マガ9備忘録

関東甲信を中心とした広い地帯では14日から15日にかけて記録的な豪雪に見舞われた。それまでの最高積雪が49センチだった甲府市で114センチ、58センチだった埼玉県秩父市で98センチ、37センチだった前橋市で73センチと大幅に更新。人々の生活を白魔が襲った。

19日になっても静岡、宮城を含む7都県で3000世帯近くが孤立しており、この大雪での死者は21人となっている。高速道路・一般道とも通行止めが続き、JRは運休。車内に閉じ込められる人も続出、さらに流通が寸断されて食料や生活必需品が不足した。大災害だ。

こうした時に重要なのが情報だ。ツイッターなどのSNSでは、SOSや、それに対する案内・誘導、さらに被災者を勇気づける書き込みが交錯した。また政府の対応の遅れを論難するものも目立った。

インターネットに普段から親しんでいればこのような情報に接することも出来るだろうが、今度の被災地は山間地がほとんどで、お年寄りなどいわゆるデジタルディバイドのある人が多かった。そうなると既存のテレビ放送が頼りになるはずである。

しかし、NHKなど放送局は開催中のソチ冬季五輪中継番組を流すばかり。大雪に関するニュース報道も、東京近郊での電車衝突などは報じたものの、山間地で進行中の被害に関してはあまりにも触れずじまいだった。被災地の県域放送ではL字型画面で伝えたところもあったようだが、電光ニュースと同じで、見逃してしまうこともままある。

非常時に情報を伝えずして、何が公共放送だろうか。何より、NHKには防災業務計画がある。災害対策基本法によって「大規模な災害が起きたときは、被災者の生命と財産を守るため、防災情報を正確・迅速に伝える責務」を負っているはずだが、NHKはその精神に悖ることはないだろうか。

2011年7月24日に地上デジタル放送に移行した日本のテレビ(東日本大震災被災3県を除く)。数千億円の国費を投入しての地デジ化によって、画像の高精細化や双方向サービスなどが可能になっているが、その中に、同じ放送局が複数のチャンネル分を放送できるマルチチャンネルがある。

NHKでは野球中継が延びた場合などに、メインのチャンネルで番組表通りに放送し、サブチャンネルでは延長されている野球を放送するなどの実績がある。マルチチャンネルを使えば、五輪中継も中断することなく被害情報を常に流すことが出来たはずだ。

被災地以外にもこうした放送を流すことで、人々の注目を上げ、被災者の孤立感を和らげる。3・11で、そうしたことは学んだのではなかったか。

巨費を投じた地デジの折角の機能を使わず、漫然と五輪中継を流すばかりのNHK。その地域の放送局は必死に取材しても、東京にいる編成部門が止めているのだろうか。先日の小欄で称えた教養番組班もそうだが、現場と上層部の隔たりが何とももどかしい。(中津十三)

 

  

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その22)非常時に情報を伝えずして
何のための公共放送か
」 に1件のコメント

  1. A.Saigo より:

    この体たらくを続けるなら、NHKは基本法における「公共機関」の指定を返上すべきです。そして他局にその座を譲って欲しい。

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