マガ9対談

その1その2その3


対談もいよいよ最終回。意外にも対決にはならず、共通点ばかりが浮き彫りになってしまいましたが、最後に「意見が分かれた」こととは・・・?

伊藤真●いとう・まこと伊藤塾塾長・法学館憲法研究所所長。1958年生まれ。81年東京大学在学中に司法試験合格。95年「伊藤真の司法試験塾」を開設。現在は塾長として、受験指導を幅広く展開するほか、各地の自治体・企業・市民団体などの研修・講演に奔走している。著書に『高校生からわかる日本国憲法の論点』(トランスビュー)、『憲法の力』(集英社新書)、『なりたくない人のための裁判員入門』(幻冬舎新書)、『中高生のための憲法教室』(岩波ジュニア新書)など多数。

小林節●こばやし・せつ慶應義塾大学教授・弁護士。1949年生まれ。元ハーバード大学研究員、元北京大学招聘教授。テレビの討論番組でも改憲派の論客としてお馴染み。共著に『憲法改正』(中央公論新社)、『憲法危篤!』(KKベストセラーズ)、『憲法』(南窓社)、『対論!戦争、軍隊、この国の行方』(青木書店)など多数。「大阪日日新聞」にてコラム「一刀両断」を連載中。

●アフガニスタン問題と国際貢献

編集部
 自民党政権の時には、「国際貢献」という名のもとに、イラクの「非戦闘地域」への自衛隊の派遣や、自衛隊によるインド洋での給油活動などが行われてきました。オバマ政権のアメリカは、アフガニスタンの戦争をいかに終結させるか、という難問を抱えており、今後も日本は協力を求められるでしょう。伊藤先生は以前、「けんぽう手習い塾」の原稿のほうで、憲法というのは、国連軍、平和維持軍、ISAFを問わず、いかなる軍事的貢献、支援も憲法は許していない。自衛隊の派遣だけではなくて、武器、燃料、食糧なども認めるべきではないということを書いていらっしゃいました。とすると、現状の国際状況の中で、どんな国際貢献を日本は果たしていくべきでしょうか? 9条があるから、国際貢献ができない、という議論も自民党政権の時には、随分とありましたし、かつての小沢論文では、(9条があっても)国連決議があれば、ISAF参加は可能という考えを示していました。

伊藤
 軍事的な貢献は、どんな名目だろうがしてはいけないと考えています。それは、自衛隊を前線に入れようが、後方支援だろうが、燃料の供給であろうが、戦争を遂行することに加担していること、海外での武力行使の一翼を担っていることにほかならないからです。燃料だけじゃなくて、私は、それに使う目的が「戦争」であるならば、食糧だろうが資金の援助であろうが、それは同じことだと考えています。結局、日本が拠出したものが何に使われるのか、ということだと思っています。
 私は、武力による紛争解決は不可能だと思っています。紛争を解決せずに、さらに泥沼化するようなものに日本が協力することは、この国が本来やるべき国際貢献ではないと考えています。
 ですから、時間はかかるかもしれませんけれども、そういう紛争の火種になるような部分のところのさまざまな要因、例えば貧困の解消ですとか、医療、教育などの支援をするべきでしょう。
 今、現実には、アフガニスタンなど紛争地域では、まだできないことかもしれません。けれども、少しずつできるところからそういう支援をしていく、また日本に人を呼び寄せて、そこで教育をして、母国に戻すということでもいいかもしれません。そういう可能性をもっと探るべきだろうなと思うんです。

 それからお金だけ出して人を出さないことを批判する人もいますが、お金を出せるというのはすごいことだし、それは日本ができる立派な支援で国際貢献の1つです。ただ、問題はそのお金の使い道ですよね。

編集部
 お金をただぽんと出せばいいというのではなく、その使われ方までちゃんと指示しフォローしていかないと、逆効果になる場合もありますね。

伊藤
 だと思いますよ。それから今の憲法のもとでは、国連決議に基づいて国連の旗の元でと言っても、日本の自衛隊がそこで活動する以上は、「国権の発動の武力行使の一端」になってしまいます。自衛隊員が、個人で勝手に義勇軍的なものに参加しますというなら話は別ですけれども、日本の税金で給料を払っている人たちが、そういうところへ行って軍事行動の状況になる以上は、国連の旗のもとであろうが、アメリカの旗のもとであろうが、それは関係ないですよね。そういうことを一切させないというのが、今の憲法9条、前文の考えですから。アフガニスタンの給油活動も含めて、憲法違反であることは明らかだと思っていますし、そういう形の「貢献」なんか全くする必要はないと思います。

