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2012-11-21up

松本哉ののびのび大作戦

第68回:NO NUKES NO BORDER RIOT 東アジア、マヌケゲリラ大成功!!!!!

 どうやら、解散・総選挙という、国を挙げた茶番劇がまた始まろうとしている。全く興味がない。

 「最近、パッとしないですね〜。そろそろムチャクチャやった方がいいですよねー」
 「そうだね〜」
 高円寺を中心に活躍するとんでもないバンド=パンクロッカー労働組合の連中と話してる時、この新たな作戦は誕生してしまった! 会議は二言で終わり。後は作戦を実行するのみとなった!!!! そう、前回もお知らせした「NO NUKES NO BORDER RIOT」が、決行されてしまったのだ!! 言うまでもないが、しぶとく残そうとしている原発と、くだらない揉め事の種の国境に反対するイベント! いやー、しかし、今回はすごかった! まさに久々に「素人の乱が帰って来た!!!!」って感じで景気がよすぎたので、ちょっと報告してみよう!

伝家の宝刀「街頭宣伝許可証」大作戦!

 さて、前回は路上公開ラジオ放送をやるとお知らせした。勘のいい人は気付いていたと思うけど、これ、もちろんただのラジオじゃなく、実態は路上ゲリラライブイベントみたいなもの。 
 日本のデモはやたらとまどろっこしい。手続きは面倒くさいし、現場でも警察に完全に管理された状態のみで許されるという、「先進国」とは思えない不自由っぷり。まったく、バカバカしい…。
 最近やたらと近所の国の大バカな友達と仲良くなって来ていて、マヌケな連中同士の行き来はかなり活発になっている。そんな時、奴らに原発のことを聞いてみても「いや、あんなもの要らないっしょ! あぶねえし」と、ハッキリしてるし、領土問題のことも「バカバカしい。あんなのどうでもいいよ」と、これまたハッキリしてる。しかし、日本も中国も台湾も韓国も北朝鮮も、政府はやたらと核(原発)を持ちたがってるし、国境問題でも政府はみんな意味不明に怒っている。おい、全然違うじゃねえか! どうなってんの、これ。
 よし、こうなったら、むやみに集まってバカ騒ぎするしかない。こういうときは主張するだけヤボってもんで、まさに「見りゃわかるでしょ作戦」しかない! と、そんなバカ騒ぎのテンションを下げてくれるのが、景気の悪い日本のデモシステム。デモを自由にやっちゃいけないという未開国っぷりを海外の連中に見せたら、それこそバカにされるよ。
 ってことで、急浮上した作戦が、路上ゲリライベント! よし、勝手にやろ。さあ、世にも恐ろしい、大作戦の始まり始まり〜!!!!!!!!
 で、ここで思ったのが「捕まりまくるでしょ」ってこと。無届けでいきなり街頭で大騒動を起こし、大パニックになったら、全員御用で企画自体が10分で終わりだ。う〜ん、面白いけど、それじゃもったいない。ってことで、車に「街頭宣伝許可証」を取って、作戦を決行することになった。
 早速、杉並警察署に申請に行くと、デモの申請とは全然違って書類も簡単だし、「宣伝許可? ああ、いいよ。これ書いて出しといてね〜」と、超お気軽。どんな感じでやるのか聞くので、トラックの上でラジオ番組をやると説明すると、「ラジオ? いいね〜。どこでやるの? 浅草?」などと、なんだかゴキゲンでいい感じ。「ちゃんと許可通りますか?」と聞くと「大丈夫でしょ♪」と、善人っぽい返事。う〜ん、しかし杉並警察署ってのは本当に他署とは違っていい感じだね。しかし! しばらく待ってると、そのゴキゲン課長が暗い顔で戻って来て「いやね、警視庁の本部に聞いたら、ラジオはダメだって言うんだよ」という。なぜかというと、それは「街頭宣伝」じゃなくて「イベント」だと言われたとのこと。何のことかよくわからないので「そうじゃなくて、ラジオの形式をとった宣伝ですよ。頼みますよ〜」と頼むと、ゴキゲン課長は頼りない様子で「いやー、大丈夫だと思ったんだけどな〜。一応言ってみるけど、本部わかってくれるかな〜」と、やはりどうも本部には頭が上がらないらしい。30分ほどして、頭を抱えて帰って来て「松本さん、大変だ。新しい見解が出た!」という。「車の上に人が乗って演説したらダメ」だって。おいおい、そんなの聞いたことないよ! 駅前で政治家とかよくしゃべってるじゃん! で、それを聞いたら、「いや、民主党でも自民党でも、政党の街頭演説会は基本的には全部違法って、本部は言いだしたんだよ〜」という。こら、ウソつけ! そんなわけないだろ。…う〜ん、この時点で間違いなく警察の本部には、この「マガジン9」の前号あたりの情報から、今回の作戦が察知されているんだろう。なるほど、上からは「ダメなものはダメだ。ねじ伏せろ」と言われ、下からは「そりゃないでしょ」と言われる。上司命令をとるか、法律上の権利を守るかで、完全に頭を抱える杉並署のゴキゲン課長。まさに中間管理職のポジションで非常にかわいそうになって来た!
 そんな感じで、警察署の窓口と、奥の電話口をひたすら往復し続ける課長。…で、最後にはなぜか「よしっ、大丈夫だ!」という。う〜ん、粘ったのなんだったんだよ。しかし、この伝家の宝刀「街宣許可証」が手に入ればもう無敵。何を隠そう、場所は「都内全域」、時間帯は「朝8時から夜7時まで」、期間は「2週間」。すごいすごい!! で、許可証が出るときの一言がまたよくて「できればウチ(杉並)でやらないでね」。いいね〜、最高! わかってますよ、旦那!

