今週の「マガジン9」

 パリで凄惨な同時多発移テロ事件が起きました。今年1月にパリで起きた週刊新聞「シャルリー・エブド」襲撃事件から約10カ月後のことです。

 オランド大統領はフランス全土に国家非常事態宣言を宣言し、シリア北部におけるイスラム国(IS)支配地域への空爆を展開しています。テロに屈しないという意思表示でしょう。しかし、シャルリー・エブド事件後の治安当局の警戒態勢が不十分だったとは考えにくく、犯行が綿密に計画されていたとすれば、国内外におけるネットワークを通して行われたことになります。敵は内部にもいるのであり、国は見えない相手との半永久的な戦いに引きずり込まれているように見えます。

 2001年9月11日の米国同時多発テロ事件以降、いわゆる「テロとの戦い」が始まって14年が経ちました。この戦いに決着はつくのでしょうか。

 去る11月10日、元西ドイツ首相のヘルムート・シュミット氏が96才で亡くなりました。1970年代にドイツ社民党のヴィリー・ブラント率いる連立政権が始めた、社会主義圏との緊張緩和を目指す東方政策を引き継ぎ、モスクワや北京を訪問し、信頼の醸成に努めつつ、同盟国の米国にも率直な意見を述べながら、自由主義陣営の結束を重視した政治家でした。

 政界を引退した後も積極的に言論活動を行ってきたシュミット氏が、晩年、とくに強調していたのは、弱肉強食の資本主義に対する規制の強化でした。国際的なマネーの流れに対して、各国政府は協力して金融監督を行うことで、危機を回避すべき、と彼は言うのです。しかしながら、政府は無策である、とも。シュミット氏は今年に入ってから、中東からの難民問題について、EU共通の難民政策が機能していないことを指摘していました。

 シュミット氏は常に問題解決のために必要なのは国家間の連携、国際社会の信頼の強化だと指摘していましたが、現実の国家は貧富の拡大の要因を野放しにし、それを遠因とする紛争が起きると、その解決のために軍事力を行使する。

 国の出番が間違っていると言わざるをえません。

 ボーダーレスの進行とともに、国ができることは限定されています。それを認めることができない国家のジレンマが軍事への傾倒となって表れている、といったら乱暴でしょうか。

 国家ができることは何か、すべきではないことは何か。それを冷静に問わなくてはならない時代に私たちはいる。そう思わせるパリの事件でした。

(芳地隆之)

 

  

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vol.527
国家ができること、できないこと
」 に1件のコメント

  1. 日本が国家としてできること、いやしなくてはならないことは、何でもいいからアサド政権との間で和平交渉を開始させることでしょうね。アメリカにもヨーロッパにも面子があるだろうけど、そこを何とか説き伏せて、交渉の席につかせると。和平が成立すれば、難民支援も受け入れもやぶさかではないと、札束ちらつかせね。これを野党側から「安倍逝ってこーい」と提案すれば、憲法第九条を守ることにも繋がる。

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