- 特別企画 -

【スタッフコラム】

福島原発さいたま訴訟報告(2)

福島原発さいたま訴訟を支援する会
北浦恵美

 福島原発さいたま訴訟の第5回目となる、次回口頭弁論期日は4月22日午後2時半からです。 
 前回、2月に行われた第4回期日では、避難指示対象区域外から避難されてきた原告の方の陳述が行われました。家族と愛犬との福島での平穏な暮らしを、突然の原発事故で根こそぎ奪われた苦しみを語ってくださいました。

 以下に陳述の内容の一部をご紹介させていただきます。

 出張中に震災に遭い家に帰れず、TVで福島原発爆発の映像を見て驚愕した。
 自宅周辺をガイガーカウンターで計測したら、10μSV/Hの上限を振り切り、測定不能だった。

 結婚予定だった娘は放射線被曝への悲痛と不安からパニックになってしまった。会社の営業所は閉鎖され、解雇された。長年かけて築き上げてきた営業所長の地位も原発事故によりあっさり奪われてしまった。そして、就職が決まり働き始めたばかりだった娘の職も奪われた。

 家族3人の生活が成り立たなくなってしまい、困難を極めた避難生活。福島ナンバーの車を見た女性がその子どもに「離れなさい」と言って、慌てて逃げられたこと。それだけでなく、何度も車であおられたなどの体験をした。避難所として逃げ込んだ施設でも「早く出て行ってくれ」とばかりの扱いを受け、避難所を転々とした。

 これまでの被曝基準を突然引き上げ、「ここにとどまれ」という国の無責任さに対する怒りを感じている。

 最後に、陳述は、こうしめくくられました。

 「原発事故のために、苦しいことを何度も経験させられながらも、生き延びるためにこれまで必死で耐えてきたのです」

 とつとつと静かに語られたこの苦しみに、誰もが言葉を失いました。この被害に対する賠償として、本当に僅かな金額しか賠償されていない現実が許されてよいはずがありません。改めて、この訴えに公正な判決が下されることを求めたいと、強く思いました。

 続いて行われた原告側代理人の意見陳述では、原発政策を強力に推進してきた国が、国民の生命・生活を守るために当然行うべきであった東電に対する指導を怠ってきた責任を追及しました。

 裁判所がこれらの陳述を真摯に受け止めることを信じたいと思います。

■3/28「日本と原発」上映会のご報告

 よりたくさんの方々に、「福島原発さいたま訴訟」について知っていただこうと、3月28日に今話題の映画、原発差し止め訴訟などで知られる河合弘之弁護士が監督を務めた『日本と原発』上映会を企画しました。大きな会場で「人がまばらだったらどうしよう」「準備は大丈夫か」など、心配しながら当日を迎えましたが、蓋を開けてみれば、300人以上の方々が映画を見に来てくれました。
 まず、弁護団、原告からこの裁判と被害について報告させていただいたあと、映画を上映。とてもよい映画でした。2011年3月11日時点に引き戻され、あの時に感じた恐怖がまざまざと蘇りました。この時を原発の近くで過ごした方の恐怖はいかばかりだったろう、と思うとき、こんなことを絶対に繰り返させてはならない、と思いを新たにしました。

 見ていたスタッフの感想を紹介します。

 「映画『日本と原発」は、一言でいってやさしい気持ちになる映画でした。そして頭がすっきりする映画でした。私たち日本人は幸せになる為に戦後、生きてきた。原発推進派は『科学技術の進歩、すなわち発明・発見には必ず失敗はつきもの。だから今回は失敗したがだんだん完全になっていく。航空機や自動車の開発の歴史でもそうだった』と今もしきりに言っている。でもそれは今回、全く当てはまらない。その理由は2点。第1に、もとに戻らないこと。失敗は種の死を意味し、人類の破滅も意味する。第2に究明困難で検証不明であるから・・・。
 福島では今、事故のことを忘れて暮らそうと内向きになっている人も多いと思う。でもこの映画はそんな心を外側に向かわせる力を持っていた。やさしい余韻が心と心を紡ぐ」
 
 続けて、支援する会の呼びかけ人のお一人でもある、前双葉町町長の井戸川克隆氏がお話しくださいました。淡々と、国と東電に対する静かな怒りを語られ、基準を引き上げ、帰還を進める無責任な国の政策の矛盾を語られました。「日本全国どこも(帰還の基準が年間)20mSVなのなら帰りますよ。でもそうじゃない」という言葉が胸に突きつけられました。

 最後に、裁判傍聴のご支援のお願いをさせていただきました。本当にたくさんの方とこの映画を見て、福島原発さいたま訴訟のことを知っていただいたことに感謝しています。

 ぜひ、たくさんの方に次回、期日に来ていただけますように。

≪福島原発さいたま訴訟第5回口頭弁論及び報告集会≫

とき:4月22日(水)14時半開廷  さいたま地裁101号法廷
 是非傍聴にご参加ください! 
※傍聴券が配られる予定です。2時までにさいたま地裁B棟前においでください。

※裁判終了後弁護団主催の報告集会があります。
場所:埼玉総合法律事務所3階会議室
内容:口頭弁論期日の説明、原告側の主張の概要

〈これまでの関連コラム〉
→ 2017/03/15 福島原発さいたま訴訟報告(10)
→ 2016/08/03 福島原発さいたま訴訟報告(9)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(8)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(7)
→ 2016/01/20 福島原発さいたま訴訟報告(6)
→ 2015/11/18 福島原発さいたま訴訟報告(5)
→ 2015/08/26 福島原発さいたま訴訟報告(4)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(3)
→ 2015/04/15 福島原発さいたま訴訟報告(2)
→ 2015/02/11 福島原発さいたま訴訟報告(1)
→ 2014/11/26 福島原発さいたま訴訟に思うこと
→ 2014/05/28 福島原発さいたま訴訟、第1回期日とその支援のこと

 

  

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