映画、テレビ、舞台と幅広く活躍してきた女優の木内みどりさん。
3・11以降は、脱原発についても積極的に活動しています。
脱原発への思いや憲法のこと、政治や社会参加についてなど、
日々の暮らしや活動のなかで感じていること、気になっていることを
「本音」で綴っていただきます。不定期連載でお届けします。
第37回
ダルトン・トランボ
参議院議員選挙に続けての、都知事選。あぁ〜〜と気が遠のくような結果でした。が、どなたを応援したにしろ結果は、ひとつ。
まぁ、しばらくは気分転換しましょ。
映画観ています。
『帰ってきたヒトラー』
『シチズンフォー スノーデンの暴露』
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
アメリカの映画脚本家であり映画監督のダルトン・トランボ。わたしはこの10年近く、いやもっと長い時間、追いかけてきた人で、あちこちの資料を読んでから彼の作品である映画を観て、また、関連の資料を読んでから映画を観て、を繰り返してきました。ダルトン・トランボの実際の人生を詳しく知れば知るほど、トランボが彼の作品、『ローマの休日』、『黒い牡牛』、『スパルタカス』、『脱獄』、『ジョニーは戦場に行った』、『ダラスの熱い日』、『パピヨン』に、密かに潜ませたものがわかるようになってくるという、独特の楽しみがあるのでした。
そしてYouTubeで観られる当時の「公聴会」の様子。
どれほど圧力をかけられても逆境に追い込まれても権力に屈しないダルトン・トランボ。しかし映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』を見てちょっと悔しい気持ちがありました。10年以上コツコツコツコツ、トランボを追いかけてきたことがこの映画を観れば、ほとんどわかってしまう。まぁね、ひとりコツコツ調べたりすることが好きなんですけどね。
ひとつの魅力に惹きつけられると次なるひとつの魅力がそれに連なって、また次のひとつが連なって、また、次のひとつが。
しばし、娯楽時間を楽しむことにします。
映画を見て、しばし心身をクールダウンしながら、次の作戦を練る。戦ってきた先人たちのやり方は、いろんな方法で知り、学び、活かすことができそうです。まもなく夏休み。木内さんがご紹介してくれた映画、ぜひ、鑑賞したいと思います。
映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」に、トランボの書いた脚本の題名を「ローマの休日」に変えるシーンがある。調べてみると原題の「Roman Holiday」にはローマの休日という意味はないそうだ。都市名に形容詞は存在しないので、本来の意味は「古代ローマ帝国のローマ人の休日」が原義。かのローマ帝国では奴隷の剣闘士とライオンの戦わせる見世物がありローマ人は休日に娯楽として楽しんだ、そこから「人の苦しみの上に成り立つ快楽」の意という。奴隷戦士のように自由のない身をアン王女に重ね合わせたのか、その意味でも興味深い。映画は、そんな名作を次々と世に出した映画人の実話をもとにした物語。ジョン・ウェインやカーク・ダグラスなどが実名で登場し、冷戦時代アメリカで、ハリウッドにも赤狩りが吹き荒れた時代、脚本家仲間の友情と家族の絆で信念を貫いた男が描かれ、誇り高い映画に仕上がっています。
権力に屈しない人物を褒める。悪いことではない。が、もっと重要なことがある。個人に対して権力が不当に圧力をかけることのできる社会そのものこそ問題だ。木内さんは、そのような社会に対して改善への意思を持つべきだ。あの人はすごいと憧れているだけでは、未来を開くことはできない。