今週の「マガジン9」

 8月15日は、靖国神社への政府関係者の参拝を巡って、いつも必ず大きな議論になります。また境内の喧騒は、年々エスカレートしているようでもあります。この模様については、今週の「鈴木邦男の愛国問答」でも、鈴木さんが書いてくれています。
 なぜ、こんなことになってしまうのか? 私は、私たちが本当の意味での「素晴らしい仕事を残してくれた先人たち」のことを知らなさすぎるからではないか、と思うのです。日本がアジア各国に「侵略」を重ね、多大な被害や苦痛を与えたことは明らかです。それに対しての「後ろめたさ」が、ずっと付きまとっている。そうした鬱屈した気分が、「逆ギレ」のようなことになって、「侵略戦争ではない」「南京大虐殺も従軍慰安婦もなかった」という、昨今の身もふたもない、言論になっているのではないでしょうか。
 もちろん、「侵略戦争」だったことは認め、謝罪も続けなくてはいけません。その上で、私たち市民の側に立って、権力者の暴走を止めようとした勇気ある先人や、先進的な思想を持ち込んだ本当の偉人たちのことを、もっと広く知ることで、私たちが本当に立ち返るべき場所や進むべき未来を知ることができるのではないでしょうか。
 先日の「マガ9学校」では、広瀬隆さんを講師にお呼びして、「原発、人権、そして憲法」というテーマで語っていただきました。そこでも、日本の近代史がマスコミによって、偏った伝え方をされてきた、ということを明らかにしてくださいました。例えば、幕末の志士として坂本龍馬は繰り返しテレビドラマの主人公になるのに、同じ土佐出身の中江兆民や植木枝盛といった、まさに日本の自由と人権を獲得するべくために働いた、自由民権運動の礎とも言える人たちが、ほとんど表舞台に出ることがないということ。また、私たち市民の自由と人権と平和を権力者たちに守らせている「日本国憲法」は、アメリカからの「押しつけ憲法」や「占領憲法」という、これまた卑屈な言われ方をされているが、実際にはGHQだけの手によって作られたものではない、ということなど。
 過去にもマガ9では、日本国憲法はアメリカの押しつけでなく、その中には植木枝盛の思想や在野の憲法学者だった鈴木安蔵らが作った草案が活きているという言説を紹介してきましたが(*)、もっとこれらの話が、史実として広まるといいと思っています。私たちの自信を取り戻すためにも。
 アジアへの侵略を進めてきた人を、いつまでもリーダーや偉人として扱うのは、一刻もはやく止めにしないと、という思いにもかられた今年の8月15日でした。

(水島さつき)

 

  

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vol.416
本当の偉人の仕事を
学び直したい
」 に1件のコメント

  1. 多賀恭一 より:

    GHQは憲法9条を望んでいなかった。日本人をアメリカの手先として戦わせたかったのだ。戦後の良識有る賢人達は、それを拒否するために憲法に9条をねじ込んだのだ。結果、日本は朝鮮戦争にもベトナム戦争にも軍隊を派遣すること無く、GNP世界第二位に駆け上った。

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