今週の「マガジン9」

 「歴史は繰り返す」といいます。しかし、絶対に繰り返してはならない歴史もあるのです。安倍首相は、その繰り返してはならない歴史を、もう一度「取り戻そう」というのです。
 カール・マルクスは「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として…」といいました。けれど、安倍首相の下での歴史の再来は、決して「喜劇」にはならないでしょう。かつてよりもっと悲惨な「悲劇」としてやってくるとしか思えません。

 集団的自衛権行使で、同盟国(といっても米国だけですが)と一緒に地球の裏側へまで行って戦うことを認めようとしています。戦うのは誰ですか。居並ぶ政治家たちではありません。
 平和国家としての日本のプライドをかなぐり捨てて、武器輸出へ踏み切りました。銃弾からカネが生まれるのでしょう。
 まるで福島原発事故などなかったかのように、住民の避難計画もなしに再稼働へ邁進しているのも安倍首相です。命よりカネが大事という人々がこんなに多いことにも驚かされます。もう一度、地震が来ても津波が襲っても、大きな噴火が起きたって「世界最高水準の安全基準」だという新規制基準はびくともしないと、なぜ自信満々に言えるのでしょうか。当の原子力規制委員会の田中俊一委員長自らが「これは安全を保証するものではない」と繰り返し述べているにもかかわらず、です。
 戦前、貧富の差は激しく、東北の村では「娘身売りの場合は役場へ相談を」という掲示まで出たといいます。むろん、当時の状況と単純に比較はできませんが、このところ、アベノミクスの負の効果で貧富の差が拡大しているのは事実でしょう。
 戦前のそんな悲惨な状況に義憤を感じて立ち上がったのが、日本軍の青年将校たちでした。彼らのクーデターは失敗しましたが、この国が戦争へ突入していく大きなきっかけになったのです。
 いままた、格差の拡大が大きな問題になっています。労働環境は悪化の一途です。安倍首相は「雇用が増えた」と胸を張りますが、何のことはない、正規社員が減って非正規雇用が大幅に増えただけの話。正社員と非正規社員の年収の差は拡大するばかりです。実質賃金は下がりっぱなし。とても物価上昇には追いつきません。経済指標で明るいものは「株価の上昇」だけですが、この恩恵を受けている人はごくわずか。株の取引は外国人投資家が3割を占めている、ともいわれています。
 そして異常な円安、「日本売り」の気配がします。これ以上、円安に振れると、日銀もなす術がなく手をこまねいているしかありません。日本経済の破綻も見えてきます。
 そんな状況の中で、社会保障費は減らされ、女性活用どころか育児手当さえ予算縮小です。ところが放言大臣として有名な麻生太郎財務相は、子どもを生まない女性に問題がある、とばかりに「自己責任論」を振り回します。産めないような環境を作ってきた政治責任は感じない、リッパな大臣です。
 沖縄では、新基地建設反対を表明した翁長雄志さんが圧倒的な差で仲井真弘多さんを下しました。ところがこの仲井真さん、知事任期のギリギリに政府の言いなりに「工事計画の変更」を認めてしまいました。まさに「最後っ屁」です。汚いことおびただしい。新知事に任せよ、という民意など知ったことかの対応です。むろん、安倍政権とすり合わせた結果でしょう。

 これらすべて、安倍内閣の施策なのです。いいことがあるというのなら、教えてほしいものです。
 今回の選挙の争点について、マスメディアはさまざまな報道をしています。確かに上に挙げたように、たくさんの問題点があります。それは、すべて安倍首相の政策に帰着します。
 だから、この選挙の唯一最大の争点は「安倍首相の存在」そのものなのです。たった一人で、今までのこの国をひっくり返そうとする安倍という人物こそが「争点」なのです。彼を退陣に追い込めば、少なくともこれらの危うい道筋に待ったをかけることができます。

 なんだか、戦前の不穏な雰囲気が、最近また漂い始めたと指摘する研究者も多いのです。
 まだ100年も経っていない時代の「歴史」です。
 そんな「歴史」を繰り返したいですか?

(鈴木 耕)

 

  

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