小林
 原点に返れば、憲法9条は、1項で戦争を一切放棄している。2項で日本が軍隊を持つことを否定している。しかし、日本が独立主権国家である以上、少なくとも、例えばAさんが暴漢に夜道で襲われたとき、黙ってやられる必要はないので、抵抗して相手を蹴り殺してもいいわけです。個人にそういう自衛、正当防衛権があるならば、同じく人間集団としての、有機体としての国家にも、この時代、この土地、この世に存在する以上、他国によって、その主体性を奪われる理由はない。即ち、国家の自然権としての自衛権はあるだろうということです。

 それから、憲法9条が制定された背景を考えたら、日本は侵略国家として断罪された、だから、二度と侵略いたしませんとなると、憲法9条のもとでも、日本は、侵略戦争はできないが、やむを得ず、襲われたときに抵抗する意味での自衛戦争は可能であろうという前提で、今の公式の解釈ができているわけですね。
 けれども、自衛の名で侵略した過去の歴史があるから、わかりやすくするために、間違っても外見的に日本の自衛隊という軍隊を海外に出さない。親善儀礼や訓練で行くのは別の話です。しかし、戦争目的を持って自衛隊は海外へは行かない。
 ところが、解釈がだんだんずれてきて、「戦争目的を持って」じゃなくて、戦場の近くまで行っても、「他国の武力行使と一体化しなければいい」とか、言い出したわけですよ。
 でも、伊藤先生がさっき指摘したように、最前線で米軍の部隊と一緒に並んでドンパチやるのは露骨な戦争参加だけど、後方で彼らが動くためのガソリンを供給したって、それだって戦争を支えているわけです。要するに「一体化」なんですよ。

 最近の政府解釈はひどい話で最前線のコンバット隊に入って引き金を引かなければいい、というところまで事実上後退してきているわけです。以前、NHKのラジオの番組に録音テープで出演したことがあります。スタジオには外交評論家の岡本行夫氏がいて、私の意見を岡本さんが聞いて、「小林さんの意見で言うと、米軍にお弁当やお水を供給してもだめなんですね」と言って番組が終了しました。もちろん、いけないんですよ、弁当とか水がなかったら戦争は遂行できないですから。弾がいけなくて弁当はいいというはありません。何であっても戦争を支えちゃいけないんです。これが憲法9条の前提です。

 そして今、アフガニスタンで何が起きているかというと、2001年の9.11を切っ掛けとして、アメリカがアフガンの旧政権に戦争を挑んで、タリバンらを国内の地域政府に追いやってしまった状態であり、それらはまだ殲滅できていません。アフガニスタンは内戦状態で、北部同盟とアメリカを中心とした連合軍がくっついて、空から爆撃をし、陸から突撃をし、海上封鎖で状況を管理しているという、陸・海・空の戦争をアメリカが正式にやっているわけです。
 それを、どこであれ支えたら日本は戦争参加、憲法9条違反になります。だから、憲法9条が現行法である以上、私は、今はアフガニスタンには全くかかわるべきではないと考えます。国際貢献としての復旧支援といっても、まだ戦争は終結していません。だからそれは、戦争が終わってからにすべきです。

 アフガニスタン政府の警察官の訓練を支援するという話もありますが、陸軍の補充部隊みたいな警官たちを日本人が訓練して何になるんですか。警官たちの給料を倍額にするために、日本が代わりに支払うという話もありますが、アフガニスタンの市民の和平のために本当に役に立つのかどうなのか・・・わからないうちは、まだこういうことをすべきじゃないと思います。

 古来、どんな戦いだって、どちらかが勝つか、両方が死に絶えるか、あるいはくたびれて、飽きてきて、必ず終わるんです。終わった後には、復興が必要でしょう。そのときに、ゆっくり第三の文明の日本が出ていって、後始末を手伝ったらいい。テーブルを用意するから、平和条約を結びなさいよと。私たち恨まれていない日本人が行って、調整役をやってあげましょう、復興支援しましょうと、これがいい選択だと思うけどね。

編集部
 伊藤先生は、どう思われますか。

伊藤
 私は、9条は自衛戦争も否定していると考えていますので、その解釈については小林先生と考えが異なりますが、それ以外のことについては、まったく同感ですね。
 先ほど(対談その2)も指摘しましたが、自公政権の時に自衛隊がイラクに派遣された時、野党だった民主党は、「憲法違反だ」と国会で追及していたのに、あれは非戦闘地域だったから合憲であるとか、アフガニスタンでの給油活動も憲法違反ではないとか、今になって「やはり合憲だ」と言い出しています。政権が代わったんだからはっきりと、「これが私たちの解釈です」ということを堂々とアメリカに主張することこそが、対等な日米関係の第一歩なのに、本当にもったいないと思います。

編集部
 そうですね。アメリカから言われたから「国際貢献」をする、ということを続けていたのでは、あまりにも国としての主体性がなくて、国際社会においても情けないですね。

●民主党の対米交渉はどうなる

編集部
 対米交渉能力という点について、自民党はまったく期待できなかったわけですが、では民主党はアメリカの「むちゃな要求」を本当に断れるのでしょうか?

