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森永卓郎の戦争と平和講座 第32回

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2008年は経済面において激震が走りました。
アメリカの経済的繁栄のバブルが弾け、
世界金融恐慌といった様相に陥っています。
さて、2009年はどんな年になるのでしょうか? 
私たちが考えておくべきことは何でしょうか? 

もりなが・たくろう経済アナリスト/1957年生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁などを経て、現在、独協大学経済学部教授。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)、『年収120万円時代』)(あ・うん)、『年収崩壊』(角川SSC新書)など多数。最新刊『こんなニッポンに誰がした』(大月書店)では、金融資本主義の終焉を予測し新しい社会のグランドデザインを提案している。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。

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米国との関係を真剣に考えなければならない

 外務省が12月22日に公開した外交文書で、1965年に当時の佐藤栄作総理が、アメリカのマクナマラ国防長官に対し、「日本と中国が戦争になった場合、米国が直ちに核兵器による報復をすることを期待している」と発言していたことが明らかになった。「非核三原則」を掲げ、ノーベル平和賞まで受賞した総理大臣が、核戦争を容認する発言をしていたことは、到底容認できることではない。ただ、より大きな問題は、この佐藤発言を「米国が日本を核の傘下に入れる約束を引き出すきっかけを作った」と評価する論者がいまだにいるという事実だ。戦争を否定し、戦争をなくす努力を積み重ねるのではなく、米国に守ってもらえればそれでよいという考え方は、現実問題として、日本政府だけでなく、多くの国民に連綿と受け継がれてきた。

 他国からの侵略に対して、日本の人命や財産を米国に守ってもらうしかないという思想は、経済面での米国に対する全面追従政策に結びついた。もちろん、米国が経済的に繁栄しており、それにあやかりたいという判断も当然あっただろう。

 しかし、その米国の経済的繁栄は、2008年に単なるバブルであったことが明らかになった。30年間続いた金融資本主義のバブルが、リーマンブラザーズ証券の破綻をきっかけに弾けてしまったのだ。米国は軍事力と金融力の両輪で、世界に覇権を築いてきた。しかし金融がもたらした経済面の権力はすっかり崩壊した。米国は、これからは世界経済の中心の国ではなくなり、ローカルの国になっていくだろう。米国の覇権は軍事面だけで続いているのだ。

 そのことは、2009年以降の我々に厳しい判断を要求することになる。米国は軍事力の優位性をいまのまま維持できるのか、米国は日本を守れるのか、米国はそもそも日本を守る気があるのか。そして、もし米国依存をもうやめようという決断をしたときには、日本自身で日本の防衛を行うのか、もし軍隊を持たないということであれば、他国からの侵略を受けたときにはどう行動するのか。普段から日本の平和と安全を守るためにすべきことは何か。そうしたことを、きちんと詰めておかなければならないのだ。

 「平和と平等を守ろう」ということで一致している人たちのなかでも、そうした具体的なことを詰めていくと、異論が続出するのは間違いない。  ある民主党の議員が私にこう言った。「民主党が政権を取ったときに一番真価が問われるのは、米国と日本経団連にどう向き合うのかという態度を決めるときだ。これまでのような全面服従では、政権交代の意味はないが、かと言って、対等に渡り合おうという勇気を持つ議員がどれだけいるのかは不透明だ」。

 ちなみに、私は、日米同盟を緩やかに廃止していき、駐留米軍も撤退してもらう。米国に対しては、他の多くの国々と同様の等距離外交で付き合うというのがよいと考えている。ただし、その場合でも、軍備を持つのではなく、ODAを拡充して、日本を侵略すべきではないという世界からの支持を取り付けるべきだと思う。それでも、侵略を受けたときには、最大限の抵抗をしたうえで、占領されてしまってもやむを得ないと考えている。

 異論は当然あるだろう。ただ、そうした議論を国民レベルで活発に行い、米国が没落した後の世界のなかで、どうしたら日本の平和と平等を守ることができるのかを真剣かつスピーディーに議論することが、2009年の我々に求められていることなのではないだろうか。

米国依存を止めた時、日本の平和と安全を守るためにすべきことは何か? 
軍備はどうするのか? 2009年は、具体的なことを詰めていくべきではないのか? 
森永さんのこれらの提言を、「マガジン9条」でも重要事項と受け止め、
議論を活発に行っていきたいと考えています。
ちなみに、2009年新春企画として、
森永卓郎さん×堤未果さんの対談を予定しております。お楽しみに!

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