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もくじへ マガ9的!2006ワールドカップ
シュバーゲルちゃんのW杯観戦日記
 
シュパーゲル
『マガジン9条』ボランティアスタッフの一人。スタジアムでの観戦やサポーターと交流する楽しさに、前回の日韓W杯で目覚め、今回は休暇をとりドイツ各地を観戦旅行中。ちなみにペンネームのシュパーゲルとは、ドイツ語でアスパラガスの意味。
6月24日(土)
A time to make friends!
6月22日(木)
ニュールンベルグの熱狂
6月17日(土)
世界各国サポータウオッチ
6月13日(火)
韓国サポーターは熱い!
6月11日(日)
カイザースラウテルンの悲劇
6月24日(土)
A time to make friends!



今大会のテーマ "A time to make friends"のバスがゆく (c)Nao Tomita

 日本対ブラジル戦。場所はドルトムント。一挙に北へ向かいます。季節が3ヶ月くらい進んだ初秋のような気温です。開始時間は夜9時。
負けましたよ。ブラジル戦、きれいさっぱり。やっぱり格が違いますね。玉田の先制点のときには、前後の座席のドイツ人とハイタッチして、奇跡を夢見たものですが。だんだんブラジルが本気全開になってきたら、なんか、お見事!という感じでした。ロナウジーニョも、カカも、ロナウドも、簡単に「あらら?」という感じでシュートまでもっていくのです。私は、なんだか逆にさばさばした満足感が残りました。ブラジルのサポーターと、3戦の中でいちばん数が多かった(ように感じた)日本人サポーターの作り上げた、あの独特の雰囲気も、「いやあ、ここにいられて、よかったなあ」と思いましたし。

 きっと、日本に帰ると「負ける試合ばかりみて、何が面白かったの?」とか「日本はひどかったね」とか言われると思うんです(特に会社の上司はサッカーを敵視しているので)。でも、このブラジル戦で確認したのですが、私はこのワールドカップ観戦に、大満足です。
正直、試合の結果なんてどうでもいいです。世界中からやってきた人と大きなお祭り騒ぎで触れ合えた、それで十分です。というか、こんな体験、初めてでした。


ブラジル戦の日本入場シーン

 初回でも書きましたが、ワールドカップサッカーは国と国とのぶつかりあいになるため、ともすれば愛国的なパフォーマンスが目につきます。ドイツの町で、駅で、店の中で、国旗を振り、国名を連呼し、騒ぐいろんな国のサポーターが見られました。私たちも試合中には「ニッポン チャチャチャ」と応援しました。ドイツ人も国旗をかかげ町中を走り回っています。
 試合中は敵であっても、その実、みんな「サッカー好き」です。サッカーが好きという点では、すぐに話ができるのです。日本が先制すれば「もしかしてブラジルに勝てる?」とドイツの人も期待してくれます。サポーターの少ない国には、すぐに即席応援団が出来上がります。レストランで隣のテーブルに座れば、今日の試合や選手をさかなに、めちゃくちゃな英語でも話がはずみます。日本人同士だって、名前も知らない人と延々と話しこんでしまいました。ブラジル人のおじさんが、試合前ににっこり握手を求めてきたりもします。そんなこと、普通の旅行ではありえませんよ。いろんな人種が、ただサッカーを観るために集まり、駅前広場やスタジアムで歓声をあげる。その応援の仕方も個性があって、面白いんです(酔っ払ってからんでくるタチの悪い人たちは、一部には存在していますが)。


ブラジル戦の日本の応援。
手前に見えるのはブラジル人のおじさんがかぶった派手な帽子の一部


 そういうことを体験すると、ワールドカップサッカーにとって、国なんて、運動会の赤組、白組の区別と変わらないような気がしてきたのです。スポーツを楽しむために、便宜上、区別しているだけなんじゃないかなって。
 だって、フランスチームにも黒人の選手がたくさんいます。ドイツのエースストライカーは隣国からやってきた人です。アフリカのチームに白人の人がいたりします。日本にだって、ブラジル出身の選手がいますよね。みんなサッカーをするために、組み分けされているだけのような気がしました。
 移民の問題や、植民地政策のなごりなどその原因は多岐にわたることは承知していますけど、「チーム=民族、国家」とは言い切れないはずです。監督だって、韓国がオランダ人、イングランドがスウェーデン人、日本だってブラジル人。ね?

 所属する赤組を誇ってもいいと思います。赤い旗をふって、応援してもいいと思います。そのほうが楽しいから。そのほうが盛り上がるから。で、試合が終われば、赤組も白組も友達。相手をたたえ、応援団をたたえ、自分のチームもたたえ……勝つチームがあれば、負けるチームもある。それがサッカーでしょう。それがワールドカップだなと観客席で、ビールスタンドで、地下鉄の中で実感しました。
 たとえ「ぷちナショ」気分になっても、本当に相手の国と戦争するより、ずっとずっといいことだと思いますよ。やっつけろ!と叫んで、応援するほうが。PKにむけてブーイングするほうが。


センターサークルのメッセージ「Say no to racism」

 今回のオフィシャルTシャツなどには「A time to make friends」と書かれています。 試合前にセンターサークルの広げられたカバーには「Say no to racism」とも。それはひとり一人が自覚し気をつけていないと、足をすくわれてしまう可能性があるからです。なかなか実現できないことだからこそ、このようなメッセージが発せられているのかもしれません。 

 ロナウドが日本戦で累積得点記録に並んだとき、私も立ち上がって拍手しましたよ。すばらしいもん。日本チームにだって拍手しましたよ。あんな雰囲気でやったことなかったでしょうから。幸せだねって。
 個人的には、川口、中澤、坪井はよくやったなあと思います(ディフェンダーが目立つのはよくないこと? 私は素人ですから、専門的な評価とは違うとは思いますが)。
 それから、ヒデ。ブラジル戦終了後にセンターサークルでずっと横たわっていましたよね、顔をユニフォームで隠して。泣いていたのかもしれませんね。でも、私は立ち上がって、サポーターの前で堂々と泣けばよかったと思います。2度、3度とスタッフや宮本が様子を見にいったのに、ずっと寝ているのはちょっと残念だと思いました。私だって一生懸命応援したのにな。手を振ってほしかったです。
 スタンドで泣いていた日本人青年。「だめだよ。そんなにココロを閉じていては! 世界の人々と触れ合ったかい?」と背中をたたきたかったです。

 日本は予選敗退になってしまいましたが、まだまだワールドカップは続きます。私の休暇もおしまい。あとは、テレビ観戦にうつります。

 そうそう、ブラジル戦で、少し感動したことがありました。最上席の片隅に、どなたか日本人のかかげた白地に赤いハートの旗があったのです。一瞬それは日の丸に見えました。でも、双眼鏡で見たら、中心にあったのはハートマークでした。いいと思いませんか? 白地にハートの、日本応援の旗。私はこれから、自前でそれを作りたいと思います。

 いやあ、楽しかったっす。優勝はどこかな? そして、次回は日本も、アジアもがんばるぞ。


ブルージャージにキュウシール


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