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今週は番外編付きの拡大版です。


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その25

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今週はちょっと趣向を変えて、コラムからの引用です。
●毎日新聞 2005年9月5日朝刊より
コラム 発信箱
「片隅・真ん中」
問答 山田孝男
 先週、日本記者クラブの党首討論で小泉純一郎首相に質問を試みた手応えのうち、私が最も釈然としなかったのは「日中関係は良好だ」と言い張る首相の、いかにもコイズミ的なワンフレーズだった。「4年も首脳会談が滞り、国際会議の片隅で会うだけでしょう」と突っ込んだ時、首相は怒気を含んで「片隅じゃない、堂々と真ん中で会っていますよ」と言い募ったのである。
 ウィットで矛先をかわすというニュアンスなら理解できるが、そうではなく、一休さんの「このはしわたるべからず」を地で行く屁理屈に気迫を込め、全力で押し返してくる。この人はなぜ、こういう場面で小児的な反応が出るのか。そこに引っかかったし、引っかかる方が小言幸兵衛(死語になりつつあるが、落語に出てくる小言ばかり言うオヤジのこと)扱いされかねない雰囲気も面白くない。<以下略>

 あら、ヤマダタカオくん、『笑点』の座布団運びだけじゃなくて、こんな立派なコラムも書いていたのね。なーんて、冗談。この山田さんは、毎日新聞の高名な政治記者なのですから、お間違いのなきよう(間違えるワケないって=ひとりツッコミの芸)。

 さて、今回は別にこのコラムの趣旨にツッコみたいのではありません。内容については、ツッコミ人もほぼ同感であります。 前に、「小泉ジャイアン説」をこの欄に書きましたが、小児病的ジャイアン病はますます悪化しているようです。

 とにかく人の言うことをまともに聞かない。ちょっと痛いところを突かれると、必ずといっていいほど、はぐらかす。きちんとまともに答えない。その上で逆上して声張り上げ、自己正当化を行う。もう、不気味な境地に達していますな。

 この際、この方には
「逆上首相」という新しい素敵なニックネームを差し上げたいと思います。

 例の
「人生いろいろ」発言、さらに「公約が守れなくたって、大したことじゃない」「自衛隊のいる所が非戦闘地域」「女の涙には勝てない」と、一国の責任ある首相とはトーテー思えないデタラメ答弁の数々が続く。
 そして、「参議院で反対した人も今度は賛成するはず」だから、「参議院で反対した人も、今度賛成するなら、処分は考えない」。
 ところが、衆議院で反対した人たちには問答無用で「くの一刺客」。賛成したくったって、刺客を送られてからでは、もう対処のしようもないでしょっ。と、泣き言を言う「元」自民党議員さんも情けない。

 いろいろな問題が山積。郵政だけにこだわっていられるような状況ではないことは明らかでしょう。年金、介護、少子化、高齢化、外交行き詰まり、安保理常任理事国入り失敗、靖国問題、財政破綻、イラク派兵問題、憲法論議。どれをとっても、早急に対処しなければ大変なことになる問題ばかりです。
 それを、例によっての大はぐらかし戦術。郵政問題さえ解決できればすべてがバラ色! すべて郵政に争点を一本化。
 じゃあ、お聞きしたい。郵政が民営化されれば、外交はうまくいって常任理入りも可能になり、少子化も止まり、老人たちも幸せになれるのかあっ!

 しかし、コイズミさんの頭の中って、どうなっているんでしょう。自分の言ったことにまるで疑問を感じていないとすれば、
その頭はすでに「危険領域」に入っていますよ、ホント。

 あの方の言葉を聞いていると、なんだか子どものケンカを思い出す。「おまえのカアチャン、でべそ!」「おまえのカアチャン、もっともっとでべそ!」
 ああ----。深〜い溜め息が出てきてしまう。これが、私たちの国の総理大臣のレベルなのですから。

 山田さんが書いているように、
「片隅でしか会えてないではないか」と突っ込まれると「いや、真ん中で会っている」。
 これほど人をバカにした答えもない。聞く側は「正式な会談が出来ていない、その責任はどうするのか」と、問うているのです。その中身にはまるで答えていない。
  普通の神経の人なら、ここで少しは考えます。
 「こういう打開策を考えている」とか「水面下ではルート作りを行っているから、その心配はあたらない」とかなんとか、それなりに答えようとするでしょう。 だから正直といえば、これほど正直なお方もいない。だって、「ボク、なーんにもできないもーん。みんな向こうがワルイんだもーん」と、仕方なしに白状しちゃっているわけだから。
 でも、切ないなあ、こんな人が外交やってるんです。

 
日本は、壊れていきつつあります。アジアの中でリッパに孤立。だーれも友達がいない小金持ちの、でも借金だらけの、サビシイ国。
 自民党を壊すのは勝手です。しかし、コイズミさん、アンタに私たちの国を壊す権利なんか、ねえんだよーっ!

