松本哉ののびのび大作戦

manga

 今年は、1月から景気のいいバカなイベントが開催されてしまった! そう、何を隠そう台湾の台北で2日間開催された「東亞大笨蛋串聯PARTY(東アジア大バカ結託パーティ)」だ。これはやばい! その名の通り、アジアのマヌケたちが手を組んで開催するイベントで、近年いよいよ盛り上がり始めた、東アジアのオルタナティブ文化圏の交流企画だ。国の支配者の人たちはG8やらG20、国連、TPP、集団的自衛権…、挙げたらきりがないぐらい結託してなんかやってる。ちきしょ〜、羨ましいじゃねえか! それだけみんな仲よく手を組んでたら、そのどこかの国で悪い政治をしても、一国内の民衆の抗議ぐらいじゃ覆らないわけだ。ずるい! やりたい放題だ! 目には目を、歯には歯を、やりたい放題にはやりたい放題を! よーし、こっちもみんなで勝手に好き放題遊んで対抗するしかない! と、いうわけで、マヌケな奴らの集団的自衛権=東アジア大バカ結託パーティが開催された!!!!

これはマヌケそうなイベント題字

 さて、そもそも今回なんで急にやることになったかというと、実はとても小さいことから。去年の夏が終わる頃、「また冬が来るね〜、日本の冬はやたら寒いから南国でも行きたいねー」と、みんなで遊びに行こうかってことになった。一番あったかい台湾南部へ行くことに。そして11月ごろ、台湾の友達に「今度みんなで台湾遊びに行くよ〜」とは言っておいた。すると!!!! 気づいたら台北のやつら急になんだかやる気になって「よし、高円寺のやつらがたくさん来るんだったらイベントでもやろう!」ということになっていた! なんだなんだ!? どうやら台湾ではそのタイミングが絶妙だったみたい。

朝からカラオケで盛り上がるマヌケたち

 台湾では2014年に中国との自由貿易に反対して立法院(台湾国会)を占拠するなど大きい運動が起こったが、その後はだいたいお決まりのパターンで、運動は「選挙に行こう!」という流れへ。ところが、その流れに対して「ええ〜、政治家が世の中変えるだけじゃ、自分たちやることなくなるじゃん。それに政権代えて悪くなって、また代えてっていう繰り返しでしょ?」っていうやつらが台湾には大量にいた。まず、カフェや書店、BARなど自分たちの場所を作ってるような人たち。この界隈の人たちはその立法院占拠の時も立法院外に「賤民解放区」というエリアを作り、あくまでも場所作りにこだわった。そしてもう一つはバンドマンたち。ミュージシャンたちはやはり自分の活動や表現にすごい自負があるので、人任せで自分は何もしないというのは完全にロック魂に反するので「自分でもなんかやんねえと!」と言いだした。さらにもうひと勢力は社会運動の若手の人たち。これはちょっと日本とイメージが違うかもしれないけど、すごい大バカ! そして、めちゃくちゃノリがいいやつらばかり。重鎮のおじさんおばさんたちの真面目な社会運動に退屈してるようなやつらで、労働運動の人から環境問題の人などいろいろ。もちろんこの3グループ、きっちり分かれてるわけじゃなくて、社会運動のひとで音楽やってるひともいるし、バンドマン達が入り浸ってる店もあるし、全部繋がっている。ちなみに年齢層はほぼ20代だから、やたらとテンションが高い。

香港のアートスペースをやっている李俊峰氏(右から2人目)

 で、そんな人たちが「よし、こうなったら街をつくろう。一つのエリアにたくさん店を出し、どんな社会になろうと生きていける空間を作って自分たちの生活を守ろう」と、言い出した。聞けば、飲み屋やカフェからリサイクルショップ、ゲストハウス、雑貨屋などをオープンさせるべく準備を開始しているという。あれ、これ高円寺の素人の乱にも似た感じ! やっぱり行きつく先に思いつくことは似るんだなー、と、思ってたが、台湾の方が発想力は何枚も上手。それどころか、賭博場、工務店、エロマッサージ屋、雀荘、などなど、いろいろ目論んでいるという。ひゃー、いったいどんな街になるんだ!!! で、大まかにその3グループでプロジェクトが準備され始めたわけだが、その始まった矢先に日本から仲間がたくさん遊びに来るという。「なんだ、タイミングがよすぎる! じゃあ、ここは景気付けにこの街づくりチームで初の共同イベントをやろう!」ってことになったとのこと。う〜ん、「南国に行って砂浜でビールでも飲みたい」などと呑気なやつらが、ノコノコ現れたってことか〜。

