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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.060

米軍基地問題、再考の時

 64回目の敗戦記念日を迎えたが、日本の平和憲法の理念は果たして守られているのだろうか。民主党・鳩山代表が靖国神社に代わる国立追悼施設の建設をぶち上げたことは、戦争から教訓を学ぶという意味では一歩前進かもしれない。しかし、世界各地で戦争はいまだに繰り広げられており、日本もいつしか軍事大国になってしまった。いまだに戦争を仕掛ける側の米国と平和憲法を持つ日本との軍事同盟は根本的に相反するはずだ。だが、安倍晋三元総理に代表される憲法9条を改定すべしという政治勢力も消えたわけではない。

 その日米軍事同盟は、沖縄の在日米軍基地75%の存在によって支えられている。沖縄側にすれば、過重な基地負担からの解放を政府側に求め続けていくしかない。日夜、米軍の軍用機による爆音公害や米兵による犯罪におびえながら生きる沖縄の人々と、米軍基地の存在すら意識しなくても生きていける国民との間には想像のつかない日常性の落差があるに違いない。有名なエピソードだが、かつて社会党議員から自・社・さ政権で総理に担がれた村山富市は、「沖縄にくると米軍基地の問題を意識せざるをえないけど、東京にもどるとコロリと忘れるんだよね」という意味の事を語っている。それは観光で沖縄を訪れていた時代の自分もそうだったので、村山元総理を一概に批判できないのかもしれない。

 問題は日米安保の強化だとか、北朝鮮や中国に対する抑止力として沖縄の米軍基地は必要不可欠だという政治家や官僚、文化人たちの言動である。この物言いには、沖縄は米軍の犠牲になってもらうしかないという自己本位で差別的な心根を感じざるを得ない。より踏み込んで言えば、沖縄には補助金や振興資金という形でカネさえばら撒いておけば,文句もいわずにおとなしくなるだろうという、上から目線の傲慢さがあるはずだ。沖縄タイムスで連載された沖縄防衛局の嘉手納町への移設の舞台裏を読むと、日本政府が極東最大の米軍基地を存続させるために、カネに糸目をつけないバラ撒き政策を持ちかけた時の手口や経緯が具体的に書かれている。記事を書いたのは同紙で普天間移設の舞台裏も連載したことのある敏腕記者の渡辺豪氏だ。

 話は少し変わるが、日本最南端の島・与那国島は離島特有の過疎化や経済格差問題をかかえている。その与那国町で現職と新人の対決町長選挙があった。結果は自衛隊の誘致を画策してきた外間町長が約100票差で再選された。対立候補は自衛隊誘致反対を掲げて闘ったが、敗れたのだ。問題はこの町長選挙の結果によって、自衛隊の誘致が実現するかどうか、という点である。そこには過疎の村が原発を誘致して町おこしを図るという発想とも共通する問題がある。仕掛け人は地元の防衛協会だという。基地のあるところ、この防衛協会が利権を求めて暗躍する。死の商人のタグイといえば、いいすぎか。すでに3000メートル滑走路のある宮古島市の下地島空港も自衛隊が色気を見せているといわれる。筆者としてはこの空港を国連のアジア緊急支援センターとして平和利用すべきと考えている。沖縄は米軍だけではなく自衛隊も虎視眈々と陣地拡大を狙っている島なのだ。

 政権交代に意欲を見せる民主党だが、それが現実問題となったことで政策に微妙なブレも出てきた。沖縄の将来を左右する日米地位協定の抜本的改正方針が「提起」という表現にトーンダウン。これまで民主党が主張してきた普天間基地の県外・国外移転もマニフェストからはずされた。民主党の直嶋正行政調会長は、まずはオバマ政権との信頼関係を築くことが前提でその上で交渉を進めていく、方針を変えたわけではないという。ホントだろうな!といいたいところだが、まずは政権奪取が先決だろうから、一応は信じておきたい。もし裏切ったら、沖縄県民は怒り心頭で独立するしか選択肢はなくなるだろう。

 沖縄国際大学に米軍のヘリが墜落して5年が経つ。世界一危険な市街地にある米軍基地といわれながら、移設計画は一歩も進んでいない。米軍がどうしても普天間の代替施設が必要というのであれば、民主党は硫黄島移設を主張したらどうか。現在、この島には自衛隊の基地があるだけで民間人は住んでいない。地元自治体の小笠原村も受け入れ方針を示している。映画『父親たちの星条旗』でも描かれていたが、米軍がこの島に上陸した時、擂鉢山の山頂に立てた星条旗が米国民を歓喜させた歴史もある。硫黄島は米国にとっても誇りをくすぐられる所縁の島なのだ。外務省はこの硫黄島移設説に関しては、端っから否定して交渉すらやってこなかった。民主党政権になれば、外務省をはずしてオバマ大統領と直接交渉するチャンス到来と考えるべきではないかと提言しておきたい。

いよいよ総選挙間近。
確実視される「政権交代」ですが、
基地問題も含め、それですべてが解決するわけではない!ことを、
肝に銘じておく必要があります。

 

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