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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.071

「基地か経済か」の時代は終了だ!

 沖縄では普天間基地県外移設への期待感が全県的に広がりつつある。名護市長選挙で辺野古基地建設反対派の稲嶺進市長が誕生したことは決定的だった。もっとも名護市長選前から自民党県連、公明党県連まで県外移設を主張しており、辺野古移設に関して煮え切らないのは仲井真沖縄県知事くらいのものだ。その仲井真知事自身も、今まで辺野古基地建設を主張してきたメンツがあるだけで、ほぼ完落ち寸前といっていい。今、普天間移設を県民投票にかけたら7、8割の県民が県外・国外移設に投票するのではないか。残りの2、3割は基地経済の恩恵がなくなる軍用地主、基地従業員、建設業者といったところだろう。これは国による沖縄を自立させないための基地依存政策に翻弄されてきた沖縄の悲劇でもある。

 沖縄では長い間、「基地か経済か」という政治選択が選挙の争点になってきた。しかし、基地があることでの政府からの補助金や振興資金の大盤ぶるまいも沖縄経済の自立にはつながっていないことが徐々に判明してきたのだ。昨年8月の衆議院選挙で沖縄の選挙区4つで「基地問題よりも経済」だとして辺野古基地建設を推進してきた自民・公明候補は4人とも完敗した。そして、普天間基地の県外・国外移設を主張してきた民主党を中心とした連立政権が誕生したことで、県民世論は県外移設に大きく旋回した。これまでの沖縄の虐げられた歴史を見れば、米軍基地問題に関してはほぼ諦めの境地にあった県民の意識が急激に覚醒したとでもいおうか。

 1960年代後半の沖縄本土復帰運動のような全県的世論の高まりに似ている。戦後、米軍の統制下に置かれた沖縄では独立論や「沖縄を返せ」という歌が唄われ、沖縄は「怒りに燃ゆる島」と化したのだ。その再現とでもいうべき熱気が沖縄に再び高まったのだが、民主党中心の新政権のブレ、ダッチロールが始まり、県民の多くが再び不安を感じ始めているのも事実である。

 沖縄県民の熱気に水を差したのが、岡田外相、北沢防衛相らのダッチロール発言である。岡田外相に至ってはつい最近も普天間基地がそのまま残る可能性にまで言及した。県内移設を容認しなければ、世界一危険な普天間基地の存続もありうるという県民への「恫喝」である。さらに、連立三党の協議会を仕切る平野官房長官が、名護市長選挙の結果を受けて、「斟酌する必要はない」と発言し、法的には国権で基地建設は可能であるなどと民意不在の暴言まで吐いた。平野官房長官は沖縄視察にも訪れたが、下地島や伊江島の滑走路を空から見学したために、県内移設を想定している行為ではないかとして県民は大きな不信感を抱いた。

 この平野官房長官の肝いりで沖縄連絡室なるものも設置された。官邸に本部を置いて、沖縄総合事務局に分室を置くのだという。表向きは基地問題について地元の意見や要請を官邸に集約するためとしているが、メンバーを見ればまったく期待が持てない面々であることは一目瞭然。二重行政のシンボルとされて、いずれ廃止が内定している沖縄総合事務局の局長、沖縄防衛局の次長、外務省沖縄事務所の副所長らの兼務で事務所すらも置かないのだという。何のことはない、これまでも沖縄のためには働いていない役人による、形だけの官僚主導組織の屋上屋である。いまだに開かれた記者会見すら導入しないこの官房長官は無能すぎる。こんな人物に連立三党による普天間移設問題を協議されたくないというのが県民の率直な気持ではないか。

 鳩山総理をはじめ新政権は事あるごとにゼロベースで検討するというが、もはや辺野古海上基地建設も普天間基地の存続もはっきりと除外すべきではないか。そうでないと、今でも在日米軍基地の75パーセントを押し付けられている沖縄の基地負担軽減策も虚言ということになり、県民の怒り爆発は必至だろう。閣内での統一性のないバラバラ発言を容認している「宇宙人」鳩山総理の真意は測りかねるが、5月末日までに「最後は私が判断する」という事を当面は見守るしかないのだろう。

 幸いにして、普天間基地問題で圧力をかけ続けている米国が背後で糸を引いていると見られている東京地検特捜部による小沢潰し作戦は不発に終わった。これで検察と霞ヶ関官僚、米国の思惑は一応外れた形だ。小沢、鳩山両人は対米追従外交に批判的であり、官僚主導と戦う数少ない政治家だ。少なくとも辺野古移設には否定的だし、沖縄県民の気持をよく理解している政治家と見ていい。霞ヶ関官僚に洗脳され、米国に首根っこをつかまれている岡田外相、北沢防衛相の両人、そして無能な平野官房長官よりははるかに普天間基地移設問題解決においては前向きな方向性に期待できるはずである。ならば、そろそろ、鳩山総理はリーダーシップを全面的に発揮し、小沢幹事長も「天の声」を発動すべきときではないのか(苦笑)。それは、これ以上沖縄県民に不安と動揺を与えないための大英断なのだから、むしろ沖縄県民から見れば当然の吉報ではないのか。

今月8日、初登庁を迎えた名護新市長の稲嶺氏は、
記者会見で「新たな基地を造らせないという信念を貫く」と述べました。
鳩山首相の「信念」はどこにあるのか?
それが民意を裏切るものではあるはずない、と信じたいのですが。
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