マガ9備忘録

東京メトロ神楽坂駅近くの神楽坂セッションハウスでの「私たちは『買われた』展」を見た。あまりに凄絶な、「売春」せざるを得なかった若い彼女らの半生に絶句した。

この展覧会の企画目的は以下の通りだ。

中高生世代を中心とする当事者がつながり、声を上げることで、児童買春の現実を伝え、世の中の持つ「売春」のイメージを変えたい。これまで表に出ることができなかった「買われた」私たちの声を伝え、今も苦しんでいる妹たちや、同世代、そして、かつて似た苦しみを経験した女性たち、すべての女性に勇気を与えたい。

確かに、一般に流布する少女売春のイメージは「気軽に、遊ぶ金欲しさ」というものだ。しかし、ここに展示された「売春」に追い込まれた彼女たちの手記のどれもが、あまりにつらい内容だ。

同じく展示された彼女たちの写真も、かつて立っていた街角に佇む姿や、リストカットやたばこを押し付けられた痕など、思わず立ちすくんでしまうものが多い。

崩壊した家庭では親などによる暴力が横行し、学校や施設でいじめ・抑圧に遭い、疎外された彼女たちは人とのつながりを求めて街に出る。そこに最初は優しく付け込み買春する男の、性欲というより支配欲。そういう男に屈した彼女たちを誰が責められよう。その性搾取はまるで「システム化」されているようにすら感じた。

この展覧会の主催者は、居場所のない女子高校生らを支援する一般社団法人Colaboと、Colaboとつながりのある女子たちによるサポートグループTsubomiだ。「売春」した彼女たちがColaboと出あっていなかったらどうなっていたのだろう。そして、まだ出あえずに苦しんでいる少女もいるのだろうか。

しかし、この展覧会を開催するとの報道があってから、Colaboに対しても、無理解や中傷のコメントがあったという。まさに社会のひずみだ。

自分のつらい過去と向き合いながらもSOSを発している彼女たちを、“誤解”したままでいいのか。見ぬふりをしたままでいいのか。私たちが問われている。そして、彼女たちが今後平安に暮らせることを祈らずにはいられない。

(中津十三)

※ 「私たちは『買われた』展」は、東京都新宿区矢来町158 神楽坂セッションハウス2階ギャラリーで、8月21日(日)まで。12時~20時。入場料一般1500円(前売り1300円)、高校生以下無料。

追記:最終日の21日は16時半最終入場、17時閉館の予定でしたが、閉館後17時〜18時を、性自認が女性の方限定で来場していただける時間とし、男性の入場は16時半までとします。男性がいることで恐怖を感じたり、パネルの前に男性がいることで展示物を見られずに遠慮される方が多くいらっしゃいます。そのため、安心してきてもらえる時間になれば、とのことです。

 

  

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