今週の「マガジン9」

 カイロを訪れた20代のときのこと。真夏のエジプトの首都は日中40度を超える暑さでしたが、初めて中東に足を踏み入れた私は、若さと好奇心できょろきょろしながら、街中を歩き回っていました。そんな私に、ある青年が声をかけてきました。「私は日本の大ファン。ここであなたと出会えたのは幸運だ」。そのフレンドリーな物腰に私はうれしくなって会話が弾み、「ぜひ我が家でお茶をご馳走したい」と誘われるままに付いていって、彼のアパートで濃い紅茶と甘いお菓子をいただいていると、彼は奥の部屋からたくさんの絨毯をもってきました。価格はどれも数百ドルだと言って。

 やられたと思いました。密室でちょっと怖かったのですが、「自分は買わない」。はっきり答えると、彼は露骨に不愉快な顔をして、「お茶もお菓子も口にしたではないか」。私は早々にその場を去りました。

 その翌日、ピラミッドとスフインクスを見に、ギザ地区に行った私は、ラクダを引いた初老の男性から「ウエルカム・トゥ・カイロ。わざわざ日本から来てくれたのか。サービスでラクダに乗せてあげよう」といわれるままに二こぶの間にまたがり、ピラミッドを横目に砂漠の奥へ。ギザ地区の入り口からはずいぶんと離れたところで、男性から言われたのは「ここまでは無料だが、帰りは20ドル払ってほしい」

 また、やられた。私はラクダから降りて、歩いて帰ろうとしました。すると、「2ドルで乗せて帰る」というので、いま来た砂の道を再びラクダで戻ったのでした。

 こう書くと、エジプト商人の悪い印象を与えてしまうのですが、たまたま変な人に呼び止められただけ、というか、嬉々としてついていく私が悪かったことを言いたかったのと、先日、アメリカを訪問し、トランプ大統領から破格の厚遇で迎えられた安倍首相が、最高級のおもてなしに、内心びくびくしていたのではないかと想像したことを書きたかったのです。ゴルフで27ホールも回っていたら、無理難題のひとつやふたつ吹っかけられるでしょう。

 タダより高いものはありません。知り合って間もないのに、いろいろなものをもらったりしていれば、相手が「どんな見返りを求めているのか」と考えて、落ち着かなくなります。

 そんな感覚が安倍首相にもあるといいのですが。おもてなしを受けた手前、相手の要求にノーといえず、私たち国民のプラスにならないような約束をして、帰ってきたなんてことが決してありませんように。

(芳地隆之)

 

  

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