イラスト
番外篇 「自民党改憲案」について
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 ちょっとツッコミ人が夏休みをとっている隙をついて、やってくれました、8月1日発表の自民党「新憲法第一次案」。まったく、油断も隙もありゃしない。
 で、すぐに読みました。こりゃまずいっ、ひどいっ! てんで、ソク反撃をっ、と思ったのですが、ご存知、小泉ジャイアン解散→総選挙。「ツッコミ欄」も、ついそんなことに目を奪われて、なかなかツッコム機会がありませんでした。ごめんなさい(ペコリッ)。
 それにアタシもサラリーマン、時間の余裕もそんなにはない(と、グチを言ってるバヤイじゃない。反撃です、反撃じゃあーッ)。

  ツッコミどころは満載なのですが、やっぱり我らは『マガジン9条』。 まずは、9条関連からツッコミましょう。
 第二章 安全保障
(安全保障と平和主義)

第九条 日本国民は、諸国民の公正と信義に対する信頼に基づき恒久の国際平和を実現するという平和主義の理念を崇高なものと認め、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する平和国家としての実績に係る国際的な信頼にこたえるため、この理念を将来にわたり堅持する。

2 前項の理念を踏まえ、国際紛争を解決する手段としては、戦争その他の武力の行使又は武力による威嚇を永久に行わないこととする。

3 日本国民は、第一項の理念に基づき、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動に主体的かつ積極的に寄与するよう努めるものとする。

(自衛軍)
第九条の二 侵略から我が国を防衛し、国家の平和及び独立並びに国民の安全を確保するため、自衛軍を保持する。

2 自衛軍は、自衛のために必要な限度での活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動並びに我が国の基本的な公共の秩序の維持のための活動を行うことができる。

3 自衛軍による活動は、我が国の法令並びに国際法規及び国際慣例を遵守して行わなければならない。

4 自衛軍の組織及び運営に関する事項は、法律で定める。

(自衛軍の統制)
第九条の三 自衛軍は、内閣総理大臣の指揮監督に服する。

2 前条第二項に定める自衛軍の活動については、事前に、時宜によっては事後に、法律の定めるところにより、国会の承認を受けなければならない。

3 前二項に定めるもののほか、自衛軍の統制に関し必要な事項は、法律で定める。
以上が自民案の九条関連の条項です。参考までに、以下に日本国憲法第九条を掲げておきます。比較すると、自民案の異常な長さに気付かれると思います。
第二章 戦争の放棄
(戦争放棄、軍備及び交戦権の否認)

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

ツッコミ開始ーっ!

 まず、先に書いたように、自民案の異常な長さに気付かれたはず。つまり、なんとか「自衛軍」の正当性を言わなければならないために、こまごまと付け足してしまい、こんな具合に伸びてしまったわけです。もちろん、
悲願である「軍隊」の正式認知がなにより大切なわけですから、それも仕方ない、ということでしょう。

 で、その「軍隊」の正当性を言うために持ち出したキイワードが、「国際」という概念です。やたらと出てきます。
  現憲法九条では「国際」という言葉は2回しか使われていません。ところが自民案では、なんと10回にわたって出てきます。なぜでしょう?

 さすがに自民案でも、九条二項で、「国際紛争を解決する手段」としての戦争や武力行使は行わない、と書かれています。つまり、平和主義そのものを否定することはさすがに出来なかった。
 したがって、「国際紛争」への「武力参加」もこのままでは難しい。となれば、「軍隊」という組織の存在の必要性にも疑問が出てこざるを得ない。
 「侵略から自衛する」というだけでは、装備なども縮小されます。なぜなら、国外で戦うのでなければ、航続距離の長い戦闘機や巨大な護衛艦、射程距離の長いミサイルなどは不必要だからです。
 ならば、最低限度の自衛力と、国際緊急援助隊などの組織で十分に対応できるではないか。この論理に打ち勝つ理屈を作り出すのは自民党の知恵者たちにとっても、ソートー苦しかったでしょう。で、どーしたのか?

