今週の「マガジン9」

 沖縄…。
 個人的なことを言えば、私は沖縄が大好きだ。もう何十回、沖縄へ行っているか、自分でもよく分からない。夏の休暇、安いパックでの沖縄行きが、私の毎年の恒例になって久しい。ついに病膏肓に入り『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版、1500円+税)という本まで出してしまった。
 今年も沖縄へ、8月末から1週間ほど、出かける予定だ。いつもなら、心浮き立つはずなのだが、今年はどうにも気持ちが重い。むろん、辺野古の状況が影を差しているからだ。

 1945年3月、アメリカ軍は圧倒的な物量をもって沖縄の海へ押し寄せた。最初は慶良間諸島。4月に至って、本島西側の読谷、渡具知、伊江島へと米艦隊は迫り、沖合には真っ黒になるほどの巨大艦隊がひしめいたという。

 2014年8月14日、本島東側、辺野古の海には、海上保安庁の艦船がひしめいていた。それを見た現地のおじいやおばあが「今度は、日本軍がやってきたか…」と呟いたという。
 圧倒的な力(暴力)で、埋め立て工事に反対する人たちを排除し弾圧するための海上保安庁の登場。人命救助を高らかに謳いあげた『海猿』は、いったいどこへいったのか?
 現場で取材していた三上智恵さん(映画『標的の村』監督)が数えたところ、高速ゴムボートを含め、海上保安庁の船は80隻以上にも及んでいたという。権力側が凄まじい金と人員を投入して、反対する人々を有無を言わせず排除する。それが今の沖縄の(つまり、日本という国の)光景だ。

 沖縄の負担軽減のために普天間飛行場を辺野古に移設する、というのが日本政府のリクツだ。しかし、沖縄の人たちが「これは移設ではない、新たな米軍基地建設だ。負担軽減どころか恒久施設による負担増でしかない」と猛反発していることは、さすがに本土マスメディアも分かってはいる。何度世論調査を繰り返しても、辺野古移設反対が沖縄県民の70%を超えているのだ。
 だが、いくら声を挙げても、座り込んでも、デモをしても、圧倒的な世論が反対しても、政府は力で抑圧する。沖縄も原発も、やり方は同じだ。こんなやり方が、第2次安倍政権になってから、やけに目立つ。

 安倍政権は「アベノミクス」というほとんど実質的な中身のない言葉と政策で高支持率を保ってきたが、さすがにその化けの皮がはがれ始めた。経済という厚化粧が剥げ落ちれば、残るのは「ナショナリズムの煽動」という奥の手だけだ。これ以降、安倍内閣の支持率確保策は、ナショナリズムに頼るしかないだろう。
 人気の落ちた大統領が、支持率回復のために戦争に打って出る。ハリウッド映画ではおなじみのパターンだ。それを阻止しようとするヒーローの活躍が映画の見せ場になるのだけれど、我々はヒーローの登場を待っているわけにはいかない。
 ヒーローなどではないひとりひとりが、「戦争はイヤだ」と、動き出さなければ…。

(鈴木耕)

 

  

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