今週の「マガジン9」

 この夏休み、故郷である四国・高松を中心とし、1週間ほど瀬戸内海の島々、急峻な山あいにある里山や川、古くからの温泉場などをまわってきました。そこには、現代アートのイベントあり、映画や文学の舞台となった観光スポットあり、ラフティングの世界大会が開かれるワイルドな清流あり、ヨーロッパからの観光客が絶えず訪れる限界集落ありと、実に多様です。子どもの頃に遠足や家族旅行で行った場所もあり、懐かしさとともにその頃には気がつかなかった、地形や自然環境の独特さ、それを上手く取り入れた固有の文化や生活、まさに「風土」といったものが、非常に興味深く感じられたものでした。

 旅先で出会ったのは、その村に生まれ住み、伝統の暮らしを今に伝える人々、都会から移り住んできた人々、そして観光客の人々。中でも多くの外国人の姿には驚かされました。アジアだけではなく、ヨーロッパからの旅行客も少なくなく「こんな辺鄙なところに!?」といった場所で出会いました。これは私が子どもの頃は、いやわずか10年ほど前でも、ほとんど見られなかった光景です。

 吉野川を見下ろす山あいに立つ築90年の古民家をリユースした宿では、フランス人夫婦と一緒になりました。「藍染の工房を訪ねて来たけど素晴らしかったわ!」と、本国でテキスタイルデザイナーをやっている彼女。このあたりは、阿波藍と呼ばれる独特の深い青色の藍染物が有名だったことを、彼女の発言で思い出しました。藍色は「ジャパン・ブルー」と呼ばれているとか。インターネットの時代らしく、こうした日本の地域や田舎の良さがクチコミで広がり、宿帳や訪れたスポットの記名帳には、英語だけでなく、フランス語、ドイツ語…といった文字が並びます。

 故郷がそのように賞賛されているのを間近に知り見るのは、なんだか誇らしくてうれしいものです。私自身は何もしていないのですが、これが「郷土愛」というものなのかと、思いました。

 お盆前の1週間、そうした旅をしながら夏休みを満喫していたのですが、最後に愛媛県・松山で聞いたのは、「伊方原発3号機」が再稼働されたという最悪のニュースでした。日本は今、国を挙げて「観光立国」を目指しており、過剰なまでの期待もそこにかけていて、羽田空港の増便などそれはそれで、大きな問題もあります。しかし地方の活性化として、この豊かな自然を前面にアピールし地域の伝統や文化を再利用し、外国人客を呼び込むという戦略は、平和でサステナブルな取り組みとしていいのでは、と思います。その方向性と「原発」は、まったく相容れないものです。伊方原発で事故が起きたら、どうなるか? そんなことは、福島第一原発事故を経験した日本人なら全員がわかっていることではないのでしょうか。

 私は故郷を愛しています。だから絶対に伊方原発を認めることはできない。一刻も早く稼働を止めて、廃炉にしなくてはいけない。その思いはいっそう強くなり、そのために何ができるのか、を考えた夏休みでもありました。

(水島さつき)

 

  

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