「希望のエリア」のあきらめない人々

2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所事故が発生。事故後、国会前や首相官邸前には、多くの人たちが集まり、抗議の声をあげました。一人ひとりが自分の意思で集まり、それぞれ独自のスタイルで行う抗議行動が生まれていったのです。事故から数年が経ったいまも、毎週金曜日には脱原発を求める人々が全国各地で集まっています。国会前「希望のエリア」も、そうした「金曜行動」のひとつ。「希望のエリア」のスタッフが、そこに集まる人々の思いを連載で伝えます。

第27回

希望のエリアで生まれた縁
希望のエリアで繋がる縁

 昨年9月に、希望のエリアから素敵なカップルが誕生した話は、第16回のコラムでも取り上げさせていただきました。今年も若いカップルが、希望のエリアから生まれた縁でスタートしたという話もチラホラ聞こえてきます。
 ここには、ご夫婦でご参加いただいている方々が何組もいらっしゃいます。そして希望のエリアで出会い、抗議行動を通じて友人となり、お休みともなれば皆で待ち合わせて抗議行動に参加し、その後交流会を通じて更に親交は深まり、また広がっているといった素敵な話も聞こえてきます。

 とても素敵な関係を持ちながら、それぞれの思いで希望のエリアに参加している友人同士のお話を、ご本人たちの了承を得てここに書かせて頂くことにしました。
 一人は、いつも希望のエリアの様子を動画に収め、ブログやSNSなどに配信、投稿しておられる「kenさん」。もう一人は、ギターやドラムを持ち、希望のエリアの音楽隊の一員として参加している「ミスター(MR.Mさん)」です。

 どんな関係か、ですって?
 実はお二人とも保育園からの同級生なのだそうです!

kenさんとミスター

 二人の出会いは保育園なんだとか。保育園と言えば0歳から入れますから、ひょっとして生まれてすぐに二人は出会ってたのかも。友達になったのは小学3年生だそうです。小学校、中学校とずっと友達で、高校では別々になって一時期離れていたそうです。大学に入ってから小中学校で同じサッカー部に所属していた共通の友人のお父様が亡くなり、葬儀の時に再会し、それから今までずっとお付き合いがあるんだとか。

 ご本人曰く「腐れ縁です」「一緒に旅行に行くと喧嘩して帰ってくるんです」とのことですが、帰ってきてまた飲みに行ったりするのですから、余人には分からない全てを理解した仲なのでしょうね。
 9・11アメリカ同時多発テロの時も「一緒に飲んでいた」そうで、テレビを見ながら二人で凍り付いていたんだそうです。

 そして3・11。
 お互いSNSで連絡をとり、半年くらい情報発信ばかりしてたら、ミスターから渋谷でデモやってると連絡が入り、調べて一緒に行くようになりました。それ以来、賛同出来るアクションが一緒で時間が合えば、二人で参加するようになりました。

 ミスターは元々ヘビーメタルのギタリストで「怒りのドラム隊」に憧れ、kenさんは何が出来るか試行錯誤してる内にタブレットでデモを撮影するようになったそうです。初めて国立でのデモをYouTubeに上げたら知り合いにお礼を言われ、徐々に活動仲間が増えていき、撮影機材もどんどん本格的になっていったとか。
 ミスターは初めスネアに凝って、デモに参加していたのを(私たちも何度も見た姿ですが)、kenさんは「お前はギターだけやってろ!」と何度も言って、やっと理解したらしく、ギターでデモに参加する様になったんだとか。


二人きりの抗議行動

 昨年、世の中はTPP参加の是非に揺れました。
 政界、財界、官僚は、TPPに参加しなければ世界から取り残されると考えていたようですが、市民のなかでは日本には不利な条項が含まれているとして反対している人がたくさんいました。

 国会周辺でも連日連夜、反対の抗議行動が行われていたのですが、ある夜、国会前北庭側にはkenさんとミスター、二人だけの姿がありました。その日に限って国会正面側は抗議が無かったのです。そこに現れたのは「腐れ縁」の友人同士。ギター片手にミスター、それを映像に収めているkenさん。幼馴染み二人だけによる抗議行動だったのです。

 今でもお二人は、希望のエリアに集まって、ミスターは希望のエリア音楽隊として、kenさんは動画の撮影、記録、配信をしてくださっています。

 なんとも頼もしい素敵な関係だと思いませんか? 魅力的なお二人だと、私たちはいつも思っています。

(国会前「希望のエリア」スタッフ/土肥 二朗)

 

 

  

※コメントは承認制です。
第27回 希望のエリアで生まれた縁 希望のエリアで繋がる縁」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    保育園の幼なじみ同士が、二人だけの抗議行動を実行するなんて、まるでドラマのようなエピソード! しかも、希望のエリアでそんなにカップルが誕生しているとは…。生きるうえで何を大事にしたいか、そうした価値観を共有できる人たちが集まっているからこそだと思いました。

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マガジン9

希望のエリア:原発に反対する官邸前抗議行動として、2012年3月から毎週金曜夜にスタート。当初は、子ども連れでも参加しやすいよう「ファミリーエリア」として国会前の歩道横に設けられたスペースだったが、その後「希望のエリア」と名称を変え、幅広い世代が参加する独自の抗議エリアとして、毎週金曜の夜に活動を続けている。

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