癒しの島・沖縄の深層

もはや政権崩壊寸前の野田民主党。消費税増税法を自民党、公明党との談合で成立させたものの、公約違反であり、まさに財務省にコントロールされた民・自・公の翼賛体制下での掟破りの決議だった。国民の6割以上が反対している消費税増税という愚策に対しては、みんなの党の江田憲司氏が『財務省のマインドコントロール』(幻冬舎)でインフレ下の増税の危険性を指摘し、増税の前にやることはたくさんある、財務省に騙されるな!との論陣をはっている。植草一秀氏も『消費税増税亡国論』(飛鳥新社)で、既得権益層が喜ぶだけの消費税増税に強く反対している。

しかし、こうしたきわめて真っ当な意見は、大手メディアも消費税増税に同調している状況では、多勢に無勢。まるで日本が太平洋戦争に突入した前夜のように、政治がコントロール能力を失い、軍部の独走が既成事実となっていく歴史を想起させる。

考えてみれば、この国は明治政府以来、天皇をまつりあげつつ、官僚が中央主権体制で国を統治するというシステムを続けている。敗戦記念日特集で8月15日に放送されたNHKスペシャルを見たが、タイトルは『終戦 なぜ早く決められなかったのか』だった。

長期にわたる第二次世界大戦でロシアの参戦を強くたきつけたのは米国であり、その際、国後、択捉の割譲も約束していたのだ。最終的に非人道的兵器である原子爆弾を広島、長崎に投下し、米軍にとっては最小限のリスクで日本の完全無条件降伏を勝ち取った。

敗戦までの半年の間に、沖縄、広島、長崎を中心に、全国の都市に対する空襲などで50万人以上が亡くなった。その間、繰り返された御前会議や最高戦争指導者会議でも、決められないトップたちがバラバラの意見や思惑を持っていたためだ。

天皇制国家における誰も責任を取らない無責任体制は、戦後67年経っても全く変わっていない。戦後は「天皇は象徴」という形になったものの、無責任国家体制をささえる特殊な地位にある事は間違いない。最近でいえば、霞が関、東電、永田町などの無責任体制の元凶なのだ。

こうした、戦後の無責任政治や外交の体たらくを解明した画期的な本が出た。孫崎享氏の『戦後史の正体』(創元社)である。孫崎氏は、外務省国際情報局長から防衛大学校教授をつとめた人物だ。

孫崎氏によると、日本が米国に従属する外交しかできなくなったのは、無条件降伏とGHQによる日本の支配体制の完全解体作業の結果だった。戦争中は勇ましく対米戦争継続を主張した政界人や軍部も掌を返したように、GHQにすり寄っていく。経済も崩壊させられ、国土も焦土と化した敗戦当時を思えば、やむを得ない面はあったのだろう。しかし、問題は、このGHQ統治時代からサンフランシスコ講和条約に至るプロセスで、日本の支配層に徹底した対米従属思想が植えつけられたことだ。

例えば、外務省において、米国の意に反する論議は一切タブーになったのもこの時代のトラウマなのである。その頭目が当時の吉田茂首相であり、対米自主外交を主張した気骨のある外務大臣・重光葵などは政界中枢から放逐されたのだ。いまだに続く、日米地位協定に代表される不平等な対米従属路線は基本的にこの時代に形成されたのだ。

野田民主党と自民党が野合した消費税増税、野田総理が決断した原発再稼働、参加交渉が進行中のTPP、沖縄の普天間基地に10月から強行配備されるMV22オスプレイ、すべてにおいて、日本は「NO!」といえない体制に置かれてしまったのだ。

孫崎氏はこうした日本の現状の原因を、戦後史の分析に求め、「日本の米国タブー」に切り込んだのである。筆者も、日本の霞が関、財界、大手メディア、米国政府という既得権益層が、対米自立を打ち出して政権交代を成し遂げた鳩山総理―小沢幹事長を総力をあげて潰しにかかったことを何回も書いてきたが、孫崎氏の本を読めばすべての謎が解ける。その結果、鳩山、小沢氏は追放され、親米・霞が関派の菅直人、さらに野田佳彦という政権が誕生したのだ。今や第二自民党といわれる野田民主党だが、谷垣自民党との野合は見事なまでに米国戦略の思い通りの政治なのだ。

むろん、この先、政局がどうなろうとも一人ホクソ笑んでいるのは衆議院・参議院で消費税増税の法案を通過させた財務省である。表向きは高齢化社会に対応するための社会保障費に回すという建前になっているが、おそらく、こうした増税増収分は米軍支援や整備新幹線、大震災復興に名を借りたゼネコン政治に使われていくはずだ。

米国型の貧富の差、階級社会づくりは日本でも着々と進んでいるのだ。TPPなどはジャパンマネーを米国に還流する仕組みづくりである。つい先日、香港人活動家が尖閣諸島に上陸したものの、早期の「強制送還」で一件落着。そうはさせまいと、日本の地方議員ら10人が強行上陸したが、こちらもお咎めなし。何よりも、沖縄に74%が集中している在日米軍基地は、「領土問題には関知せず」として何の行動もメッセージも出さなかった。日中の接近を快く思わない米国にとっては、日中間に紛争の火種が残ることは、政治的、軍事的戦略なのだ。何よりも米軍が抑止力を理由に沖縄に常駐する理由づけになるからだ。

この尖閣諸島をめぐる紛争で、米国は普天間基地へのオスプレイ10月強行配備に自信をつけたのではないか。日本の戦後は、米国戦略のもとで、いまだに続いているのだ。

 

  

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オカドメノートNo.121米国戦略のもとで、
いまだに続いている「日本の戦後」
」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    自国の国民の声よりも、米国の意向を優先させて動いているとしか思えない日本の政治。
    戦後67年を経てなお続く「従属」を、どうすれば断ち切ることができるのでしょうか?
    ご意見・ご感想をお寄せください。

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岡留安則

おかどめ やすのり:1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

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