松本哉ののびのび大作戦

manga

 いやはや、マヌケなやつらほど強力なものはない。世界各地のくだらない権力者たちがしょうもない政治を行ってるのに対抗して、世界各地の大バカな仲間たちが一斉にマヌケな蜂起をするという大作戦がまんまと決行されてしまった(趣旨の詳細は前回を参照)。

 さて、当然東京でも作戦決行したわけだが、これがなんと、映画作戦! 街頭で映画の撮影をすれば普段できないことができるんじゃないか? ってことで、映画の撮影許可を取り、悪の象徴のような車を破壊したりひっくり返したりして、大混乱の反戦イベントを決行するという計画が急浮上し、実行してしまったのだ!
 実は数年前、デモの申請をしようと場所の使用許可を取ろうとしていた時、とりあえず警察が難癖を付けて中止させようとしてきたことがある(ま、毎度のことだけど)。で、「まあまあ、いいじゃないですかデモぐらい」「いや、ダメだ」「そりゃ、おかしいでしょ。お願いしますよ〜」「そう言われてもな〜」などと毎度おきまりの攻防戦を窓口でやっていると、そこへ一人の若い女の子がフラっとやってきて、「映画の撮影なんですけど、使用許可お願いします!」と申請を開始、すると「あ、わかりました〜」と約3分で申請終了。なに! 人数や規模も同じで、同じ用紙の申請なのにデモと映画でこんなに差があるのか〜、こっちは30分も粘ってるのに、こんちくしょ〜。と、思ったがそこはあえて突っ込まず、新作戦候補として温存。で、いざ今回みんなで「なにかやろうか」と相談した時に、この作戦のことを話すと、偶然にも本当に映画を撮ってる人も、同じように作戦を温存してたりして、「そうだそれだ! 今回はそれで行こう!」と、計画が決定! 

完全に本気の撮影機材

 さらに、この作戦決行予定の8月29日はなんと100万人近くが集まるという高円寺阿波踊りの日。ということで、隣の阿佐ヶ谷駅前で撮影をすることになった。なぜかというと、毎度お馴染みの杉並警察署はこの日は高円寺に総結集。とくに、最も重大な役目の道路整理を担当するのは交通課長。まさに一世一代の晴れ舞台だ。しかも高円寺一帯のマヌケゾーンの管轄ということもあり、普段は新宿署や中野署からは完全に格下だと思われ、鼻で笑われているような警察署(たぶんそう。違ったらごめん、杉並署長)。だが、この日ばかりは道路と人の流れをビシッと仕切り、安全な祭りを維持して、やる時はやるところを見せつけようと、テンションは上がりまくり。前日なんかは修学旅行前の中学生のような感じで夜も眠れないほどに違いない。しかも、こっちの映画作戦決行時間は阿波踊り開始と同時刻の午後5時! 阿波踊りの踊り子が一斉に踊り始め、沿道からの大歓声があがり、祭りの盛り上がりもピークに達したその瞬間! 隣の阿佐ヶ谷では、こん棒やフライパンや下駄などを持ったやつらが、悪の象徴のようなミサイルを積んだ車両を破壊してひっくり返し、車道を占拠して反戦集会をはじめるという、見たこともない光景が!!!!! さあ、そんな瞬間に阿佐ヶ谷駅のおまわりさんが杉並署の交通課に連絡できるわけがない。「いや〜、いま映画の撮影がちょっとやりすぎてる感じなんですけど…」と連絡しても怒りを誘うだけ! 娘の結婚式に出席していて非常に重要な役目の時に、会社の部下からホッチキスの針が足りないと電話がかかってくるようなもんで、そんな電話なんか入れようもんなら大目玉は必至だ。「バカヤロー!!!! こっちは一世一代の大仕事中なんだぞ! 映画ぐらいおまえらでなんとかしとけ!!!!」と、怒鳴られ、最後には「まったく、今日はただでさえ阿佐ヶ谷勤務でありがたいと思えってんだよ。ホントに最近の若いやつらは! もう電話してくんなよ!」と、捨て台詞をはかれて電話を切られるはずだ。と、なってくると、交番のおまわりさん達も、ここはなんとしても自分達だけで丸く収めなきゃマズイということになってくる。謎の暴徒がバールで車のフロントガラスをたたき割ろうと、群衆が車を横転させようと、とんでもないアジテーションが駅前に鳴り響こうと、「大丈夫、大丈夫。これは映画の撮影だ。別に不測の事態が起こっているわけではない」と、自分に言い聞かせながら、車が逆さまになる様子を微笑ましい笑顔で眺め続けるに違いない。多少のことが起こっても、なんとか現場で収めようと飛んできて、「ちゃんと、こっちも片付けて帰ってよ」「そっちの通路、人通れるように確保して!」とやたら協力してくれるはずだ。そして、杉並署への事後報告では「何事も起こりませんでした! 多少の行き過ぎはありましたが、随時的確な指導をして、円滑に撮影は終了しました!」と報告するに違いない。

