衆からは「いいぞ!」「やれやれ!」「書き初めだ!!」のヤジ。 

 と、この時! またしてもみんなの嫌われ者=警察がやってきた!! 「キミたち、やめなさい!!!」と怒鳴りながら、見事な悪役ぶりを演じつつ登場! 「はい、中止、中止!」みたいなことを言いながら、せっかく準備した紙を剥がし始めた! う~ん、さすが日本一空気の読めない集団! 別に暴動起こそうってわけでもないのに、なんでこう邪魔をするかね…。 で、当然のように、数百人の群衆からは「なんだよ、これぐらいいいじゃねえかよ」「早く書き初めやっちゃえ」「おまわりどっか行け!」の大ブーイング! で、警官も数百人を敵に回してムシャクシャしてるのか、その書き初め用の巨大な紙を破り始めた! で、群衆からは一斉に「あぁ~あ!」の声! なんだ、これ。コントみたいだ!

 で、その時、ちょうどトラメガを持っていたので「いや~、警察ってのはつまんないですね~」と群衆に向かって言った瞬間!!!!!! なぜか警官がやたらキレて、「何だとこの野郎!」と、殴りかかってきた! しかも、なんの恨みか、10人がかりぐらいで殴る蹴るの暴行とはまさにこのこと! しかも、警官たち、犯行慣れしてるらしくだいぶ巧妙で、群衆から見えないように警官で壁を作ってその影で殴ってきた! おい、それずるい! さらにとんでもないことに、クビを締め始め、抵抗できないようにされたまま交番に引きずり込まれた! ちなみにこれ、法的には“任意の事情聴取”だって。

 で、交番での警官の第一声は「おまえは誰だ!」。まったく、失礼な連中だよ! 人を殴りまくっといて「誰だ」はないだろ。交番に放り込まれると、こんどは一転してあまり構ってくれない。さすがに頭にきたので「正月からつまんねえ仕事してんじゃねえよ!」などと文句を言いまくっていると「おい、おまえは浜崎あゆみと同じなんだよ!」と、わけのわからない恫喝! なんで俺が浜崎あゆみなんだよ!? どうやら、渋谷で浜崎あゆみが3分間だけゲリライベントをやって、人が集まりすぎて、略式起訴かなんかになったんだって。ケッ、浜崎あゆみは何も悪くないじゃねえか! そんなの、いちいち取り締まるほうが悪いよ。

 まあ、そんな感じで、外の騒ぎが収まったら用済みらしく“釈放”。一方、交番の外ではまだ少し騒動が続いていた。「なんで、何にもしてないやつを殴ってんだよ!」と、警官に詰め寄っている人とかがいたが、警官は「え?誰も殴ってなんかないよ」だって。こら!嘘つけ!!

・首を絞められた跡。これは我ながら生々しい! ちなみに後日、面白いので診断書でも取ってみようかと思ったが、健康保険料を払ってないことに気づいて断念!

 ちなみに、面白いのは新宿アルタ前。現場には少し破られてはいるものの巨大な紙と大量の墨汁が残されていて、そこには「LOVE」と巨大な字で書かれており、あたりが墨まみれに!!! まあ、たしかに、こんなものが路上に置いてあったらもう書くしかないからね! 誰だか知らないが、警官がいなくなった隙に、遊ぶだけ遊んだ連中がいたんだろう。でかした!!

 しかし、警察官の諸君、残念ながら今回は諸君の負けだ! なぜなら、あの日の新宿駅前の群衆の中では、警察=場を乱した大悪党ということになっている。や~い、ざまあみろ!

 でも、7~8年ぐらい前に渋谷の駅前で群衆が登った屋根が落ちて死者が出たのをきっかけに、その祭りはひたすら規制の対象になってきた。もちろん死人が出るのは全然いいことじゃないが、面倒な問題があるときは根こそぎなくしてしまうという日本社会の悪いクセがまた登場したっていう感じだ。

 たとえば、新宿でいえば、5年ほど前から画面でのカウントダウンが中止になり、アルタビジョンに「本日のカウントダウンはありません」と、わざわざ映し出されるようになった(じゃあ年が明けないのかよ!)。で、しょうがないから、集まった連中は、近くにあるセイコーの広告についているデジタルの時計を見ながらカウントダウンをするようになった。なんだかみみっちいカウントダウンになったなと思っていたら、数年前からはそのデジタル時計すらも11時50分ごろから消されてしまうようになった!! なんだなんだ、要するに、盛り上がらせないようにするっていうこと? ここまで来たらもう単なる嫌がらせだよ!

・2004年当時の新宿の年越しの瞬間。あふれる群衆で道路も止まっていた。(ちなみに今年は決行から捕獲されるまで数分だったため写真が撮れませんでした…)

 「問題が起こるといけないから、やめましょう」
 このセリフは、小学生の時から融通の利かない先生やPTAの連中から聞かされてきた、最悪の取り決めだ。これが発動されれば発動されるほど、自分たちで問題を解決できなくなるでしょ。それどころか、祭りとか、発散というかガス抜きすらも封じてしまうおかげで、不器用なやつらはうっぷんがたまりまくる。それで、人を刺しまくったり、火をつけたり、弱者を迫害したりし始めると、今度は「最近の若い連中は我慢が出来ない」という。…こら!! こら、誰がそういう世の中を作ってるんだ!!

 余談だが、人間筆に怒りまくってリンチし始める警官らも、この窮屈すぎるイカれた世の中のせいで、うっぷんがたまりまくってるんだろう。キレる警官! う~ん、いよいよ大変な世の中になってきたな、こりゃあ。

 あ、そうそう。その人間筆リンチ事件の翌日の1月2日! なんと、わがリサイクルショップ=素人の乱5号店に空き巣が入り、レジ金を持っていかれた!!!!! こら!!! こんな貧乏人の店から持っていくな!! 銀座の宝石屋で満足しとけ!

 さて、こんな感じで、今年の年始はスタートした。年を越して10分後に警官にリンチされ、翌日にドロボーに入られるという、なかなかアグレッシブな正月! さあ、今年は一体どんなことが起こることやら!! これは楽しみだ!
 みなさん、今年も貧乏人がのびのびと開き直る大作戦を開始していきましょう~。

・ドロボー被害の現場写真。なんと、杉並区発行の『なみすけ商品券』だけは全部無事!もはや価値はルーブルやジンバブエドル級に転落か!?

なんだかいきなりディープな体験で幕を開けた、
「のびのび大作戦」の2010年。
「騒ぎがなければ問題も起こらない」、
そんな事なかれ主義に覆われた、息苦しい世の中にはしたくない!
というわけで、今年もあちこちで大作戦は続く、のです。

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