マガ9備忘録

京都府北部、丹後半島の付け根にある日本三景の天橋立はあまりにも有名だ。さらに北へ向かうと、半島の北端に経ヶ岬(きょうがみさき)という自然美に恵まれた観光名所があるが、そのすぐそばで米軍Xバンドレーダー(TPY-2レーダー)の建設工事が進められている。近畿で初めての米軍拠点だ。

経ヶ岬にほど近い航空自衛隊分屯基地にそのレーダーは建設されている。2012年8月に、当時の森本敏防衛相が米レーダー追加配備の検討に入ったことを公表し、2013年2月に丹後半島に内定。9月に京都府知事と京丹後市長が受け入れを表明し、今年5月からは工事が始まっている。

そもそもXバンドレーダーとは何だろう。Xバンドは、軍事通信などに使われるマイクロ波の周波数帯域のひとつ。北朝鮮などの弾道ミサイルを探知・追尾するという名目のレーダーだが、東アジアにさらなる軍事的緊張関係をもたらすことは間違いないだろう。電磁波や米兵の配備に対する地元住民の心配もある。

地元自治体からの住民への説明会は受け入れ表明前にアリバイづくり的に行なわれ、防衛省による説明会は、その表明から約7カ月を経過した今年4月になってから。近畿中部防衛局の桝賀政浩企画部長が説明し、京丹後市の中山泰市長も同席したが、その内容はまったく空疎なものだった。

「安心・安全」「問題ない」を繰り返し、地元住民の不信や不安に正面から答えない。責任がどこにあるのか曖昧なままはぐらかす。「しっかりやります」というような言い回しで情緒に逃げる。さらには再質問を時間切れでうやむやに…。

この光景はどこかで見たことがある。そう、マガ9連載中の「三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記」に登場する、高江での米軍ヘリパッド建設説明会だ。映画『標的の村』を見た方ならお分かりだろう。すべてを決めた後での、形だけの茶番だ。

このまま工事が進むと、今月中にレーダーが搬入され、12月末には本格稼働するという。米軍Xバンドレーダー問題をずっと追っているサイト「スワロウカフェ@京都」には、次のような文章があった(2014年5月12日)。

このブログにも何度も書いてきたことですけれど。
米軍基地やXバンドレーダーの是非云々の前に、「国として、行政として、住民に対して普通に行うべき当たり前の説明すらなされていないまま事が進んでいる」ことが一番の問題だと思うんです。

地元京丹後市宇川や京都市内で抗議行動は続けられているが、まだまだ知られていない。現在進行形で民主主義が骨抜きにされているこの問題は、もっと注目されるべきだろう。(中津十三)

※ 丹後半島の米軍Xレーダーにまつわる問題点は、上記の「スワロウカフェ@京都」のほか、「京丹後 米軍レーダー基地問題を考える」にまとまっています。

 

  

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