路上ゲリライベント!

 さて、で、そのイベントにやって来たのは前回もお知らせした通り、台湾からは「幹不需要理由」と「知易行難」、韓国から「バムサム海賊団」と「Christfuck」、そして沖縄のチャンネルシックス界隈の「ザ・ラブソング」、高円寺は「パンクロッカー労働組合」。
 当日の明け方まで最初の大パニック地点が決まらなかったのだが、ギリギリで決まったのが、なんと原宿のラフォーレ前! せっかくインパクト勝負でいくから、最初は絶対あり得ない場所で絶対あり得ないバンドが出現してしまおう! ってことになり、場所が決定。決行30分前にTwitterで宣言!!
 もちろん、基本はラジオ番組なので、いつもやっている「アナログFMラジオ・素人の乱」でスタート! 早速、当日朝から、普段はあまり近寄らない表参道に、サウンドシステムとバンドのセットを組んだ2tトラックを乗り付け、その荷台にいつものラジオメンバーの、小笠原ケイタ、松本るきつら、エンジニアの上岡さんと乗り込んで時を待った。
 そして、正午を回ったとき、原発と国境にまみれた雰囲気を蹴散らすべく、作戦の火ぶたはきって落とされた!!!!! まず、北島三郎の永谷園「すし太郎」の強烈な昭和なコマーシャルから! 「ち〜らし〜寿司なら、このすし太郎〜♪」と、土曜の午後の表参道に大音量が鳴り響く! 近くのウサンくさいおしゃれショップや、はびこるボッタクリの雑貨屋の店主が、いったい何が起こったのかと、てんやわんやに! 「せっかくオシャレにしてるんだから北島三郎だけは勘弁してくれ〜!」と言わんばかりの形相で店から飛び出してくる! ステージには、「NO NUKES NO BORDER RIOT」の巨大な文字と、それを上回るデカい字で「アナログラジオ・素人の乱 88.0MHz」の文字! そして、トドメに全く有名人でも何でもない我々3人がテーブルを囲んでマイクを前に座っている! 完全に意味が分からない!
 そして、適当にYouTubeで拾って来た昭和CMが連続で流れるまま、トラックはまさにラフォーレ前へ到着!!! そして、到着するや否や「アナログFMラジオ、素人の乱!」のかけ声とともに、始まる音楽は、オールナイトニッポンのオープニング曲でおなじみの「Bitter Sweet Samba」! これまた、快晴の土曜の午後には似ても似つかない深夜の雰囲気。音楽のフェードアウトとともに、ラジオパーソナリティの「さあ、始まりましたね〜。ラジオ素人の乱」「いやね、実は今日は特番なんですよ」「なんと、そうなんですか!」「しかも6時間番組」「すごいね〜!」などという、完全にどうでもいいラジオのトークが始まる。さあ、街はもう完全にAMラジオのノリに包まれ、なんだなんだと人が集まってくる。とにかく変わったことが好きな若者や、Bitter Sweet Sambaにつられて興味津々のラジオ世代、「No Border」の文字に反応した、黒人、白人、中東系の人(アジア系は顔が同じなので不明)も集まってくる。バンドのセットやサウンドシステムを見て、何かが始まると予感する音楽好きっぽい奴らも、足を止める。
 ラジオのオープニングトークも順調に進み、おハガキ募集やら今日のテーマやらを話し、人も多くなって来たところで、「じゃ、そろそろ、曲いってみましょうか。韓国のキリストファックさんです。どうぞ〜!」。で、始まったのが、韓国のグラインドコアバンドにして、今回の出演バンドの中でも一番ヤバそうなChristfuck! いきなり大音量で、メチャクチャなライブが始まった! 集まった大バカな奴らは、轟音が響いた瞬間にステージ前に駆け出し、ラフォーレ前で巻き起こるモッシュ(前代未聞!)、そして大混乱! 通りがかりの人も近くの店の店員さんも、面白がって集まって見に来る! 外国人も、近ごろ排他的な日本社会で「国境反対」を掲げたバカ騒ぎを目の当たりにして、やたらと嬉しそう。「あ、日本にもこんなバカな奴らがいてよかった」とでも思ってホッとしてるだろう。ガイジンさんたちにも「NO BORDERをテーマに東アジア中から集まってるんですよ」などと、説明して回ると「おお、それはいい。最高!」と、喜びまくる。
 すぐに、路上は群衆で埋め尽くされ、いきなりとんでもないことに! う〜ん、震災後、街頭にココまで笑顔があふれることがあるだろうか!? ちなみに、おしゃれにショッピングをしに来た人は、こんなはずじゃなかったとばかりに、阿鼻叫喚の大騒音から逃れるかのようにラフォーレの建物の中へ逃げ込んでいくので、我々のあずかり知らないところで、一石二鳥。

