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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.026

沖縄県議会ねじれの成果と官僚政治のゆがみ

 沖縄県議会は、今年6月の県議選によって仲井真県知事を支える自民・公明与党が過半数割れになっている。そのため、補正予算の中から知事の訪米費用を削除するという出来事があった。国会における参議院のネジレ現象と同様の事態が沖縄県議会でも起きているのだ。知事の訪米の理由のひとつに、「在日米軍再編の確実な実施」という項目があり、それは辺野古基地建設に繋がるとして、野党が反対したのだ。普天間基地移設は国外か県外を主張する野党側にすれば当然のことだし、沖縄県民全体の世論でいっても辺野古新基地建設には反対の意見が多いのだから、これまた当然だろう。ところが、仲井真知事は、「訪米費用が認められないのはおかしい」の一点張り。融通の利かない頑固な知事である。普通なら、県議会で否決されることは分かりきっているのだから「じゃ、今回は在日米軍再編の確実な推進に関して訪米の目的からはずそう」と、はっきりいえばいいのではないか。これも、県議会のネジレ現象による民主主義機能の大いなる成果といってもいい。

 内容的には真逆だが、同様のケースが、宜野湾市議会でもあった。伊波洋一市長が普天間基地の危険性を訴えるために、ハワイにある米空軍司令部を訪問する計画を立てた上で市議会に訪米費用の予算を提案したが、拒否されたのだ。結局、伊波市長は私費で予定通りハワイを訪問したものの、外務省や防衛省の横槍が入って米軍側との面会すらかなわなかった。むろん、仲井真知事の訪米は基本的に米軍基地容認で辺野古基地建設賛成の立場なので、米軍にしてみればウエルカムという違いはある。

 こうした状況の中で、仲井真知事が開き直ったかのような大胆な発言をやったことが話題になっている。県議会に否決されたことで八つ当たりしたのかもしれないし、逆切れということかもしれない。琉球新報(10月5日朝刊)によると、「外交に至っては、今の外務省ではどうにもならんというのが実感だ。特に日米地位協定は改正を公約にしているが、外務省に行っても、運用でいこうということで、一切受け付けない」と外務省に対して不満を爆発させたのだ。さらに「外交・防衛の一元化というのは、防衛省と外務省が勝手に言っている話だから、決して一元化しちゃダメだと思う。むしろ、自由に議論できるような状況にしないとおかしくなる」「基本的な防衛政策はむしろ地域の意見をキチンと入れないと、東京で彼らがただ考えただけってのは絶対ダメだ」と、いった調子の過激な発言を連発したという。

 そして、最後の発言は「地位協定の改正は、稲嶺知事がかなり一生懸命やったが、ふっと消えている。各県の県議会と知事さんとも相談して、賛成とか反対とかの議論を長年、各県でやっていただいたが、消えてしまっている」と、かなり正直に本音を語っている。しかし、これは筆者も前からしつこく指摘していることだし、霞ヶ関の革命的改革を主張している民主党も言っていることではないか。仲井真知事や伊波市長がいくら米国と直接交渉しても、儀礼的なものにしかならない。それは、米国一辺倒路線の外務省と防衛省がすべてを独断的に仕切っているからだ。米軍基地の75パーセントをかかえる沖縄のことを本気で考えている官僚なんていないし、皆、自己保身と省益のことしか眼中にない連中と断言してもいい。

 最近の事例で言えば、沖縄返還密約文書の情報公開を求めたジャーナリストら63人の訴えに対し、外務省、財務省ともに「文書は不在」と回答した。米国の公文書や当時の外務省アメリカ局長の証言でも明らかな事実まで全否定しているのが、日本の亡国的な官僚たちの正体なのである。嘘つきは社会保険庁や農水省だけの話ではないのだ。外務省や防衛省にひたすら媚を売り、すがるだけの県政をやってきた仲井真知事ですら、もはや外務省や防衛省を変えるためには政権交代するしかないと本音を吐露しているみたいなものではないか。

「沖縄のことを本気で考えている官僚なんていない」
中央政府への絶望がにじむ、「保守派」仲井真知事の過激発言。
政権交代が成れば、状況は少しは変わるのか。
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