カエルの公式

 みなさん、こんにちは。
 今回は、私がサバティカル中に訪れた北海道のダム建設現場についてご紹介します。

 日本には、現在約3000ヵ所のダムがあるといわれていますが、そのうち約200ヵ所が現在も建設中とされるダムです。そもそもこれからの日本に、そんなにダムが必要なのでしょうか?

百聞は一見にしかず

 「ダムって何が問題なの?」「ダムがあるから洪水にならなくて済むんでしょ?」というのが大半の方々の考えだと思います。だからこそ、まずはダム建設によって破壊される自然やその土地の文化の大きさを知ってもらうことが重要です。

 私も、実際に北海道のダム建設現場を見て「ひどい!」と怒りを感じ、このコラムを書いています。環境破壊の現場を実際に見て、そのひどさを経験・体験してもらうことは、その怒りを共有するためにも不可欠だと再確認しました。その観点からみても、環境問題や社会問題を訴える際には、できるだけ多くの方に現地視察会などに参加してもらい、その経験をブログ、フェイスブック、ツイッターなどで継続的に発信してもらうことが効果的だと思います。

貴重なサンル川が破壊されている

 さて、9月14日、北海道の北部にある下川町を訪れました。下川町を流れるサンル川が今回の訪問先です。この時期のサンル川では、海から天塩川、名寄川、サンル川と200キロ以上も川をのぼってくる「サクラマス」という魚に出会えるのです。

(出典:サンル川を守る会

 今回、この下川町で「サンル川自然観察委員会」が主催した自然観察会に参加させていただき、サンル川の自然と、そしてそこに建設が進むサンルダムの状況を視察させていただきました。観察会では、サンル川で生まれたサクラマスが川に戻って産卵するところや、川に生息する珍しいカワシンジュガイなどを観察することができました。体長30cm以上もあるサクラマスが、200km以上も川をのぼってきて産卵する様子が見られる河川は日本ではここサンル川だけともいわれています。

本格工事が始まったサンルダム

 サンル川のダム建設が昨年から本格的に着工してしまいました。ダム建設の工事現場にも連れていっていただきましたが、そこにはそれはそれは無惨な光景が広がっていました。山肌はえぐられ、木は切り取られ、川の水は無理やり流れを変えられ、川底にはゴミと泥が溜まっていました。

 そのダム建設も、河川環境への影響がないように配慮しているそうです。どうやって配慮しているのかというと、その一つが魚道。つまり、サクラマスが川をのぼるときにダムが邪魔になるから、別に魚の道を造ってそっちをのぼってもらおうというのです。
 下の魚道の建設現場をみて、驚愕。幅数メートルの溝がダム建設予定地の横を延々と続きます。その距離なんと9キロ(後に7キロに変更されたとのこと)。

 工事をする方々にとっては仕事ですから、魚道を造るのは嬉しいでしょうが、サクラマスにとっては全く嬉しくない代物。
 ダムの背景などの詳しい情報は、ぜひこちらの「サンル川を守る会」のページをご覧ください。

署名に参加を

 そもそもこのダムはお隣の名寄市を洪水から守るという目的。しかし、洪水対策は、護岸工事などで十分に行われ、整備されていないところを工事するだけで対策ができるのです。また、このダム建設には528億円もの税金が使われます。しかも、その半分がすでに道路工事などで使用されてしまいました。

(出典:サンル川を守る会

 ムダなものが、貴重な自然を壊すほど憤りを感じることはありません。

 今回の観察では数匹のサクラマスしか見ることができませんでした。このままダムが完成してしまったら、どうなるのでしょうか?このダムの工事中止を求めての活動が始まりました。
 Change.orgにてサンル川をまもるための署名活動もスタート。ぜひみなさんも、参加してください。

 

  

※コメントは承認制です。
第43回 北海道のダムで見た、驚愕の“魚道”?! 百聞は一見にしかず」 に2件のコメント

  1. magazine9 より:

    サンル川に生息する貴重なカワシンジュガイは、川底で静かに80~100歳になるまで生息しているそうです。長い時間をかけて育ったものを、失ってしまうのはあっという間。ダム建設にかかる費用、そして維持費などの負担は、結局は私たちに降りかかってきます。本当にダムが必要なのか? 守るべき地域の豊かさとは? 起きていることをきちんと知り、考えて、それぞれが行動につなげなければと思います。

  2. たかたつ より:

    この「有害ななダム」の記事を読んで、山形県でも「最上小国川ダム」という「有害なダム」を計画している事をお知らせします。
    目的に「洪水を防ぐため」とありますが、今までの最上川の洪水は、川の水が溢れての水害ではなく、川に流れ込むべき外の排水路の水が流れなくなったための「内水被害」というものだったからです、
    その原因は川に沿っている温泉街のために、川床をコンクリート堰で高くしたためです、そのため上流からの砂礫で河床が1~2m高くなったのです。
    さらにこのダムを「穴あきダム」にする予定です、「アユ」で有名な川ですので、アユの通る専用の道を作る、と言う訳です、悪質なジョークとしか思われません、砂礫や砂利、木材がたまると言う事は必須です。
    最上アユ漁協に保証金は出さない、と言いながらアユの量や「穴」に貯まった砂礫や砂利、木材を漁協が監視する手数料として金銭を支給するそうです、まるで「穴あきダム」が自然環境を破壊する事を予定しているかの如く、ですね。
    県はダム工事のための周辺準備を始めています、反対派はその中止を求めて山形地裁で裁判中です、その結論はまだ出ていません、それでも「県」はダム建設を決定しました、日本は「法治国家」ですか。

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佐藤潤一

佐藤潤一(さとうじゅんいち): グリーンピース・ジャパン事務局長。1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学在学中に、NGO「リザルツ」の活動に参加し、貧困問題に取り組む。また、メキシコ・チワワ州で1年間先住民族のタラウマラ人と生活をともにし、貧困問題と環境問題の関係を研究。帰国後の2001年、NGO「グリーンピース・ジャパン」のスタッフに。2010年より現職。twitter はこちら→@gpjSato

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