 ライブも怒濤のように続き、まさに路上解放区が出現しているなか、ずいぶん遅れて事態に感づいた原宿警察署員が駆けつけてくる。「こんなところで、なにやってんの!」という。ところが、あろう事かこちらには許可証がある。彼ら、どうしたらいいか頭を悩ませるが、原宿署の上の方と相談した結果、警官も増員され駆けつけてくる。そして、警察の出した結論が「ダメなものはダメ。もうやめて!」。おお、出ました! 法治国家万歳! そのセリフ、原発に言ってみろ! しかし、時すでに遅し! もはやChristfuckの日本初公演はエンディングにさしかかっている。気が狂ったようなダイブとともに、無国籍のバカ騒ぎはいよいよ佳境に! 警察もステージ脇から根拠なく「はい、もうそろそろ終わりね! 中止、中止!」と声をかけるが、残念なことに演者に日本語は通じない。そのままの盛り上がりで、みんな大喜びでライブ終了〜! ラフォーレ前に拍手が鳴り響く! で、すかさず、ラジオクルーが登壇し、「はい、キリストファックさんでした〜。じゃ、早速、次のコーナーいってみましょう! 毎度おなじみ、マヌケ反乱の逆襲〜!」と、何事も無かったかのようにラジオを続行。
 そして、リスナーからのハガキを数枚読んだ後、突如。「それでは、移動しまーす!」と宣言! さあ、またもゲリラ作戦のスタート! 観衆に対して、次の場所はTwitterで発表する旨を伝え、さらに、迷ったときのためにインフォメーションセンターの電話番号も伝える。そう、この番号に電話したら、次はどこに出没するかを教えてくれるという、画期的な作戦だ。余談だけど、この作戦、デモの本場=ドイツで教えてもらった作戦。向こうでは、インフォセンターを置いて、デモが散り散りになっても再集結できるような作戦を取っていたので、マネしてみた。
 で、用件だけ伝えて、早々にサウンドカーはその場を立ち去り、聴衆もクモの子を散らすように群衆の中へ消えていき、一瞬でその場はいつもの商業都市の景色に舞い戻り、警察車両だけが残る。その後、インフォセンターへの電話はジャンジャン鳴りまくり、次の場所を伝える。Twitterでも次の場所を知らせる。決まったのが、新宿駅前(東南口)。
 ここでも、第2部オープニングとして、また「Bitter Sweet Samba」から始まるんだが、新宿の街がまたなんだかラジオに合ってる雰囲気。いや〜、やっぱり、街って色があるね! さあ、ラジオ開始するが、また例によって曲の時間。こんどは沖縄からやって来た「チャンネルシックス」という、とんでもなく大バカなパンク集団界隈の「ザ・ラブソング」というパンクバンド。沖縄ってのもまたNo Border的に重要なポジション。そもそも百数十年前までは日本じゃなかったし、文化もいろんな地域のものが入って来ているところ。それに、古来貿易で栄えていることもありBorderって、一番厄介なものだ。
 さあ、そんなザ・ラブソングが登場し最初に放った言葉が、今回のイベントの神髄にして最名言。「あのー、すいません。俺ら主張ないです。ただ、遊びに来ました!」まいりました!! で、始まると、もう車の上によじ登るわ、ダイブしまくるわの大パニック! で、日本人、韓国人、台湾人、その他ガイジンも狂乱のバカ騒ぎ! すごいすごい! もう、完全に国籍不明だ!!

