今週の「マガジン9」

 先日、書店で『なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか ピース・コミュニケーションという試み』(光文社新書)という本を買い求めました。戦争反対を訴えることの大切さを思う一方、平和というもののイメージを広げていく方法について最近よく考えていたからです。

 本書の著者、伊藤剛氏は、戦後70年が経ち、戦争で使われる兵器や戦闘の形態も変化しているなか、私たちは自分たちの戦争観も「アップデート」する必要があるとして、次のように記しています。

 「そもそも反対している対象へのイメージが更新されていなければ、反戦の声はリアリストの前ではお題目にしか聞こえないだろう。平和を唱えるときにこそ、私たちは過去だけでなく、『最新の戦争』も学ばなければならないのである」

 遠隔操作された無人戦闘機が中東の地で民間人を誤爆するような時代にいる私たちは、はたしてどのような平和のありかたを求めることができるのか。そう問いつつ、私は徹底して反戦の立場を貫くことについても繰り返し考えるのです。

 なぜ国会前で戦争法案反対のデモが続いているのか。なぜそこに集まっている若者をはじめ、多くの人々は緩やかなつながりを持続していられるのか。それはおそらく、様々な趣味や嗜好をもっている個々人が、正義を掲げてお互いに殺し合うような戦争はいやだ、という1点でつながっているからでしょう。

 ついでに言えば、マガジン9が支援者やサポーター、ボランティアの手を借りて、細々ながら10年以上も続けてこられたのは、権力をもつ人々が、自分たちを縛る憲法をないがしろして、戦争へのハードルを低くし、しかも自分たちではなく国民を戦場へ送ろうとしている風潮に危機感を抱いているところで一致できているからです。

 ここまで書いてふと思いました。「戦争と平和」を対にするのではなく、「戦争と幸せ」と書き換えてみたらどうだろうか、と。

 家族の健康、仕事の充実、自然とのふれあい、仲間との語らいなど、何を幸せに思うかは各人各様でしょう。戦争はそんな個人のささやかな幸せを認めない性質のものです。そんなものはいやだという姿勢なら多くの人と共有できるのではないか。

 冒頭に紹介した本の趣旨からはずいぶん逸脱しますが、同書を読みながら、私はそんなことも考えていたのでした。

(芳地隆之)

 

  

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