マガ9備忘録

妙に気になっていた。特定秘密保護法案成立時の映像だ。表情を噛み殺す安倍晋三首相に対して、その隣の谷垣禎一法相の笑顔。囂々たる反対を押し切っての成立した瞬間の閣僚の表情にしては、あまりにも邪気がなさすぎた。

谷垣氏といえば、第1次安倍内閣時には党内非主流派として政権運営に批判的だったことが思い出される。民主党政権下の自民党総裁時も党内を無難にまとめた。しかし昨年9月の総裁選に石原伸晃幹事長が立候補を表明したことで再選出馬を断念し、河野洋平氏以来の首相にならなかった総裁となった。

どちらかというと「喧嘩下手」の谷垣氏。そんな彼が、乱暴としか言いようのない安倍政権の手法を会得した喜びの発露が、あの満面の笑みだったのではないか。ああ、こんなに無茶をやってもいいのか、と。

特定秘密保護法案審議中の自民党幹部の発言も耳を疑うようなものが多かった。石破茂幹事長の「デモはテロ」は言うに及ばず、「(知る権利が)国家や国民の安全に優先するという考え方は基本的に間違い」(町村信孝元外相)、「(首相動静は)知る権利(の範囲)を超えているのではないか」(小池百合子元防衛相)など…。

国民の権利や報道の自由を蔑ろにしたこれらの発言は、今後しばらく国政選挙がないことで弛緩しきった彼らの意識から漏れてくるのだろう。

17日付の朝日新聞によると、「難民認定すべきだ」とした難民審査参与員の意見を谷垣法相が覆し、ミャンマー国籍の男性に「不認定」の判断を下していた。参与員制度の導入以来、法相が参与員の意見を覆した例はなく、極めて異例だという。

難民審査参与員は、元裁判官や外交官、国際人権法の学者などで構成される。制度的に専門家の判断によって判断の正当性、公平性が担保されるはずであり、これを覆す理由は、法相の側には見受けられない。難民の人権よりミャンマーとの外交関係を重視したのでは、と勘繰られても仕方がない。

前例がない、極めて異例、憲政史上初などの形容がついて回る安倍政権の政治手法。もはや“健全保守”は自民党では絶滅危惧種なのだろうか。その暴政ぶりは自信のなさと姑息さ、臆病さの裏返しなのかも知れないが。(中津十三)

 

  

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