今週の「マガジン9」

 昨日、東京都知事選挙候補者である、鳥越俊太郎候補者の街宣を聞いてきました。「住んでよし・働いてよし・学んでよし・環境によし」の4つのスローガンとその政策紹介をした後に、「東京都は非核都市・脱原発宣言をし、現憲法を大切にし、9条を絶対に守る」ということを、高らかに公約として宣言、賛同する市民たちが拍手をするという光景が、帰宅時間の新宿駅東南口広場に広がりました。 
 これは単に選挙演説の一コマということではなく、首都東京に暮らす私たち市民が、現憲法の下で暴力による物事の解決を決してのぞまない、そして日本は民主主義国家である、ということを力強く示した一つの重要なシーンとして、国内外にきちんと発信されるべきではないか、そう思いました。
 というのも、もしこういったイシューに対して言及する候補者が誰もいなかったら、取り上げる候補者はいても賛同する市民がまばらだったら、外から見れば、日本はついに、改憲を押し進める安倍自民党政権下において、何も声があげられなくなった「独裁国家」である、というように映るのではないでしょうか。これは決して大げさなことではなく、国際NGOによる「報道の自由度ランキング」で日本は72位という評価もそれを裏付けています。
 以前、いとうせいこうさんが、「デモや国会前で声をあげる市民たちの姿があるからこそ、かろうじてこの国は民主主義国家だと国際社会において認知されている。それがなければ、隣国・北朝鮮と同じように独裁国家だと見られてもおかしくありません」と語っておられたことを思い出しました。
 同時に、今週も三上智恵さんがコラム「高江大弾圧~臨界点を超えた政府の暴力~」で報告をしてくれていますが、沖縄・高江の現状などを知るにつけ、「現憲法で保障される平和な生活を送りたい」といった、ごく当たり前のことが大きな声で言えなくなる時代が来るのではないか、という恐ろしさもまた感じているところです。

 ところで、石原慎太郎元都知事がある都知事選候補者の応援の壇上で、対立候補のことを「売国奴だ」とか「うそつき、大年増の厚化粧のババア」と吐き捨てた、という報道があり、改めてうんざりしています。こんな差別的な発言をくり返す人が、都民の圧倒的支持を受け、長らく大都市東京の行政の長だったのですから。
 相模原市の障害者施設での事件の報を聞き、彼がかつて東京都知事として府中療育センター (重度知的・身体障害者療育施設) を視察した後、記者会見で「ああいう人ってのは人格あるのかね。ショックを受けた」と述べたことを思い出さないわけにはいきませんでした。このような発言を不用意にしてしまう人を行政のトップに置き続けてきたことが、実際の政策だけでなく、どのような社会的な影響を与えてきたか。そしてそのことが、私たちの社会を「差別はあって当たり前」「気に入らない人や事柄は排除してもいい」という社会にいつのまにか変えていったのではないか、さらには今回のような「ヘイトクライム」を生み出すことにもつながってきたのではないか。そんなことも考えてしまいます。
 私たちは、「行政のトップに立つ人の人権感覚」について、もっと真剣に考え、投票行動にもつなげるべきではないか、と強く感じているところです。

 東京都知事選、投票日まであとわずかとなりました。候補者たちの生の声を聞くチャンスの街宣に足を運び、そして投票に行きましょう。

(水島さつき)

 

  

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