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「マガ9」から生まれた本。

-書評・感想-

「マガ9」から生まれた本>>書評・感想

『目覚めたら、戦争。 過去(いま)を忘れないための現在(かこ)(鈴木耕 著)

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目覚めたら、戦争。

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発行年月 2007年09月
価格 1,680円(税込)
出版社 コモンズ

「やまねこムラだより」のコラムでお馴染みの、つじむらひろおさんが、感想を寄せてくださいました。岩手で読んだ『目覚めたら、戦争。』についてです。

「気分は、浦島太郎」つじむら・ひろお

 縁あって、以前この「マガジン9条」に連載されていたコラム「今週のキイ」をまとめた本『目覚めたら、戦争。-過去(いま)を忘れないための現在(かこ)-』コモンズ刊)を読ませてもらいました。
 著者は、鈴木耕(すずき・こう)さんです。名前がいいですね。田畑をたがやすの「耕」です。百姓としては、この名前だけで好意をもってしまう。おとなりの秋田県出身とか。東北人としては、ますます近親感をもってしまいます。

 この本は、昨年2006年5月から、今年2007年3月までの10カ月間に、「マガジン9条」に発表された文章をまとめたもの、ということです。「マガジン9条」の最初からの読者(というのですか?)なら、すでに読まれているのでしょうが、わたしはすべて、初めて読ませてもらいました。

 わたしとしては、ここ1年数ヶ月の政治情勢の、おさらいをさせてもらった気分で、読み終わりました。
 小泉内閣から安倍内閣へ。この短い時間に、いかに日本が危うい状況にゆれていたのか、いまさらながら、よくわかります。この、鈴木耕さんの訴える危機感を、多くの方と共有したいと思います。
 と、同時に、なんと自分が世間の情勢から遠いところにいたのか、ということも、思い知らされました。

 といいますのも、わたしの読む新聞は、地元の「岩手日報」1紙だけです。雑誌は「現代農業」しか読みません。テレビは、NHKのニュースと、天気予報と、相撲と、「おばんです 岩手」ぐらいしか見ない。(野良仕事をしながら、テレビを見られませんし・・)
 ですから、この本に出てくる多くのエピソードや出来事を知らないままにいた、ということに、なにやら浦島太郎のような気分にさせられたのです。

 たとえばこの本の冒頭にでてくる「共謀罪」については、これまで見たことも聞いたこともありませんでした。わたしが新聞記事を見落としたのかもしれませんが、こんな醜悪な法案がウロウロしていたとは、知らぬがホトケでした。
 あるいは、御手洗経団連会長(canonの会長でもある)が今年のお正月元旦に発表したという「希望の国、日本」なる奇怪なビジョンも、この本で初めて知りました。もしこれを読んでいたら「こいつぁ、春から気分がわるいや〜」ということで、新年の祝い酒がまずくなったでしょうね。

 週刊誌の新聞広告で世相を読む、という記事もありましたが、岩手日報には「週刊プレイボーイ」の広告はもちろんですが、「週刊現代」「週刊新潮」「週刊朝日」「サンデー毎日」「週刊ポスト」などの広告が、まず載りません。なぜか「週刊現代」の広告はたまに見ますが・・。
 たまには、「女性自身」「女性セブン」「微笑」などの広告も見たいものです。(だいいち、「微笑」って、まだあるのでしょうか?)

 つまり、かように、地方に住む人間は情報から隔離されている、ということでもあります。情報格差、とでもいうのでしょうか。
 それでも、わたしはパソコンを操作できますから、インターネットで世界とつながっている、という風にはいえるとおもいます。でも、実際は、都会の人に比べて、入ってくる情報がグンと少ないのも事実ですね。
 これも、都会と地方の格差ということになるのでしょうか。

 だが、とここでやせ我慢をします。あるいは、百姓の屁理屈をいいます。
 情報というのは、多ければいいのでしょうか。
 情報のインプットが多ければ多いほど、幸せになれるのでしょうか。

 たとえば、御手洗さんの「希望の国、日本」なるビジョン。知らない方が、気分よく暮らせていたのです。なまじ、知ってしまうことで、希望どころか、失望してしまう。酒がまずくなってしまう。やまねこムラでは、御手洗某などに関係なく(トイレは必要ですが)、暮らせていけるのです。
 「あんたに希望を示してもらう必要はないね。希望なら、自給自足で間に合っているよ」といいたい。

 と、開き直って、ひょいとわたしのパソコンのプリンターをみたら、canonでした。
 う〜ん、やっぱり、やまねこムラでも、政治や経済とは無関係で生きてはいけないようですね。

 百姓でも、政治情勢からまったくフリーではない。知らなければならないことは、酒がまずくなっても、知る必要がある。そして、自分の頭で考え、場合によっては、発言し、行動を起こす。
 そうしないと、知らない間に、おそろしい世の中になってしまう可能性がある・・。ということでしょうね、鈴木耕さん。

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