マガジン9
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Q1日本の防衛の巻
Q1自衛隊存在の巻
Q3武力行使と国際貢献の巻
Q4日米同盟と集団的自衛権の巻
Q5日本の安全、どう守る?の巻
Q6.北朝鮮の脅威と日本の防衛の巻
憲法9条Q&A
Q1.日本防衛の巻
香山リカさん玉木正之さん
「「世界にはテロや紛争が絶えません。国連の決定で連合軍を編成して紛争地域の戦闘を武力で鎮静化しようというとき、わが国だけは_武力の行使を禁止する9条があるからPKO活動や人道復興支援しかできません_で通用しますか。9条を変えて武力行使を可能とする国際貢献についても明文化しないと、世界の孤児になってしまいませんか」
※PKOとは、紛争国の停戦合意が成立した後に、停戦監視や兵力の引離し、文民による選挙監視などによって紛争の再発防止を目的とした活動。」
私はこう答える
香山リカさん
'05-10-26UP
かやま・りか 精神科医、帝塚山学院大学人間文化学部教授。1960年北海道生まれ。
東京医科大学卒。主著に『若者の法則』(岩波新書)、
『ぷちナショナリズム症候群』(中央公論新社)など多数。

武力行使とそれ以外の国際貢献をした場合の具体的な収支決算を明示してほしい。

国際貢献をしたい理由として、もちろん世界に協力したいという崇高な理念はあるでしょうが、私にはそれよりも、世界で認められたいという、非常に現実的な理由のほうが大きいように思えます。

武力行使ができる国際貢献をしさえすれば、日本は世界から尊敬を集めるのでしょうか。すでに多くの方が言っていますが、国際貢献のかたちはひとつではありません。さまざまな国際貢献があるはずですし、武力行使をしない国際貢献のほうが、評価される可能性が高いのではないでしょうか。それなのに、とにかく武力行使以外の国際貢献は相手にされない今の論調には、非常に疑問を感じます。

武力行使がそれだけ有効だというのなら、武力行使とそれ以外の国際貢献をした場合の具体的な収支決算、見積もり書を明示してほしいと思いますね。

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私はこう答える
玉木正之さん
'05-04-27UP
たまき まさゆき
スポーツライター・音楽評論家 京都生まれ。
大学中退後フリーのスポーツライターとして活躍。
現在はスポーツの他、文化全般にわたるライターとして活動中。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)訳書に『日本式サッカー革命』(集英社インターナショナル)など多数。

日本が目指す国際貢献は、武力を必要としない平和外交
外交力の弱さを、憲法の問題にすり替えている

イラクへの派兵はアメリカとの外交上の付き合い上で派兵しているだけのことであって、他には何の意味もないことです。イラク国民のためにもなっているとも思われず、これでは「国際貢献」とは言えないでしょう。

おそらくこれから、「自衛隊が役に立たなかったのは、武器の行使を禁止する憲法9条があったからだ」という論議がされることでしょう。「だから憲法9条を変えて、武力行使を可能とする国際貢献の明文化をするべきだ」という話も持ち出されるかもしれません。

しかしスタートに戻って考えると、そもそも日本がイラクに派兵したことが間違いなのです。さらに言えば、アメリカがイラクを先制攻撃したことが間違いであり、アメリカに対して同盟国の日本が、その時点でストップをかけられなかった外交力の無さこそ問題といえます。これは日本の外交の問題であって日本国憲法の問題ではないのです。

それなのに日本の平和外交力の弱さを、憲法の問題にすり替えるから「ちょっと待って。そらおかしいよ」と僕も言いたくなるわけです。

武力行使できない国は本当に世界の孤児になるのか?
19世紀以降、パワーポリティクス、いわゆる「力」(武力)による政治外交の呪縛から逃れられていない世界において、日本は戦後、今の憲法ではじめて新しい理念を持ち、国づくりをやってきました。それがいかに難しいことか、というのは歴史が証明しています。

しかし、まだ60年しか経っていないのだから、あと50年はみんなで今の憲法に明記した理念を目指そうよ、と思うのです。もう少し気長に憲法に向き合おうよと。

反省すべき第一の点は、平和憲法を持ちながらこれまで情報宣伝活動がとても下手だったということです。「日本は決して武力行使はしない、未来永劫、自国領土内の自衛の闘い以外は戦争を放棄した国である」ということをもっときちんとアピールしておけば、今のようなアジア近隣諸国からの脅威というものは、あり得るわけがないはずです。

戦後は、このすばらしい理念が存在していながら、どこか空回りしていたのでしょう。今後の50年は、これはすばらしいことであると国民が再認識し、自信を持って世界中に広めるようにしていくべきです。そのことが、日本人が日本人として生きていくことだからです。日本は、武力ではなく平和外交で国際貢献ができるようになるよう目指すべきではないでしょうか。

「今の世界情勢ではもはや平和外交などできなくなってきている」という意見もありますが、それは「アメリカの論理」を押しつけられているだけです。それに長い目でみれば、現在という時点に合わせただけの国際貢献ができればいいというものではないでしょう。日本が未来のアジアや世界の平和を考えて平和外交を訴え、それに尽力すれば、世界の孤児になどなるはずがありません。

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