小林
 政権交代をした今は、アメリカと距離を置くいいチャンスなんですよ。なぜかというと、岸信介というのは、第二次世界大戦の完遂を主張していた護国同志会の中心人物であり、A級戦犯容疑で巣鴨プリズンにも入っていた。公職追放されたのに、いつの間にか復帰して日本の総理大臣になって、日米安保条約を結んだ。あれはどう見たってアメリカの傀儡政権ですよ。そのひざの上で育った孫、安倍晋三は、アメリカと心中するような政策を立てたんです。戦後日本のエスタブリッシュメント、主流派は、アメリカの許しなしに、その立場にいないと思うんです。逆らって田中角栄があんな風になったのを、小沢一郎は見てきたわけだから、思うところはあるでしょう。

 しかし、これは誇りの問題だと思うけれど、日本も相当な国でありますから、全力でプライドを持って、今の日本は独立国家なのだから、「アメリカと友好国でありたいですが、属国ではありません」と主張して、今の安保条約を結び直すというやつが出てきてもいいと思うんだけど。おそらく1人、2人、身の危険にさらされる人も出てくると思うけれど・・・、でも縁あって1回得た命だから、そういう決断をする高い地位にいる男がいてもいいと思うけどな。
 平野官房長官も、野党時代には格好いいことを言って、与党になった途端にアメリカに都合のいい解釈にぱっと変わっちゃう。これは情けない。

伊藤
 普天間基地の移設問題については、沖縄の民意が選挙ではっきり示されたわけです。民意で政権交代があったわけですから、アメリカが一番好きな民主主義、国民の意思でこうなんですということを堂々と突きつける、本当にいいチャンスなんですよね。

小林
 誤解を招かないように言っておくけど、アメリカというのは二面性があって、要するにCIAを使って、拉致、暗殺、買収なんてことをやってきているんです。それはギリシャ、ローマの昔から、国家というものの現実です。

 もう1つは、アメリカというのは、イギリスの迫害から立ち上がった自由と民主主義の国である、という建前があります。だから、アメリカには、今、伊藤先生がおっしゃったように、事実と論理で堂々と、つまりディベートして、こっちの筋を通すことは、有効です。

 かつて自民党が約束した「日米合意」について、国家の人格は1つだから守れという論調があるけれど、それは株式会社の話です。前社長の時の契約も守ってくださいよ、というのは。でも、これは政治です。政権が代わった以上、新しい交渉に入るということは、可能ですよ。自民党政府がした約束を民主党政府が履行しなさいと、当然、アメリカは建前として言います。でも、政権が代わったんですよ、時代も変わったんですよ、だからこれは政治交渉でしょうと。

伊藤
 アメリカだって、オバマ大統領になって、東ヨーロッパへのミサイル防衛計画の全面見直しを表明したりしていますよね。

小林
 アメリカだって、政権交代したら態度が変わるんだ。

伊藤
 これまでの自民党政治では、いわゆる利権や土建政治ですから、沖縄においても基地の建設をすることによる、地元のメリットが多分にあると思われたのでしょうが、民主党政権はそういう「箱もの行政」や「利権との癒着」から決別した政治をする、と言っているわけです。だから、そういった観点からも、今、チャンスのはずですよね。
 それから、沖縄の基地問題だけでなく、日米安保の問題においても、特に地位協定についても、改訂するべきことがあるわけです。とても独立主権国家とは思えないような不平等条約を押しつけられているわけですから。
 これらの問題の解決に向けて、民主党政権にはまだ期待していますよ。ただそこを後押しするものとしては、沖縄の人たちの民意だけじゃなくて、本土の国民の意思というものが、もっと明確に主張されることが必要だと思うんです。そういう(本土の世論がもりあがる)タイミングを鳩山さんは、待っているのかなというふうに、私は善意に解釈しているんですけどね。

●日米同盟と他国との関係

編集部
 日米安保は50年たったということで、日本とアメリカを取り巻く状況が変わり、目的とするところも随分変わったと言われていますが、見直しをしましょうという声は、あまり大きくなりません。しかし日米安保そのものを、ちゃんと見直さないと、米軍再編のこと、普天間基地の移設についても、根本的なところからの交渉ができないのでは、と専門家の方がおっしゃっていました。

