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 こんにちは。

 前回は、原発にはメーカー責任(製造物責任法)が適用されないという話題をとりあげました。

 今回は、原発メーカーがメーカー責任についてどう考えているのかをご紹介します。

「家電・原発メーカー」

 そもそもどの企業が、原発を製造しているかご存知ですか?

 日本では、日立製作所、東芝、三菱重工の3社です。ちなみに、福島第一で事故を起こした原発は、設計製造にGE(アメリカ)、日立、東芝が関わっていました。 

 一般の人にとってみると、日立とか東芝というと、家電メーカーというイメージが強い身近な会社ですが、実は原発も製造しています。ですから、「家電・原発メーカーの日立、東芝」などというのが正しい表現です。

メーカーへの手紙とその回答

 グリーンピースでは、先月から原発メーカーが、法律でメーカー責任を逃れている現状は不公平だと「原発にもメーカー責任を」の署名を集め始めました。すると、世界中から賛同者があつまり、現在9万4千筆を越えました。

 このキャンペーンを行うにあたり、グリーンピースは各原発メーカーに質問状を送りました。

 今回手紙を出した日立製作所・東芝・三菱重工への主な質問項目は以下の通りです。

1. 原子炉メーカーとして、貴社に福島第一原発事故の責任があるとお考えですか?

2. 福島第一原発事故の廃炉や除染、汚染水処理などの事業を受注していますか?

3. 現在、原子炉は製造物責任法の適用外とされていますが、福島第一原発事故の被害の状況を考えた時、原子炉メーカーの責任はどのようにあるべきだとお考えですか。

4. 貴社の製造した原子炉で過酷事故がおきましたが、今後も原子炉の製造を続けるお考えですか?

 各社、締め切りまでに回答をお寄せくださいました。

 日立は、「今後も原子炉の製造を続けるお考えですか?」との質問に、「地球環境保護の観点からも需要なエネルギー源の一つと認識して」いるので、原子炉の製造を今後も続けるつもりだと答えています。

 東芝は、「原子炉メーカーとして、貴社に福島第一原発事故の責任があるとお考えですか?」との質問に、「当社は福島第一原子力発電所事故につき法的に責任を負担するものではありません」としています。

 三菱重工は、「現在、原子炉は製造物責任法の適用外とされていますが、福島第一原発事故の被害の状況を考えたとき、原子炉メーカーの責任はどのようにあるべきとお考えですか」との質問に、「国の法制度に関するご質問につきましては、弊社が回答する立場にないため、回答を差し控えさせていただきます」としています。

 回答の詳細は、下記のページでご覧になれます。

ブログ:「原子炉メーカーさんに聞いてみました:原発事故の責任は?」

 このように、原発メーカーからは他人事のようなお返事しかいただけませんでした。

 しかし、これらの原発メーカーは、海外への原発輸出を進めようとしています。そして、原発関連ビジネスの売り上げも増加すると見込んだ経営計画を発表しています。

(写真:グリーンピース・ドイツは日立ヨーロッパ本社ビルに、「日立を福島の惨事から逃れさせてはならない」とのバナーを掲げて福島第一原発の原子炉メーカーの責任を訴えた)

グリーンウォッシュですか?

 最近、原発メーカーの広告は、スマートシティーや自然エネルギーの普及を進めていることを強調するものが多く見られます。

 しかし、その広告には一切原発に関する表現はありません。原発が、企業イメージにとってプラスにならないことを十分承知しているからでしょう。

 事実に反して、環境に良いことをしているというイメージを広告などで強調することを「グリーンウォッシュ」と言います。原発メーカーは、原発が社会に良いのであれば、堂々と原発の宣伝をすべきでしょう。売り上げが上がるとは思えませんが、それが原発事故後の原発メーカーがとるべき説明責任でしょう。それができないのであれば、広告は「グリーンウォッシュ」と言われても仕方ありません。

いまこそ注目! 原子力損害賠償法が改正 or 改悪?

 原子炉メーカーが事故の責任というリスクを負うことなく、原発関連事業で莫大な利益を追求できるのは、原子力損害賠償法でメーカーが製造物責任を免除されているからです。つくった原子炉が大事故を起こしたのに、責任を問われないなんて、おかしいと思いませんか。

 実は、この法律が今年8月までに改正される予定です。つい先日も、この改正のために自民党が今週から資源・エネルギー戦略調査会において検討をはじめるというニュースがありました。

 「改正」というと良く聞こえますが、この議論に私たちが注目しなければ、この法律はメーカー、そして電力会社にさらに有利に改悪されるかもしれません。

 つまり、「原発事故は電力会社では賄えないので、電力会社は有限責任として(今は無限責任)、それを越えるものはすべて税金で補償する」としてしまうかもしれないのです。

 本来は、電力会社、その株主、原発メーカーなど、このビジネスによって利益を得る側がまず十分な責任を負うようにしなければいけません。責任があいまいになれば、また同様の事故が起こります。

 原発事故の被害を受けられた方々の健康と人権を守っていくために、そして原発のない未来を実現するために、いまこそ、原発にもメーカー責任を問う必要があるのです。

 まだ「原発にもメーカー責任を」の署名に参加されていない方はぜひこちらからご参加ください。

グリーンピース「原発にもメーカー責任を」オンライン署名

 すでに署名に参加されたという方で、「もっと協力したい」という方は、グリーンピースのサイトからステッカーなどのアクションキットを注文することができます。

 詳しくはこちらから。

 

  

※コメントは承認制です。
第22回 原発メーカーから、グリーンピースへの手紙」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    佐藤さんも指摘しているとおり、
    各社の回答、全文を読んでみてもなんとも「他人事」…。
    もちろん、メーカーだけの責任ではないけれど、
    そこにまったく反省や後悔が見られないのは、
    やっぱりどう考えたって納得がいきません。

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佐藤潤一

佐藤潤一(さとうじゅんいち): グリーンピース・ジャパン事務局長。1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学在学中に、NGO「リザルツ」の活動に参加し、貧困問題に取り組む。また、メキシコ・チワワ州で1年間先住民族のタラウマラ人と生活をともにし、貧困問題と環境問題の関係を研究。帰国後の2001年、NGO「グリーンピース・ジャパン」のスタッフに。2010年より現職。twitter はこちら→@gpjSato

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