今週の「マガジン9」

 消費税が8%に引き上げられて2週間以上が経ちました。これまで税込みだったスーパーの価格表示が税抜きになったので、レジで支払いする際に「あれっ、高いな」と感じ、レシートをみて「そうか」と納得することもしばしばです。
 そんなか、新宿御苑で開かれた「桜を見る会」主催者の安倍首相の一句「給料の 上がりし春は 八重桜」は多くの国民の耳にどう聞こえたのでしょうか。
 マスメディアでは、これまでアベノミクスによる景気の上向きが報じられてきました。なかにはバブルの再来みたいな物言いもありましたが、昨年の日経平均株価(1万3700円)を見れば、バブル崩壊後の1994年以降、いわゆる「失われた20年」のなかで11番目の水準にしかすぎません。「去年よりはまし」くらいのレベルで、国民の大多数が「生活がよくなった」と実感できないのは当然です。
 世間でまことしやかに言われていることのほとんどがウソ――『里山資本主義』の共著者である藻谷浩介さんが先日、講演会で語っていました。ある事象について自分で判断できなければ、まずは事実(=統計)に当たれ、と繰り返し強調する彼は、「ここ数年の貿易赤字は、原発が運転停止したことで火力発電用の化石燃料の輸入が増えたから」という言説も例に挙げました。
 財務省の貿易統計によれば、たしかに輸入額(2010年:17兆4000億円、2011年:21兆8000億円、2012年:24兆1000億円、2013年:27兆4000億円)は急増しています。しかし、輸入量(2010年:2億4800万㎥、2011年:2億4700万㎥、2012年:2億5400万㎥、2013年:2億5000万㎥)をみれば横ばい。化石燃料の単価が上がったに過ぎないのです。しかもこの間、原油価格が急騰しているわけでないので、貿易赤字の最大の原因は金融緩和による円安にあるといえる。
 輸入量が増えなかったのは、日本の企業や自治体、そして国民が省エネに努めたからです。私たちの社会は原発なしでも大丈夫であることを証明しました。にもかかわらず、政府の基本エネルギー計画案に従って、原発を再稼働させればどうなるか? 万が一の事故に備えた補償など様々なコストが嵩み、原料となるウランの国際市況にも依存することになる。後者を避けるために、政府は使用済み核燃料を再利用する高速増殖炉「もんじゅ」を動かそうとしていますが、今もトラブル続きで、維持費だけで年間200億円を費やしています。
 この延長線上に私たちの明るい未来はあるのでしょうか。
 これからの日本は、内に各地で自然環境や産業基盤に合ったエネルギーの自給をめざし、外に優れた省エネの技術とノウハウを売る。
 日本経済再生の道はこの方向にあるはずです。

(芳地隆之)

 

  

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vol.449
日本経済再生の道はどの方向にあるのか
」 に1件のコメント

  1. これ反証になってないよ〜!輸入量が変わらなくても円安になれば輸入額は高くなるわけで、「火力発電用の化石燃料の輸入が増えた」を「火力発電用の化石燃料の輸入“額”が増えた」にすればすんでしまう話。

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