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週間つぶやき日記

第三十回

090114up

1月10日(土)~13日(月)

夢を見た 内閣改造の 夢を見た

 国会の予算委員会での審議が始まりました。
 なんとも見ているのが辛い政治の惨状です。まともな言葉のぶつかり合いがない。
 “追う”と“逃げる”の鬼ごっこ。言葉で鬼ごっこをしてどうするのか。いまどき、こんな低レベルの鬼ごっこなど、小学生だってやりはしない。そして最後はお決まりの“強行採決”。ああ情けない。悲しいけれど、これがいまの日本の政治なのです。

 そこで、もう少しまともな内閣って造れないものかなあ…と考えたのです。ま、あんまりいいことの思いつかない新年だから、個人的な夢の世界に遊ぶのもいいんじゃないですか。

 というわけで、以下、私の勝手な組閣案です。
 みなさんも、自分なりの内閣を考えてみたらいかがですか? これ、意外に面白い遊びでしたよ。
 現行制度では、総理大臣を含め大臣はとりあえず15人もいます。内閣法によれば、必要ならあと3人は「特命大臣」として増やしてもいいらしいのです。
で、決めやすいところから、勝手に任命しちゃいました。
 (筆者注・現役の政治家は除きました。また、政府省庁の組織がこれでいいかどうかの問題は面倒なのでここでは触れず、現行の組織編制に従って大臣を任命することにしました)
 では、組閣開始―っ!

◎防衛大臣 伊勢崎賢治さん (東京外国語大学教授)

 ご存知、平和構築学の第一人者。この人なら、自衛隊をいかにうまく使って世界の平和に貢献できるかの方法を、十分に“構築”できるはず。紛争地での活動経験が役に立つ。
 (副大臣として、クラスター爆弾禁止条約の成立に大きな役割を果たした中央大学教授の目加田説子さんにも協力してもらう)

◎農林水産大臣 井上ひさしさん (作家)

 井上さんが山形県川西町で行っている「生活者大学校」は、すでに21回を数える。地域からの発想を大事にした農業政策には、うってつけの人である。都会と地方の両方に目配りできる。
 (副大臣には、この生活者大学校の教頭で佐賀県で実際に農業を営む農民作家の山下惣一さん。なお、特別補佐官には、当「マガジン9条」でおなじみ、やまねこムラ村長の辻村博夫さんを任命!)

◎厚生労働大臣 落合恵子さん (作家、クレヨンハウス主宰)

 温かみのない政治からの脱却は、ご自身も長年の在宅介護で母上を看取った経験をお持ちのこの人に託す。また、子どもの本専門書店も主宰、親子問題や女性問題にも詳しいので適任だろう。
 (医療問題担当補佐官には、現役小児科医の毛利子来さん。また、老人介護・年金問題担当補佐官は『おひとりさまの老後』の上野千鶴子東大教授以外には考えられない。さらに、労働雇用問題も避けては通れないから、「年越し派遣村」で素晴らしい行動力を見せてくれたNPO代表の湯浅誠さんにも労働問題担当補佐官を委嘱したい。それにしても、厚労省というのはタイヘンだなあ。このくらいの布陣でなければ、国民の安全や健康は守れない)

◎財務大臣 金子勝さん (慶応大学教授)

 まあこの人なら、無駄遣いされそうな予算はバッサバッサと削り、官僚主導の予算編成を根底から変えてくれるだろう。やや暴走気味のところもあるから、副大臣が大事?
 (という意味で、副大臣にはお目付け役として金子さんにビシッと意見してくれそうな吉永みち子さんはどうだろう)

◎金融・財政政策担当大臣 森永卓郎さん (獨協大学教授)

このところテレビ出演も増えて、人気急上昇中。彼の『年収300万円時代を生き抜く経済学』を、きちんと政策の中に生かしてほしい。所得格差の軽減・解消を、森永さんなら実現できるかも。

◎経済産業大臣 佐藤雅美さん (作家、主に時代小説)

佐藤さんの『大君の通貨』『将軍たちの金庫番』は、江戸の財政事情を描いて出色。現在の日本の財政は、もはや江戸期の政策以下としか思えない。とすれば、その事情に詳しいこの人の出番だ。

◎外務大臣 坂本龍一さん (ミュージシャン)

 海外で最も有名な日本人ミュージシャンである。対人地雷、原発、反戦などの問題での活動も精力的で、世界のNPOにも名前が知られている。またAP BANK活動もユニーク。外相に相応しい。
 (アジア政策特別臨時補佐官として、姜尚中東大教授。一躍アジアでの日本の存在感を示すことになる)

◎文部科学大臣 重松清さん (作家)

 この人ほど、子どもたちに優しい目を向けた作品の多い人も少ない。まず教育こそがこの国の建て直しの急務だとすれば、彼をおいてほかにいない。医療改革などにも一家言あるはず。
(なお、副大臣には、映画監督・作家の森達也さん。さらに特別補佐官には『バッテリー』という少年たちのスポーツ小説が素晴らしいあさのあつこさんを。日本の文化政策の遅れを取り戻すいい機会にできる)

◎総務大臣 上原公子さん (前国立市長)

 地方自治にもっともかかわりのある大臣だけに、地方の内実を知る人物であることが望ましい。上原さんは2期8年、東京都内では初の女性市長として実績を残した。その実績を国政にも反映。
 (特別補佐官には椎名誠さん。彼ほど日本中を旅している作家はいないのだから、地方の活性化政策については、大いに提言してくれるはず)