 あ、これ実際の話じゃなくて、計画段階の予想ね。作戦会議で、こんな感じになるに違いないと予想し、これは行けると判断。そうして、今回の車をひっくり返したりする豪快な作戦が立案された! しかも、今の日本社会、予定調和が度を過ぎていて、些細なニュースを見ていても、ちょっと予想外のことが起こるだけで過敏に拒否反応を示したりする一億総潔癖っぷりが蔓延している。ようするに「どっちでもいいよ、そんなもん」ってレベルのことでいちいち怒ってるひとが多すぎる。う〜ん、こうなったら、せっかくなので普段見たことのない光景を作って訴えたいね〜、というのも今回のテーマ。
 で、実際に当日は、ほぼこの予想通りに進み、何の問題もなく大成功! 当日の様子は、先週の雨宮さんの記事にあるので、見てもらったらいい。
 ちなみに、撮影の準備中もいろんな人から話しかけられるんだけど、これがまた映画は本当にいい。足りない材料を近所の雑貨屋さんに買いに行った時も、店員さんが「何に使うんですか?」というので、「いやー、これから映画の撮影で車をひっくり返したりするんですよ〜」というと、「えっ、すごい! いいですねー、じゃ、駅前の車道全部止めちゃうんですか?」などと興味津々。店のおばちゃんも「気をつけて! ケガしないようにね!」などと激励。沿道の人も映画の撮影と知るとみんな勘違いし始め、「あっ、あの人テレビで見たことある!」とか「そうそう、オレ知ってた。今日映画の撮影が阿佐ヶ谷であるって聞いたことがあるよ。俳優◯◯が出るんだって」などと言いながら通り過ぎて行ったり。これがもし、「デモで車をひっくり返すんですよ」といったら「主張はわかるけど、それは迷惑になるんじゃ…」とか、そういうことになりがちだ。うーん、いいね〜、世の中のほとんどはイカサマでできてるね〜。よし、こっちもイカサマなことどんどんやっていこう!

 そう、で、今回注意しなきゃいけないことは事前にばれないこと。事前に作戦がバレたら台無しなので、ここは隠密に宣伝することにした。特に最近は、すべてネットで動いてると思いがちな節がある。マスコミもバカな記者はネットだけ見て記事書いてるし、社会運動家なども最近はネット上の宣伝や言論活動を重視しがちだ。しかも、それを取り締まる側も最近はネットばかり見て調べてて、古参の取締官たちは「俺たちの時代は徹夜で張り込みをしたり、活動家が行く飲み屋に紛れ込んだりして盗み聞きしたりしたのに、いまの奴らはそういう努力を嫌がる!」などと嘆いているとのこと。いま巨大な隙が口コミなどのアナログ世界にできているので、その盲点を突いて宣伝を開始。じつは、これ、とある国の民主化運動家から聞いたんだけど、言論統制が厳しい国では何もできないので、イベントの直前に一気に詳細を語らずに電話を回して人を集めたりしているという。よし、やってみよう。日本も将来どんな恐ろしい国になるかしれないし、備えあれば憂いなし。やってみようやってみよう。ってことで、街であったり、その他アナログな手段を使って「絶対来たほうがいい」と、みんなで宣伝!!! ということで、事前には情報が漏れることなく、突如謎の群衆が阿佐ヶ谷に出現することに成功!!! 