 しかも今回のイベントのテーマも、去年の夏に決行した同時反戦アクションの「アジア反戦大作戦」の時と同じ「東亞大笨蛋(ドンヤーダーベンダン/東アジアの大バカ)」。おまけにイベントの詳細を見たら、主催がその3グループ+素人の乱になってる! うわ、知らない間に主催者の一員に! これはもう南国ビール作戦どころじゃないね。よーし、こうなったらもう手伝うしかない!! 一ヶ月ほど前から台湾側と連絡を密に取り、いろいろとイベントの準備に取り掛かる!
 余談だけど、実は昨年12月に台湾の人たちが沖縄に遊びに行き、その時辺野古の抗議に参加したいというので、自分も沖縄へ行き、一緒に辺野古基地前に参加したことがあった。ちょうど沖縄では、パンクバンドをやってる友達がコザで店をやったりしているので、せっかくなのでそっちも紹介しようと、台湾の人たちを連れてコザに遊びに行ったりもした。そうしたら案の定仲良くなり、その流れで沖縄からもこの台湾イベントに出演することに。しかもなんと勢いで決めた割には沖縄から3バンドが台湾へ! いや〜、沖縄の人たちもフットワークが軽いねー。

ステージに駆け上がり、盛り上がりすぎる東アジアのバカ!

 台湾の人たちの今のテンションは本当にやばい。新しいことをやり始めようというタイミングだから、もう乗りに乗ってる。台湾には少し早めに行ったので、最後の会議には参加できたんだけど、会議なのに40人ぐらい集まってるし、みんなああだこうだと、妙に楽しそうに大笑いしながら会議をやってる。いや〜、いい雰囲気。こういう空気感の時は何やっても成功するんだよね、これがまた。まあ、てんやわんやになりながらもイベント準備を完了させた!
 で、イベント開催初日の1月23日は「くいだおれカラオケサミット」! いいね〜、壮大な趣旨と人脈をすべて集めたのが朝からカラオケ大会。公園のおじいさんと同じじゃねえか! ま、ともかく半路珈琲という仲間の店を使い午前11時からイベントはスタート。ごはんも食べ放題なので、みんな食べまくり、カラオケで盛り上がり始める。外ではフリーマーケット。仲間の実家が廃品回収の仕事をしていて、たまにみんなで手伝いに行って要らないものをもらってきたりもするらしい。それと、みんなの要らないものを持ち寄る感じ。カラオケで場が温まってくると、ステージでオークションが始まる。これは日本の競りと同じで、まずは商品の詳細をあれこれと解説し(と、いっても扇風機とかカバンとかだけど)、「さあ、300円スタート!!!!!」みたいな感じ。みんなごはんとカラオケで盛り上がっちゃってるから、買うの買わないのって、大変な大騒ぎ。みんな必要以上に金出したり、要らないもの買っちゃったりして、大混乱。で、ひと段落したらまたカラオケ、みたいなのを延々と繰り返す。かなり広い店なんだけど、外にまで人があふれるぐらい。やばいやばい! なんでこんなに人が集まるんだ!?
 
 さて、第2日目は野外ライブイベント。この日は50年ぶりの大寒波がやってきて、南国の台北なのに気温4度。なんと朝方に一瞬雪まで降った! 寒さに弱い台湾人は完全に震え上がり、ニュースによるとこの寒さで100人近く死者が出たほど。こんなのでイベントができるのかと一瞬開催も危ぶまれたが、ノリノリの台湾街づくりのやつらが止めるわけがない。当然イベント決行!
 会場は川沿いの大きい公園。ステージには機材がセッティングされ、食べ物やお酒、雑貨などの出店ブースもたくさんある。あと、面白かったのは台湾のカリスマ美容師seven氏が開いた美容室「行者」のブース。この人、例の立法院の運動あたりから社会運動を応援するようになり、こういう場にも出店するようになったという。この日は「笨蛋剪(バカ刈り)」という世にも恐ろしい企画を開催。2個のサイコロを振り、出た目によってそれに割り振られた髪型で左右別々に刈られる。たまたま通りがかった時は、とある犠牲者が、右が金正恩、左が洪秀柱(国民党の政治家で、前回の総統選の候補者になったけど、勝ち目がなさそうなので途中で降ろされた人)のヘアスタイルに刈られている途中だった。

