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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.042

ヒラリー来日と「在沖海兵隊のグアム移転協定」の真意とは?

 米国ヒラリー・クリントン国務長官の2月16日の初来日にあわせて「在沖海兵隊のグアム移転に係わる協定」に関して日米間で署名・調印をやるのだという。何でいまさら条約としてわざわざ調印する必要があるのだろうか。おそらく、米国側としては沖縄の海兵隊のグアム移転に際し、日本政府の資金分担を明文化することが第一の目的ではないのか。その代わり、米国側はグアム基地の目的外使用禁止(当たり前!)や06年5月に合意した在日米軍再編ロードマップの普天間移設と沖縄本島中南部の基地返還実施(すでに既定方針である)を盛り込むのだという。米国のこの問答無用のヤリクチには何か裏がありそうではないか。

 オバマ新大統領、クリントン国務大臣、ゲーツ国防大臣などの就任により対日、対沖縄政策を米国側がどう打ち出すか大いに注目されるところだが、この条約がこの時期に持ち出されたこととも無関係ではあるまい。常識的にみれば、オバマ大統領になっても、ブッシュの時代と日米関係は基本的に変わらないということかもしれない。あるいは、ゲーツ国防長官のブレーンたちの「対日戦略はこれまでの方針通り」という意思表示なのかもしれない。昨年末の米国金融恐慌という予想外の経済危機が到来したわけだが、米国としては当初の方針を変えないし、日本側も心変わりしないように条約で縛りをかけておこうということなのか。そもそも、米軍基地の国外移転費用を日本側が負担するということじたいおかしな話だし、思いやり予算に象徴される日本のこれまでの対米追従一辺倒の姿勢を米国側に見透かされた結果であることだけは間違いないところだろう。

 さらに、この条約は普天間移設計画が停滞していることとも無関係ではあるまい。米国としては、本島中南部の基地返還とパッケージにして辺野古に新基地を建設させようと狙っているものの、反戦平和や環境面でも新基地反対運動には根強いものがあるため、建設着手の見通しはついていない。麻生政権の不支持率の高さを見ていると、次の選挙で民主党を中心とした野党連立政権へと転換する可能性は高い。しかし、日本の政権が替わっても米国の沖縄政策は変わらないという意思表明であり、基地建設計画を速やかに促進させるという効果もねらっているのではないか。新基地ができないと普天間はいつまでも現在の世界一危険な状況下に置かれるというオドシでもある。

 この条約調印に関して、地元紙は「県や名護市は、日米が合意した普天間飛行場の移設位置を沖合に移動するように求め続けているが、移転協定はそれを一蹴するもので」、あからさまな県民無視だと怒りの社説を掲載していた。しかし、これは普天間の県外・国外移転ではなく、辺野古移設を前提にした論調ではないか。筆者的には、新基地をもっと沖合に移動せよという名護市や県知事の要求じたいがそもそも不可解だし、説得力に欠けると考えている。この要求の背景には土建業者の利権が蠢いていることはシロウト目でもわかる。そんなことで怒るくらいなら、今回の条約調印の前提として、米国政府に日米地位協定の抜本的見直しこそ確約させるべきだとの論調を張る方がメディアとしての社会的責任というものではないのか。

「普天間基地の辺野古への移転」を前提とした、
地元紙のスタンスに異議を唱える岡留さん。
一方、県外メディアでの目立った報道がないことにも、
大きな疑問を感じてしまいます。
沖縄県民だけの問題ではないはず、といつもながらに思うのですが…。
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