◎法務大臣 伊藤真さん (伊藤塾塾長)

切れ味鋭い法解釈には定評がある。その解釈の妥当性は、数多い司法試験受験塾の中でも抜群の合格率を誇っていることからも納得できる。端正なスマイルでカリスマ大臣になる可能性も。
(「改憲派の意見は聞かないのか」という批判も出るだろうから、ここは小林節慶応大学教授に副大臣を担当してもらうしかないだろう)

◎国土交通大臣 田中優子さん (法政大学教授、日本近世文化)

もはやこの国は、江戸期に学ぶしかないのではないか。あの時代の文化に精通している田中さんなら、きっと現代にも通じるスローライフの国造りの国土政策を練り上げてくれるだろう。

◎環境大臣 竹田津実さん (北海道在住の獣医、写真家)

もう国土を壊すのはいい加減にしてほしい、という観点からの任命。主に野生動物の保護、治療、リハビリなどに取り組む。素晴らしい動物や風景写真で自然の大切さを教えてくれる。
(特別補佐官は、沖縄で「ゴミゼロ大作戦」を繰り広げ、『ジュゴンの見える丘』という素晴らしい曲を歌うミュージシャンのCoccoさんに、ぜひお願いしたい)

◎国家公安委員長 鈴木邦男さん (作家、一水会顧問)

どう考えたって、この人しかいない。日本の公安警察の現状を、彼ほど知り尽くしている人間は多分いないだろう。もう文句なしに、彼に決定。なるべく穏やかにやって欲しいけど…。
(副大臣には、雨宮処凛さん。うーん、でもこのふたりだとちょっと過激すぎるかなあ)

◎沖縄及び北方対策担当大臣 目取真俊さん (作家)

沖縄問題を担当する大臣が、なぜ沖縄県人ではないのか。それで沖縄の問題を本当に理解できるのか、という批判に応えるべく、目取間さんを任命。最終的基地問題解決へ向けての強力な人選。
(特別補佐官には、沖縄と本土の温度差を熟知している岡留安則さんがふさわしい) 

◎内閣官房長官 佐藤優さん (起訴休職外務事務官、作家)

この凄まじい閣僚たちをまとめ上げるには、豪腕の持ち主でなくては務まらない。というわけで、佐藤優さんにケッテーイッ! あの鋭い目で睨まれたら、閣内不一致などといういまの内閣のような不様を晒すことはないだろう。

 以上のように、閣僚名簿を勝手にでっち上げてみました。ところがここまで来て、なかなか「内閣総理大臣」の顔が思い浮かばない。うーん、どうしようか。
 筑紫哲也さんがご存命だったら、拝み倒してでも総理大臣になっていただきたかったけれど、それもかなわぬ夢。
 しかし、よく考えたら最適任者がおりましたあーっ!
 発表しますっ!!

◎内閣総理大臣 中村哲さん (医師、ペシャワール会)

 中村さんは、もちろん医療問題には精通しているし、農業の大切さも痛感している。アフガニスタンの荒れ果てた大地に用水路を建設しているので土木技術も身につけたし、それらに関わる費用のやりくりで予算編成にも明るい。アフガンを始め国際情勢に通じていることは言うまでもない。そしてなにより、現地の人々の信頼を勝ち得ていること。さらに、どんなことがあってもブレたり言い訳したりしない。決めたことは最後までやり通す決断力と行動力。どれをとっても、この人こそ最適任だ。口先だけではない実践こそが、いまの日本の政治家に求められている最大の資質だとすれば、中村哲さんに勝る人は見当たらない。

 「ようやくこれで決まったな」と満足げに“組閣リスト”を見ていたら、うちのカミさんが口を出しました。

 「私なら、河野義行さんを推薦したいな。松本サリン事件の被害者で、とうとう奥様をお亡くしになったけど、あれほど毅然とした方は見たことも聞いたこともありません。ひどい被害に遭われ、警察には疑われ、マスコミには犯人扱いの報道をされ、その上、サリン事件で奥様までお亡くしになった。それでも河野さんは、オウム信者たちをきちんと人間として認め、いまでも彼らと面と向かって付き合っているというんですよ。あんな高潔な方はいません。世の中の歪みがひどすぎるいまだからこそ、あのような人格者の総理大臣が必要なんじゃない?」

 うーむ、これも十分に納得できる意見です。世の中、よーく見てみると、素晴らしい方っているものですねえ。まだまだ捨てたもんじゃない。
 ま、こんなふうに、たまには「政治」で遊んでみるのもいいじゃないですか。

 というわけで、「今週のつぶやき日記」が、数少ない読者のみなさんに呼びかけます。
<私が勝手に選ぶ総理大臣>大募集 です!!

「この人がいいな」
「あの人なら、私の未来を少しだけ預けてもかまわない」
「この国を託すのは、彼(彼女)しかいないでしょっ!」
「アイツとなら一緒に苦労してみたい」(恋愛みたい、笑)
「これで日本は立ち直る」
「まあ、ベストではないけど、あの人ならベターかな?」
「消去法で決めました」………。

 とりあえずどんな理由でもいいですから、「あなたの総理大臣」を“勝手に”選んでみませんか。もちろん、「このコラムの大臣選択に異議あり!」という方の「あの大臣は、この人のほうがふさわしい」というご意見も大歓迎です。
 ただし、現役政治家はやめましょうね。それではあまりに夢がなさすぎます。

 今週の日記はいつもとは大分違いますが、新年初夢大会ということで、ご容赦いただきたいと思います。

(鈴木 耕)
目覚めたら、戦争。

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