金正恩&洪秀柱カット

 だいぶ派手にやってるけど、聞けば当然のように無届けでイベントを開催するという。ええっ、なにそれ!? いいの、そんなことして? …と、思うのは日本人だけ。公園は公共の場所なんだからなにに使っても大丈夫だとのこと。むしろ変に許可とったりした方が、あれやったらダメ、これは大丈夫、ここからは入っちゃダメとか、余計窮屈になるから無許可が一番いいって。その代わり、事前準備の段階では一ヶ月ぐらい前から他人のふりをして「今度、うちや近所の子供達をあそこで遊ばせたいんだけど、大人数でも大丈夫?」とか「うちのおじいちゃんが仲間同士で将棋大会やりたいって言ってるんだけどいいですかね」とか、毎日のように公園の担当局に電話して、何がOKかを探りまくって、それを100倍ぐらいに拡大解釈してイベントにこぎつけたという。いやー、みんな頭いいな〜

沖縄からも登場!! 実は台湾近い!

 さて、ライブ自体はもうすごいバンド目白押し。午後2時から夜11時までの9時間、次々と面白いバンドが出演。沖縄のバンドも出演したが、事前の宣伝もあってか、沖縄の人たちのライブの時はもうもみくちゃで、大混乱になっていた! みんな騒ぎすぎるから、いろんな人のポケットから落下したお金が地面に散乱! 時折、誰かがそれをかき集め、それでビールを大量に買いに走り、盛り上がってるやつらに渡しまくる。みんな「お、いいの? 悪いね。サンキュー!」と、乾杯しまくるが、よくよく考えると全部自分たちのお金なのだ。うーん、これは素晴らしいシステム!
 結局、この音楽イベントも極寒にもかかわらず、300人ほど人が集まり、大盛況で幕を閉じた。この2日間を通して、香港のマヌケなやつがやって来たり、北京のミュージシャンもいたりしたが、今回はちょっと台湾+沖縄+日本本土がメインの「東亞大笨蛋」だった。次回は韓国や中国本土なんかも呼んだら面白そう! これでみんな本当に喜び、4月には沖縄の人たちが開催する音楽イベントに大量の台湾人たちが遊びに行くとのこと。いやいや〜、なんだか面白いことになってきた!!

 ともかく、いまアジア圏のオルタナティブシーンで最もノリノリの台湾のやつら。この、みんなで協力して力を合わせる感じが本当にすごい。やろうと言い出したことを全部やっちゃう勢い。こんなやつらが街を作り出したら、いったいどんな面白い場所が出来るんだろう! うーん、こっちから見てても楽しみすぎる! 台湾がんばれ〜。

スタッフの人たちと打ち上げの後。会計報告では大赤字!!

 

  

※コメントは承認制です。
第90回 台湾で「東アジア大バカ結託パーティ」開催!」 に2件のコメント

  1. magazine9 より:

    あの大寒波襲来の日、台湾ではこんな熱いイベントが開催されていた! まさに「やりたい放題にはやりたい放題を」です。もちろん選挙も重要だし、政府や政治家への働きかけもデモも必要。同時に、こうして自分たち自身で「場」をつくり、国境を越えてつながっていくことも、これ以上息苦しい(そして生き苦しい)社会にしないためにはものすごーく大事なのかもしれません。激しく盛り上がる台湾、私たちも負けてられない!?

  2. 宮坂亨 より:

    マリオから聞いた話かな。やっぱ谷保のかけこみ亭とはスケールが違うな。
    俺の頭の中には「9条世界会議東京ードーム大会」とか「富士の裾野50万人ライブ」とか猪木と組んで「平壌メーデースタジアム20万人コンサート」とかミドルズの「ラブ&ピースカラオケフェスタ@国会前」とか野望がいっぱい入っているけどね。
    4月には沖縄の人たちが開催する音楽イベントって知念良吉さんと話してた話かな?
    マヌケなビンボー人で世界を回して行こうや。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

←「マガジン9」トップページへ   このページのアタマへ↑

マガジン9

まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

最新10title : 松本哉ののびのび大作戦

Featuring Top 10/44 of 松本哉ののびのび大作戦

マガ9のコンテンツ

カテゴリー