今週の「マガジン9」

 数週間前、知人より「情報」としてあるメールがまわってきました。そこに書かれていた文言の一部を引用します。

どうしても、胸騒ぎのようなものがおさえられず…朝日新聞の謝罪会見、嫌な予感というか、なにか恐怖すら感じてなりません。 「慰安婦問題」と「吉田調書」を書いた、すぐれて果敢な記者らに向けての、執拗で異常な朝日たたきが、連日続いていますが、「密約事件」のときもそうですが、国家の責任を追及する記者を個人的に、(娘さんにまで)脅しをかける彼らが問われ裁かれることがないまま、この謝罪会見。(略)とにかく、いま、わたしに出来ることは、記者さんの生活がこれ以上脅かされることのないよう、手紙やメールで、応援している人がいることを知らせる、ことしかできません。ぜひ、北星学園へ…、一緒に応援できれば、うれしいです。

ここから転送です=======
元朝日新聞記者の植村隆さんは、1991年に朝鮮人従軍慰安婦の記事を書いたことで、右派メディアなどからの誹謗中傷、ネット右翼などから様々な攻撃を受けています。 そして、彼が以前から非常勤講師をしている北星学園大学にまで、「植村をやめさせろ」という、嫌がらせメールや抗議の電話などが相次いでいます。 朝日新聞は8月5日付けの特集紙面で、植村さんの記事には「事実のねじ曲げはない」と報道しねつ造を否定しましたが、いまも大学への攻撃は続いています。
お忙しいところ恐縮ですが、もし賛同していただけるなら、ご協力をお願いしたいと思います。

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 これを読んで私も胸騒ぎがしました。従軍慰安婦問題をめぐる一連の朝日新聞バッシングが、より卑劣な形で記者個人に向けてのバッシングになっているだろうことは、容易く想像できたことでしたが、職場やご家族にまで被害が及んでいたことには、暗澹たる気持ちになりました。そして自己規制を強めるばかりのマスメディア。本当にこのままでは、戦時中に日本軍が関与した「従軍慰安婦」は歴史上なかったことにされてしまう、そんな恐ろしいことが、かなりの現実味をおびてきたように感じられたからです。

 そんななかにあって、今回「負けるな北星!の会」が立ち上がり、広く市民に向けて大学や元記者への支援や署名などの応援を呼びかけたことは、一筋の光のように思えました。少なくない数の学者たちが、言論を封殺する卑劣なテロは許さない、と声を上げてくれたことは、この問題の本質を解き明かし、また元記者への支援の広がりにも大きなインパクトを持つことでしょう。

 マガジン9では今、日本社会や政治におけるジェンダーバランスを正していこうとするキャンペーンの一つとして、「女性が動けば変わる!」というコラムを連載していますが、戦時中の女性の人権侵害の問題をうやむやにすることは、今と未来を生きる女性たちの人権を踏みにじることと同等だと考えています。根が深いこの問題に対しては、こちら側もしつこく対峙していきたいと思います。

(水島さつき)

 

  

※コメントは承認制です。
vol.472

卑劣なテロに負けるな!
」 に5件のコメント

  1. ピースメーカー より:

    「本当にこのままでは、戦時中に日本軍が関与した『従軍慰安婦』は歴史上なかったことにされてしまう」という言葉は、水島さんの本心からの言葉では無いと思います。
    なぜなら、従軍慰安婦問題は韓国人のナショナリズムと一体化し、慰安婦像を米国に建てる程であり、そんな問題が「誤報」ごときで無くなるはずはないのは子供でも判る話です。
    私としては「戦時中の(韓国人)女性の人権侵害の問題」は韓国人のナショナリストが全力を尽くしているので、こちら(マガ9)側がそれに深入りする必要は皆無だと思います。
    むしろ、未来を生きる女性たちの人権に直接貢献できる事に「しつこく」していけば良いと考えます。
    例えば、「小規模保育」「居宅訪問型保育」等々…。
    毎日新聞でリベラル勢力のアップデートを主張した駒崎弘樹さんの記事を読んで、日本人の大衆から「ありがたい」と思われるような活動に「しつこく」すべきだと思うのは私だけでしょうか?

  2. hiroshi より:

    日本人の大衆(の一部)から「ありがたくない」と思われる<戦時中の女性の人権侵害の問題(従軍慰安婦問題)をうやむやにすることは、今と未来を生きる女性たちの人権を踏みにじることと同等だと考えています。根が深いこの問題に対しては、こちら側もしつこく対峙していきたいと思います。 >
    同じく日本人の大衆(の一部)である私としては、言論を封殺する卑劣なテロを許さず、しつこく対峙して下さるマガジン9の活動は、非常に「ありがたい」存在だと思うですが、そう思うのは私だけでしょうか?

  3. ピースメーカー より:

    2014年のノーベル平和賞は、女性や子供の権利を訴えてきたパキスタンのマララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)さん(17)と、インドのカイラシュ・サトヤルティ(Kailash Satyarthi)さんが受賞しました。
    とりわけ言論封殺どころか実際に銃撃されてもなお、女性と子供の権利を訴えることを止めなかったマララさんを差し置いて、9条を保持しているだけで実質なにもしてこなかった日本人が受賞しなくて良かったと思います。
    現状では、9条を保持する日本人は「イグノーベル平和賞」が関の山です。
    ところで、最もハードな場所で、今と未来を生きる女性たちの人権の為に活動をするということが如何に困難極まりないという事を、水島さんや9条護憲や人権主義を自負する人はどのようにお考えでしょうか?
    また、イスラム過激派だけでなく、日本人の一部もマララさんを「欧米に利用されただけ」と論じている事に対し、水島さんや9条護憲や人権主義を自負する人はどのようにお考えでしょうか?

  4. ピースメーカー より:

    >同じく日本人の大衆(の一部)である私としては、言論を封殺する
    卑劣なテロを許さず、しつこく対峙して下さるマガジン9の活動は、
    >非常に「ありがたい」存在だと思うですが、そう思うのは私だけ
    >でしょうか?

    hiroshiさんだけでなく、マガジン9の愛読者のほとんどがhiroshiさんの意見に同意すると思います。
    とはいえ、私としてはリベラルを自負する日本人の大半が喜んで取り組んでいるであろう「言論テロ」への対峙ではなく、駒崎弘樹さんが主張する「新しいリベラル」の旗手にマガジン9がなって欲しいと個人的に思っているのです。
    「強くて優しい」新しいリベラルについて、以下を参照下さい。
    http://mainichi.jp/feature/news/20141006mog00m040005000c.html
    なお、「朝日新聞バッシング」問題に深入りしなければ、「韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を傷つけたとして産経新聞前ソウル支局長が起訴された」問題に説明責任を求められる立場に立たされずに済む立場にいられる、というメリットがある事を指摘しておきます。

  5. AS より:

    ドイツのように「過去と正面から向き合う」ことをせず、光り輝く歴史だけを採り上げ、恥ずべき歴史は裏に押し込めて存在しなかったことにするのが愛国心でしょうか。
    双方の“愛国者”が衝突し、何百年経とうが解決しないでしょうね。

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