日本で見ることは珍しいひっくり返った車

 ちなみに、権力者は1回目の作戦に弱い。2度3度と同じことをやると徐々に対策を講じてきて、反乱は封じられてしまう。あるいは完全に骨抜きにされてしまう。と、いうことで、この映画作戦を次回やるのは全員が死に絶えた100年後で十分だ。そう、新作戦をやり続ければ永久に成功し続けるという必勝パターンを、我々民衆は持っている。権力者は少数で、おまけに金と権力のことばかり考えてるから頭が腐りきっている。それに対して、こっちは無限の人がいるうえに、やたらヒマを持て余してるひとが無数にいる。みんなで頭を捻れば無限に新作戦が生まれてくる。世の中に対して「コンチキショー」と思ったやつら全員が、自分のセンスでとんでもないことをやり始めたら、間違いなく世の中は一瞬で変わっていく。う〜ん、これはいよいよ楽しくなってきた。

阿佐ヶ谷の東京作戦の様子!!!!!!

 さてさて、終了後は高円寺のpunditというスペースで全世界の同時マヌケ反乱のやつらとネットで繋ぎ、お互いの報告会!!! これがまた、全箇所の強力なマヌケな仲間たちとつなぐので、盛り上がらないわけはない。しかも、ネットを通してとはいえ、みんな打ち上げのような飲み会になってて同時に乾杯したりするので、ここでやたらと連帯意識が生まれてしまう。しかも、どいつもこいつもマヌケばっかりだから、画面の向こうでバカなことやったり、変な顔してたり、酔っ払ってくだらないことばかりやってる。海外の仲間のスペースに遊びに行くひとはすでに仲間意識を持っているけど、あまり海外に出ないひとも、この日は「おお、こいつら会ったこともないし言葉も通じないけど、ほとんど同じような奴らじゃねえか!」と、異常に親近感が湧いてしまう!! うーん、この国家間の関係とは一切関係ないところで、異国の民衆同士の仲間意識を持つことが、今回の大作戦の一番大事な点だったので、本当に今回は大成功としか言いようがない。

發自我的小米手機

実は9月3日に行われた香港作戦。香港らしいマヌケ感全開のイベント!

 さて、ちなみに、今この文章を書いているのは台湾の台北市内にある「半路珈琲」という、これまた仲間の店。昨日は遅くまで、久々に会う台湾のとんでもないやつらとバカ騒ぎして飲み過ぎて、二日酔い気味でぐったりしながら、月曜日の午後にこれを書いている。そう、何を隠そう、「アジア反戦大作戦」はまだ29日では終わってなかった! 日程の都合で少し遅れていろんな作戦が続々を行われている! そう、9月5日(土)には台湾作戦が行われ、参加してきたのだ! いや〜、恐るべし台湾バカ勢力。阿佐ヶ谷の東京作戦を軽く上回るぐらいのバカ作戦が決行されてしまった! いやー、今回は東京の負けか!?!?!?!?!
 ということで、次回は台湾作戦の報告!!! 乞うご期待!!!!!!

 

  

※コメントは承認制です。
第88回 続報! アジア反戦大作戦!!!」 に2件のコメント

  1. magazine9 より:

    先週、雨宮さんがレポートしてくれていた阿佐ヶ谷駅前の「映画大作戦」、実はこんな考え抜かれた計画だったとは(?)。かつて軍政下にあった南米の国・チリでは、反政府集会を開くとき、事前に人が集まると逮捕されるため、人々は(口コミで広がった)集会の開始時間まで「単なる通行人」を装い、その時間が来ると突然各々が「民主主義万歳!」と叫んだりビラを撒いたりした、のだそう。松本さんが言うように、日本でも「今後」に備えてそんなあの手やこの手、用意しておいて損はないかも。「コンチキショー」なことの多い昨今、あなたも「新作戦」、考えませんか?

  2. Shunichi Ueno より:

    したたかなマヌケは無敵ですね。楽しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

←「マガジン9」トップページへ   このページのアタマへ↑

マガジン9

まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

最新10title : 松本哉ののびのび大作戦

Featuring Top 10/45 of 松本哉ののびのび大作戦

マガ9のコンテンツ

カテゴリー