今週の「マガジン9」

 先週のコラム『風塵だより』は、「組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」という法案を、「共謀罪」が名称を変えただけとして、その復活に警鐘を鳴らしました。その問題点については同コラムで指摘されている通りなので、ここでは繰り返しません。代わりに、9月3日から5日にかけてG20が開催された中国杭州市で実質、外出禁止令に近い管理体制が敷かれたこととの類似性について考えてみたいと思います。

 同市を厳戒下に置いたのは各国要人が集まる場でのテロ防止が最大の目的でした。万が一の事態が生じれば、初めて自国でG20を開いた中国の威信が地に落ちてしまう。過剰な警備は為政者たちの胸の内を反映したものでしょう。

 ドイツの劇作家、ベルトルト・ブレヒトには、枯れた枝を見て嘆く前に、その木の根っこに想像力を働かせよといった趣旨の詩があります。一本の木をひとつの国とみなせば、問題は枝(=テロ行為)にはなく、根(=国家のありかた)にあるということをブレヒトは言いたかったのでしょう。共謀やテロは私たちの社会の外部からやってくるのではなく、内部で生まれてくるのです。

 ここで疑問が生じます。共謀やテロへの過敏な反応とは対照的な、原発事故に関する楽観的な見通しは何なのかと。こうなってほしくない現実には目を背けてしまうのだとしたら、戦時中に日本の上層部が判断を見誤った時と同じものを感じてしまいます。

 はたしてこの国は本当の意味でのリスクマネージメントができているのか。

 このことは先日、映画『シン・ゴジラ』を見た時に浮かんだ疑問でした。

 われわれはリスクを根絶しようとする前に、リスクと正面から向かい合わなければならないのではないか、とも。

 放射性廃棄物から生まれたゴジラと付き合っていく覚悟が日本人にはあるのか――その答えを迫るかのような作品を今週のマガ9レビューで紹介しております。ご関心のある方は、ぜひ映画館へ足をお運びください。

(芳地隆之)

 

  

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