今週の「マガジン9」

 安保法制の議論において集団的自衛権の行使が合憲だとする政府の答弁がぐだぐだになっています。圧倒的多数の憲法学者が「違憲である」と断じるこの法案、そもそも安倍首相が国会での論議を始める前に、アメリカで約束してしまったことに問題がある。その内容が無理筋であっても、法案を通すことありきのため、はじめから野党との議論がかみ合わないのは当然です。

 あなたがある中小企業に勤めていたとして、その会社の社長が、仕事を融通してもらっている大企業に自社の社員を出向させて、大企業の社員が行っている危険で過酷な仕事を手伝わせる、と勝手に約束して帰ってきたらどう思いますか。

 「そんなこと聞いてない!」と憤慨するでしょう。社長はいったいどこを向いて仕事をしているんだ、と。その理由が「わが社が生き残っていくためだ」と言われたって、社長は大企業の覚えめでたくありたいというのがミエミエなので、信用できません。

 しかし、その怒りが、「こんな会社辞めてやる!」と啖呵を切って辞表を出するところまでいくかというと、どうでしょうか。本当はそうしたいところだけれども、ほかに新しい職は見つかりそうもないし、自分が出向するとは限らないからと、諦めモードになるかもしれません。

 この話を、中小企業=日本、大企業=アメリカ、出向者=自衛隊員、危険で過酷な仕事=戦争と読み替えても、あまり違和感はないのではないでしょうか。ずいぶん卑近な例えだと思われる方がいらっしゃるでしょうが、今回の政府がとる姿勢の理由が卑近だから仕方ありません。

 ただ、中小企業の生き残る道はほかにもあります。大企業の下請けをやめて、ニッチであっても独自の技術やノウハウをもって、他の多くのパートナーにそれらを提供できるようにするのです。そうれば大企業の言いなりにならないで済む。トップが従来の経営方針から転換できないのであれば、代わってもらうしかありません。

 違憲である集団的自衛権の行使容認を含む自らの法案を、国民の多数が反対している現状にもかかわらず、 押し通すことはクーデタに等しい。法治国家・民主国家においてあってはならないことです。安倍首相にはことの重さを認識いただきたいと思います。

(芳地隆之)

 

  

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vol.506
日本は下請けの立場を脱しよう
」 に1件のコメント

  1. なると より:

    > 大企業の下請けをやめて、ニッチであっても独自の技術やノウハウをもって、他の多くのパートナーにそれらを提供できるようにするのです。
     
    そんな夢の様な商品に心当たりがあるなら、会社辞めて起業すればいいんじゃないですか? そもそも心当たりがないなら経営方針なんて呼べないですけれど。「1000円出して宝くじ買って1等前後賞をズバリ当てる」のほうが、可能性がゼロでないだけまだマシです。
     
     
    先週の『日本は大変なことになってしまうといった脅しではなく、未来に拓けた希望ある言葉をーー。』を読んだ時も思ったことなのですが、我々に今必要なのは『ニッチであっても独自の』とか『未来に拓けた希望ある』の中身を考える、あるいは見つけ出すことでしょう。対案無しで批判してはいけない、とは言いませんけど、案がないのでは無視されても仕方ありません。
     
     
    経営方針を転換するというなら、実現のめどがある新しい経営方針は必須です。また、経営方針を変えるのが『危険で過酷な仕事』を避けるためだというのであれば、新しい仕事が『危険で過酷』でないことも併せて示さなければいけないでしょう。

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