  そこで「国際」です。
  魔法の呪文の「国際アブラカダブラ」なのです。
国際的に協調する、という一点で、「自衛軍」を認めさせてしまおう、という魔法なのです。錦の御旗です。国際的に認められれば、軍事力を海外に押し出しても、どこからも文句は出まい。これが、本音です。

 でも、ここで考えなければならないのは「国際」の中身です。

 戦後初の「自衛隊の軍事的海外派遣」は、どのように行われたか。
(あれを「軍事的派遣」ではない、というのは、どこから考えても屁理屈です。すでにイラク・サマワは純然たる「戦闘地帯」です。それは、米英軍も認めています。戦闘地域に自衛隊を派遣するのは「軍事的派遣」以外の何物でもないはずです。違うと言い張っているのは、いまやコイズミさんとそれに追随する一部の方たちだけでしょう)。

 コイズミさんは、あの
「イラク自衛隊派遣」をナントカの一つ覚えのように「国際協調のため」と繰り返しました。そのことは、さすがに忘れっぽい日本人でも、まだ相当数は覚えているでしょう。ここが、今回の「新憲法自民案」につながってくるのです。
  この時の「国際」とは、いったいどこを、誰を、世界中のどの国を指して言った言葉だったのでしょう。

  もうお分かりですよね。あの
「国際」とは、ただ一国、ブッシュのアメリカのことにすぎなかった。あれほど世界中で反対運動が起こり、安保理常任理事国でもアメリカ以外はたった1カ国(イギリス)しか同意しなかったのが、あのイラク戦争だった。日本は、いや、コイズミさんは国民世論(反対が70%以上を占めていた、と当時の世論調査は伝えていました)の反対を押し切って、自衛隊イラク派遣を強行したのでしたよね。
 (そのために、4人の日本人がイラクで殺されました。その責任は問われないままです)

  ここに、「自民案」の危うさが見えてくるでしょう。もし、この条文がこのまま通ってしまえば、アメリカの言いなりにどこへでも「自衛軍」を派遣することが可能になる、ということじゃありませんか? 違いますか? それをうまく言いくるめようとしたのが、自民案第九条の二の二項です。「国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動」をすることができる、とされています。
  しかし、先ほども書いたように、イラク戦争は「アメリカの主導する国際協調」でしかなかった。でも、「これが国際協調」と言い張ったのがコイズミさんでしたよね。
 ね、道筋が明らかになってきたでしょう? 国際協調の内実など、その時々で変わるし、時の権力者はどうとでも言い逃れることが出来る仕掛けになっているのです。 次の「国際協調」の現場は、一体どこになるのでしょう。イランですか。まさか、北朝鮮じゃないですよね、ブッシュさん、コイズミさん。

 次の三項も問題が多いのです。 「自衛軍の活動は-----国際法規及び国際慣例を遵守」と書かれています。つまり、法規にのっとっていなくても、「国際慣例」と言い逃れようというわけです。
 「今度の○○への自衛軍の派遣はアメリカの言いなりで、国際法上も許されない」などという批判には、「
いや、あれは慣例だ。すでにイラク戦争の時に慣例は作られている」と切り返すことができる、という仕掛けになっています。
 こうして、軍隊海外進出の道程が見えてきました。とても、このまま通すわけにはいきません。なんだか、背筋が寒くなってきました。まだ残暑だっていうのに。

 さらに、もう一つだけ、指摘しておかなければならない問題点が、この二項の後半部分です。

 「我が国の基本的な公共の秩序の維持のための活動」もできる、とされています。これは一体どういう意味?
 つまり、国民を規制、取り締まり、制圧することも可能だということです。公共の秩序を破壊する可能性があると認定されれば、認定された人たちが軍事力で制圧されても、それは憲法上許される、ということになります。
 これは「破壊活動防止法」などにより、警察が行ってきた活動です(それもかなり、問題の多い法律ですが)。つまり、警察行動を軍隊が肩代わりできる、と定めているのです。
 自衛隊法ならいざ知らず(それも問題ですが)、国家の最高規範であるべき憲法にこのような国民を敵視するような条項を入れるなんて、恥知らずというべきでしょう。

 多分、このような批判には「いや、これは地震や台風などの自然災害時の救助などを念頭においたものだ」と答えるつもりでしょう。ならばきちんと「自然災害などで公共の秩序が破壊された時の活動」と書けばいいのです。
どうとでも解釈できるような条文で本当の意図を隠してしまう。権力者がよく使う手だ、ということは覚えておきましょう。

 ここまで書いて、ちょっと疲れてしまいました。本当に腹が立ちます。まだまだ、ツッコマなければならないことは沢山ありますが、それらは次週以降におくりましょう。少し頭を冷やさなければなりませんから。

 それにしても、こんな案を作るような党が、選挙では圧倒的に優勢だと、マスコミは一斉に伝えています。
 本当にこんなことで、いいんでしょうか。
私たちの国は、どこへ行こうとしているんでしょう。

イラスト
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