マガ9備忘録

トランプ次期大統領が選ばれてから、米国内でヘイトが蔓延しているようで、SNSには目を覆いたくなるような出来事が投稿されている。箍が外れるというのはこういうことなのだろう。

このタイミングで『関東大震災朝鮮人虐殺の記録 東京地区別1100の証言』(現代書館、9000円+税)を読む。93年前、日本人の「箍が外れた」大著の記録だ。

虐殺についての証言は、新聞や雑誌の記事、作家のエッセイ、学校の文集から警視庁の記録まで、さまざまな文章を網羅している。地域別(23区それぞれと、その他の地域)で見ることが出来、その土地で起きたことがすぐに分かる。

例えば、筆者は千代田区の会社に勤めているが、その近くである九段や飯田橋でも虐殺や迫害が起きていたことを知った。都心よりも、家賃が安く、人夫などとして働いていた地域で起こった印象があったが、決してそうではないことが分かる。東京のあらゆる場所で起きていたのだ。

また、この本の後半は「関東大震災朝鮮人関連証言の改ざん例―『子供の震災記』をめぐって」である。震災の翌年に出版された『子供の震災記』が、検印のある刊行されたものと、国会図書館所蔵の原本とでは違っていることを指摘した、貴重な資料だ。

その変更は、「朝鮮人」が他の表現に置き換えられていたり、子どもが正直に記した流言蜚語の内容も分かりづらくされていたり、さらには自警団の持つ武器も殺傷力の弱いものにされていたりと、まさに「朝鮮人虐殺」を歴史から消し去ろうという動きが、その直後からあったことに驚かされる。

この本の編著者・西崎雅夫さんは、「はじめに―証言集を作るまで」でこう語っている。

加害の歴史を直視することは決して容易ではない。でも、そこからしか未来は見えてこない。

箍が外れた米国の人々も、自分の行動を直視する日が、いつか来るのだろうか。

(中津十三)

 

  

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