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マガ9レビュー

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本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.28
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『瀕死の双六問屋』

忌野清志郎/小学館文庫

 RCサクセションからソロ、また様々なユニットで歌い続けてきた忌野清志郎(キヨシロー)の言葉はいたってシンプルだ。手の込んだレトリックを弄することなく、ぶつけてくるそれは、ときに気恥ずかしくなるくらい真直ぐなメッセージとなる。

 だが、他の歌手が発すれば、とても青臭くて聴けないような歌詞でも、キヨシローにかかると不思議と素直に胸に届くのだ。リズム&ブルース、ロックン・ロール、サイケデリック、ハードロックなど、キヨシローが中学・高校時代、それこそレコードが磨り切れるくらい繰り返し聴いた音楽が、彼のなかで血や肉となり、新たなサウンドに生まれ変わるからではないかと思う。

 本書(雑誌『TV Bros.』に連載された文章を中心に2000年に出版されたものの文庫版)を読むと、不屈のハートとユーモアが彼の活動を支えているのがわかる。

 「インターネットが流行し、1200万人もの人々がEメールとやらのやりとりをしていても、勘違いしてもらっては困る。どんな金持ちでも権力者でも朝が来るのを止めることはできないのだ」(≪雨の日のカーウォッシュ≫より)

 キヨシローは、大手レコード会社から何度かアルバム発売を中止されたことがある。カバー曲を集めたRCサクセション『カヴァーズ』(1988年)は、“ラブ・ミー・テンダー”や“サマータイム・ブルース”の曲に反原発の歌詞を乗せたことが、発売元東芝EMIの親会社を刺激した。ソロの『冬の十字架』(1999年)は、パンク調“君が代”がポリドールを尻込みさせた。それは、かつてジミ・ヘンドリクスがエレキギターでやった『星条旗よ、永遠に』の日本版だった。

 上記のアルバムはそれぞれインディー系のレーベルで発売されたが、発禁というプレッシャーにも、キヨシローは怯まない。“学校の始業式や卒業式で君が代を歌え”っていうから、俺も歌っただけさ――なんて言ってのける。

 そんな彼の根っこにあるのはラブ&ピースである。

 「どーだろう、……この国の憲法第9条はまるでジョン・レノンの考え方みたいじゃないか? 戦争を放棄して世界の平和のためにがんばるって言ってるんだぜ」(≪日本国憲法第9条に関して人々はもっと興味を持つべきだ≫より)

 昨年、喉頭がんと診断されたキヨシローは放射線治療の現代医学に「おさらば」し、現在は民間療法による治療を続けている。時々、ライブに飛び入り参加し、大好きなサイクリングもしているそうだ。

 完全復活を祈っている。

(芳地隆之)

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