 そして、ここではどんどん音楽→ライブ→音楽→ライブの順で番組(?)は進む。台湾のバンド「幹不需要理由」もいつも台湾のサウンドデモなどで大活躍する感じで新宿駅前で炸裂してくれたし、韓国の「バムサム海賊団」は、相変わらずすべてをおちょくった姿勢で「タケシマ〜!」とか「キムジョンイル〜!」とか、訳の分からないことを口走りながらライブを敢行! いやー、メチャクチャだ!
 さて、新宿はやはり、日本の中心都市といっても過言ではないほどの大都市。もちろん、警察も多い。で、突然巻き起こった騒ぎを聞きつけた警官がやって来たんだが、「この人たちは台湾から来たの? へぇ〜。有名なの?」と訪ねて来たという。普通に興味本位で聞いただけだった! いやー、さすがカオスシティ=新宿。懐の広さが原宿とは全然違うな〜。超ゆるい。
 さてさて、しばらくしてまた移動タイム! 今度もまた、「移動しまーす!」と宣言し、全員がクモの子を散らすように街に消える。そして…、次にゲリラ作戦が街に姿を現したのは、これまた国籍カオスゾーンの新大久保! いまやコリアンタウンとして有名だが、その実は中国人だったり南米だったり、いろんな人がひしめくものすごくボーダーレスな街だ。そんなガイジンであふれる街でも日本語放送のラジオ「素人の乱」は始まり、最後にライブで登場したのは、高円寺の誇る大バカ集団=パンクロッカー労働組合! これまた轟音が鳴り響き始めた瞬間に、街の人がやって来る。おお、さすが日本離れしたこの地域性。そんじょそこらのことじゃ驚かないのか!! 留学生風の若い奴らも韓国語を話しながら狂乱のサウンドカーを見に来る!!
 この頃になると、もう日も落ちて薄暗くなって来ている。バンドも集まってる人も単なる通行人も街の看板も、いよいよ国籍ゴチャマゼ! もちろん、Twitterやインフォセンターで聞きつけてやって来ている日本人も負けずに大量にいる! で、この日にゲリライベントにふさわしい感じの混沌とした雰囲気のまま、新大久保駅前でモッシュ&ダイブの大狂乱のフィナーレ!
 そして、最後にはお決まりのラジオトークで「それじゃ、また来週〜!!」とエンディング。なんだこれ!

 神出鬼没の大作戦は、トラブルも一切無く、本当に大成功でゲリララジオイベントは終了! 特に印象的だったのが、通行人の反応が異常によかったこと。う〜ん、この閉塞感に満ちたいまの日本社会。みんな突発的な祭を求めてるんだね〜!!

 さて、街頭ゲリラ企画はこんな感じで大成功した訳だが、この後も東アジア人たちはしばらく高円寺をウロつきまくり、すばらしいものを残してくれたのだ! ま、今日はちょっと書きすぎてしまったので、続きはまた次回にでも!

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エライ人たちが勝手に喧嘩してる間に、
こちらは楽しく「解放区」を作っちゃう。
景気の悪い時代に、景気のよすぎるイベント大成功! 
例によって、ゆる~い感じの杉並警察署も素敵です。
そんなわけで、ほんとに警察本部で読まれてることを期待しつつ、
「また次回」もお楽しみに!

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松本哉さんプロフィール

まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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