今週の「マガジン9」

 先週の編集会議でとり上げられたテーマのひとつは「モヤモヤ感」でした。

 マガジン9の前身であるマガジン9条が発足してから11年と8カ月。「継続は力なり」とはいうものの、世の中の流れは当時よりも悪くなっていると多くのメンバーは感じている。われわれのウェブサイトが社会の潮流を変えられるとまでは思っていないけれど、自分たちの活動に対する、この手応えのなさはなんなのか? をメンバーの1人がそう表したのでした。

 「炭鉱のカナリア理論」なる言葉を知ったのは、大江健三郎さんのエッセイでした。そもそもの出所は、アメリカの作家、カート・ヴォネガットなのだそうですが、大江さんの言を借りれば、芸術家の役割は世の危機をいち早く察知し、警鐘を鳴らすことであり、それは、炭鉱内でいち早く中毒ガスに反応し死んでしまうことで炭鉱夫たちに危険を知らしめるカナリアになぞらえられるというのです。これを初めて読んだ20歳の私は「なるほどなあ、かっこいいなあ」と思いました。

 マガ9にインタビューや連載コラムで登場される方々の声にはそうした役割を担っているものが少なくありません。そこに見られるのは、多くの人が安穏と生きている日常に潜む危うさを指摘し、解決しようとする、あるいは現場に飛び込み当事者に寄り添う姿勢です。それに私は敬意を抱くと同時に、「カナリアだけに身を切るような負担を任せている」ことに後ろめたさを感じてしまいます。

 ケンカに勝つには仲間を増やさなければならない――知人の経営者がこう語ったことがあります。その言葉にいたる経緯は省きますが、彼は、敵と正面からぶつかるだけでなく、自分たちに共感してくれる人を集めて数で勝て、と言うのです。「炭鉱のカナリア理論」とは違う、商売人らしい発想だと思いますが、はて、私たちは仲間を増やすことに努めてきたのだろうか?

 私たちは一枚岩の集団ではありません。思想信条が必ずしも一致しているわけでもない。これまで続けてこられたのは、危機感を共有していたからでしょう。ただ、「モヤモヤ感」を払拭するには、私たちがいまいちど日本国憲法の理念に立ち返り、この時代に目指すべき社会や国のイメージを多くの人々と分かち合うことだと思っています。

(芳地隆之)

 

  

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