今週の「マガジン9」

 先日、ブラジルのリオ・オリンピックが閉幕し、9月7日からはパラリンピックが始まります。今回は知人の娘さんが水泳日本代表として出場するので、私はいまから興奮気味なのですが、さあ、4年後の東京オリ・パラ。私たちはどんな大会にしようとしているのでしょうか。

 リオにおいては開幕前に警察官らの給料未払いに対する抗議デモがありました。同市の国際空港で掲げられた横断幕には「地獄へようこそ。給料が支払われていないので、リオに来る人は安全ではない」。これと直接関係があるのかどうか、大会中には米国競泳選手の狂言騒動もありました。泥酔した彼らがガソリンスタンドのトイレのドアなどを壊し、警備員から銃を向けられたことを、「警官に武装した集団から強盗被害に遭った」と訴えたのです。

 ブラジルは2000年代から経済新興国、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)のひとつとして世界の投資家から注目され、リオ・オリンピックは経済成長の象徴とみなされるはずでした。ところが、国民全体が潤う発展はみられず、経済格差の拡大が国民の不満を高めています。

 格差でいえば、日本でも同様。とりわけ都市と地方のそれも拡大しています。新国立競技場の巨額建設費騒動に象徴される、当初の額を大きく上回る予算など、地方では少子高齢化で存続さえ危ぶまれる市町村が多くあるなか、さらに東京へ湯水のようにお金を投入していくのでしょうか。

 懸念材料は経済だけではありません。

 リオではジカ熱を恐れてオリンピックに出場しなかった選手がいますが(ジカ熱を口実に出場しない選手もいたそうですが)、もし今後の4年間で、福島第一原発の廃炉・解体が思うように進まなければ、出場を辞退するアスリートが現れるかもしれません。再稼働されている原発に事故が起きたら、それが首都から遠いところであっても、オリ・パラ自体が開催中止になるのではないでしょうか。オリンピックは過去2回、1940年の東京、1944年のロンドンがいずれも戦争により中止されました。

 五輪はハードだけではなく、その都市を含む国の姿勢が自ずと反映されます。ちなみに冒頭で触れた知人の娘さんは、パラリンピックでの競技について次のように述べています。

 パラリンピックではいろいろな特徴をもった選手がいるので、この泳ぎが絶対速い、あの人の泳ぎを真似すればいいというのがない。だから、自分に合ったやり方やフォームで競い合うのがいい。

 私たちがオリ・パラにどのような理念を掲げ、どうやってそれを実現するのか。4年間をそのための時間と考えれば、東京の風景は変わるはずです。

(芳地隆之)

 

  

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