今週の「マガジン9」

 6月27日付『朝鮮日報』(日本語訳)に「北朝鮮の人は、米国人より中国人を嫌っている」というタイトルの記事が掲載されました。ジョン・エバラード元駐朝英国大使が2006年から2年半にわたる北朝鮮での見聞や体験をまとめた著書(『Only Beautiful, Please』)の出版記念イベントについて報じたものです。

 そこでエバラード氏は、北朝鮮の人々が、最大の経済支援国である中国に対して必ずしもいい感情をもっていないことを指摘しています。「中国と北朝鮮の経済協力はますます緊密になっているが、その一方で『中国人は横柄だ』と考えるなど、北朝鮮の根深い独立意識が背景にあるようだ」。その一方、アメリカに対するそれは、国内の「あちこちに米帝国主義に対する敵対的宣伝文句が並んでいるが、一般人の米国に対する感情はそれほど敵対的ではないと感じた」。さらに「米国が実際に北朝鮮を攻撃すると考える人もそれほど多くなく、また北朝鮮の人は韓国を米国のあやつり人形だと認識していることから、韓国が北朝鮮を攻撃するとも思っていないだろう」と語っています。

 これらの指摘は、かつての東欧諸国の国民感情を思い起こさせました。当時の各国政府がソ連との友好や西側資本主義との対決姿勢を強調する一方、国民は支配者然として振る舞うロシア人に反発し、アメリカの自由や豊かさに憧れを抱いていたのです。

 「北朝鮮の一般国民はシャイで真面目。みんな豊かになろうと一生懸命働きます」

 こう語るのは中国を拠点に北朝鮮と日本との間の貿易に携わっていた日本人です。彼は「(北朝鮮のビジネスマンは)商売の障壁となるような制度があれば、そこで諦めることなく、何かいい方法がないか懸命に探す。このくらいの粘り強さをぼくたちも学ばなければいけないと思う」とも。また、「(ロシア、中国、北朝鮮が接する)この地域で商売をする際に重要な言語は中国語と朝鮮語、そして日本語、ロシア語。英語が話せたって、何の役にも立ちません」という言葉が印象的でした。

 私たちのもつ北朝鮮のイメージは、平壌での軍事パレード、巨大なスタジアムでのマスゲーム、金王朝の独裁などマイナスなものに偏りがちです。もう少し想像力を働かせてみれば、北朝鮮の違う像が見えてくるのではないでしょうか。

 拉致問題が両国の国交正常化交渉を阻んでいることは承知しています。しかし、強硬な態度一辺倒での問題解決は難しいと思うのです。

 折しも今日(8月29日)、北京で4年ぶりに日本と北朝鮮の政府間協議が行われます。主要議題は日本人の遺骨問題とのことですが、竹島や尖閣諸島をめぐる領土問題で日韓、日中関係に緊張感が高まっているなか、日朝政府間協議が両国の国交正常化交渉へとつながり、東アジアに新しい風を吹き込むことを期待してやみません。

(芳地隆之)

 

  

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