マガジン9

憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン。

「マガジン9」トップページへ癒しの島・沖縄の深層:バックナンバーへ

2013-04-24up

癒しの島・沖縄の深層

オカドメノート No.127

安倍総理の言う「日本独立」を支えるために
捨て石にされている沖縄

 まもなく4・28を迎える。いうまでもなく、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効日である。安倍総理は、この日を日本独立の日、「主権回復の日」として政府主催の記念式典を開催することを発表した。これに猛反発したのが、この講和条約によって米国の施政権下に切り離された奄美や沖縄である。日本の独立どころか、米軍の支配下に正式に置かれた「屈辱の日」だからだ。安倍総理の狙いは明らかである。4・28を日本独立の日としての体裁を整え、悲願の憲法改正、国防軍の創設という途を歩む魂胆なのだろう。記念式典には天皇、皇后も来賓として招く方針からも、安倍総理としてはこれを政治家としての集大成にする心算なのだろうと思われる。

 だが、歴史的事実も踏まえずにいくら日本の独立をぶち上げても、国民や沖縄県民の支持を得られるわけがない。実際、沖縄では4・28は「屈辱の日」として、県民大会が宜野湾海浜公園で開催される予定だ。安倍総理の心の中には、沖縄が本土から切り離され、米軍の銃剣とブルドーザーによって土地を収奪されてきた歴史の認識など微塵もなかったか、あったとしたら沖縄の存在をあえて無視したやり口としか思えない。来賓として招待された仲井真弘多沖縄県知事は欠席を公表し、副知事の代理出席を決めた。むろん、沖縄県民の大多数は「主権回復の日」の記念式典じたいに否定的である。というか、安倍総理や日本政府の本性を見た思いで、日本政府との間の溝はますます深まるばかりである。

 沖縄が日本国として正式に認められたのは1972年のことである。それまでは、米国の統治下に置かれ、沖縄が数々の苦難の途を歩んできたことは周知の通り。72年の本土復帰に期待した「基地のない平和な島」という県民の悲願は、今日に至るもまったく実現していない。それどころか、昨年10月からは事故の多い欠陥機といわれるMV22オスプレイ12機が普天間基地に強行配備され、配備前に交わされた飛行条件に関する日米合意はことごとく無視されて、沖縄の空を我が物顔で飛び回っている。先日、韓国での米韓合同軍事演習で普天間基地所属のCH53が墜落する事故が起きた。オスプレイに比べれば、旧式の輸送機ではあるが、墜落事故の可能性をあらためて思い知らせてくれた。沖縄には、空軍仕様のCV22オスプレイが嘉手納基地に追加配備される予定もある。

 オスプレイだけではない。普天間基地の代替施設として日米両政府が執拗にこだわる辺野古新基地建設についても、今年に入り沖縄防衛局が沖縄県に対して海上埋め立ての申請を出した。地元紙の最新の世論調査によれば、辺野古新基地建設に反対の意見は約75%を占めている。辺野古新基地の管轄にあたる名護市の稲嶺進市長も明快な反対派である。地元がオール反対という状況の中で、日米両政府が事を強権的に進めてもうまく行くとは思えない。ことほど左様に、沖縄の基地負担軽減は、72年の本土復帰以降も進展していないのだ。沖縄が安倍総理の言う日本の独立を支えるための捨て石とされていることは明白である。

 そして、日本はホントに独立国なのかという根本的な問題もある。戦後の日米関係や外交の歴史を見れば、日本は一貫して対米追従の姿勢を打ち出してきた。52年に日本の独立が成立したとすれば、日米関係は対等な国家間交渉になるはずである。しかし、現実の歴史を見れば、ことごとく米国の言いなりでやってきた。その背景には、戦勝国・米国に逆らう事すらできなかった日本政府の自立外交の放棄がある。日本の敗戦によって米国は日本の占領を開始した。米国の狙いは、日本軍国主義の復活をトコトン阻止することだった。日本の対米追従一辺倒の政策はこの米国による占領時代から着実に築きあげられたのだ。その辺の歴史的いきさつは孫崎享氏の『戦後史の正体』や前泊博盛氏の『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(ともに創元社発行)を読めば、明快に理解できる。

 オスプレイの配備にしても、米国にとっては「単なる機種の変更」であり、日米地位協定によって米国の権益は完璧なまでに守られているのだ。日米安保絡みで憲法違反の訴訟を提起しても、最高裁判所は憲法判断には絶対に踏み込まない「判例」があるからなのだ。

 安倍総理は参議院の予算委員会で憲法96条の改定を繰り返し主張した。憲法改正の発議のためには、衆参両院の議員総数の3分の2以上の賛成が必要だが、それを過半数にしようという案である。安倍総理は、国民投票というハードルが残るので、(3分の2を過半数に変更しても)そう簡単には憲法改正は出来ないと主張しているが、内心ではホクソ笑んでいるのではないか。

 かつては、核の保有の必要性も説いていたタカ派政治家だ。日韓が領有権問題で対立関係にあっても、麻生副総理や古屋国家公安委員長らの靖国神社参拝を容認している。中国との間にも尖閣諸島をめぐる領有権問題が存在するが、中国側がもっとも忌み嫌う靖国神社参拝も平然と行なっている。

 その反面、米国主導のTPPに関しては7月からの交渉参加も決めた。TPPは米国の日本支配の最終兵器でもある。日本政府は国益よりも米国への追従が最優先なのだ。安倍総理が、日本国家のためと思っていても、国民にとっては迷惑な政策ばかりである。それは、今後の日米関係においても不動のスタンスとして持続されるはずだ。これが、独立国の姿勢であるはずがない。

←前へ次へ→

今週の「この人に聞きたい」でも、
沖縄平和運動センター事務局長の山城博治さんが、
「政権の延命のためならどれだけ県内で反発が起ころうが、
対米追随を強める」と、強い言葉で安倍政権を批判しています。
どの政権も繰り返す「負担の軽減」という言葉だけが空回りする中、
まもなく4月28日がやってきます。

ご意見・ご感想をお寄せください。

googleサイト内検索
カスタム検索
岡留安則さんプロフィール

おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

「癒しの島・沖縄の深層」
最新10title

バックナンバー一覧へ→