小林
 冷戦を前提に考えた時、アメリカ側の橋頭堡(きょうとうほ)として日本列島が、いいところにあるんですよ、地形が弓形で。ロシアと中共、北朝鮮を太平洋に出さない。日本列島がばしっとここにあることによって、太平洋はアメリカのものになっているんです。
 今の世界情勢は、冷戦は終わったとしても、まずソ連がロシアに戻った。ロシアは、結局は共産主義ではない、後進資本主義国にはなったけど、やはりロシア時代の領土拡張主義、南下主義、腕力を持って太平洋をねらっているんです。
 中国も同じですよね。むしろ、国内的に支配が確立したものだから、明らかに海軍を増強して、センター・オブ・ザ・ワールドになろうとしている。そしてやっぱり太平洋をねらってるように見える。
 そういうわけで、やはりアジア大陸の反対勢力に対する橋頭堡としての、アメリカの属国としての日本、楯としての日本の意味づけは大きく変わってないと思う。
 我々が主体性を持って、この強大なアメリカ、ロシア、中国の間でどう生き抜くか。日本列島を引きずって逃げられりゃいいんだけど、場所は動かないからね。
 そういう意味でも、日米安保は常時考え直していかなきゃいけないけれど、我々が体制的に一番親近感を持てるアメリカ、自由と民主主義という観点から言ったら、ロシアも中国も北朝鮮もお呼びじゃないんですよね。やっぱりアメリカとつき合っていくしかないということですよ。

伊藤
 問題はアメリカとのつき合い方ですよね。今までのつき合い方じゃなくて、もうちょっと普通のつき合い方をすることができたらいいと思います。

編集部
 日米同盟が機軸、ということについては、伊藤先生もそう考えられていますか?

伊藤
 機軸の1つだと思いますよ。要するにアジアとのつき合いだとか、EUとのつき合いだとか、外交はバランスだと思いますから。これまでの日本は軍事同盟としての日米安保条約があり、日米同盟の関係が突出していたと思いますが、もう少し多方面への配慮というのは必要だと思います。外交というのは、基本的には八方美人じゃなくちゃいけないし、交渉事ですからしたたかさも必要です。

編集部
 安全保障において、日米同盟とまた別の選択肢は考えられるのでしょうか?

伊藤
 アジアの中での集団安全保障をどう構築していくのかという問題は、これからどうしても考えざるを得ないと思います。
 北朝鮮がどうなるかわかりませんけれども、中国、韓国、台湾などとのかかわりの中で、この北東アジアの安全保障をどう実現していくのかというビジョンは、どうしてもつくっておかなければいけないと思います。

●2010年への希望と展望

編集部
 では最後に、これからの希望や2010年の展望について、まとめてください。

伊藤
 繰り返しになりますが、民主党への期待は、すごく大きいですが、それと同時に、民主党まかせにしちゃいけないとも思うんです。沖縄の基地問題にしても、本土の国民一人ひとりがもっと声を上げないといけない。沖縄にあまりにも押しつけ過ぎてきているわけですから。
 2011年の春には、統一地方選挙があります。そういった場面を通じながら、私たち国民自身がどういう選択をするのか、ということがもう一度問われると思っています。
 また、今年の夏には参院選がありますが、そこで民主党が大勝し、大きな力を今まで以上に持ち、連立も要らなくなるというふうな状況になっていったとしたら・・・権力を持つ人たちは、どうしてもそれを濫用しがちだし、強い力を持てば持つほど暴走しがちであるというのは、人類の歴史の教訓です。そこでいま一度、立憲主義の観点から、先ほどのアフガニスタンの問題なども含めて、おかしなことには批判し続ける、監視し続けるということが、今までの自公政権に対して行ってきたように、またそれ以上に重要になってくると思います。

小林
 私、もう語る気がしなくなってきているんです。自民党が利権政党で、アメリカに許された利権政党という生まれ方をしているから、ああいう、憲法をないがしろにしたアメリカの属国のような振る舞いをしてきたのはよくわかるけれども、民主党にせっかく政権交代したにもかかわらず、最近の動きを見ていると、民主党も第二自民党に露骨になりかけているような気がして、期待する気も、しかる気もなくなってきています。私としては、29歳でアメリカから帰ってきて、30歳から憲法学者をやっていて、今、60歳でしょう。フルコース語って、何回も語って、あきちゃった。何か、そういう感じですね。

 護憲も改憲も、議論に参加する気が、個人的に全然しなくなってきた。それよりも、本当に次元の低い話かもしれませんけど、やっぱり私も、この時代、この場所に縁あって生まれて、だから60になると死を意識しますね。あと、死ぬときに、これも憲法的なんですけど、我が人生、有意義であった、楽しかったと思って死にたい、幸福に生きたという実感を持って死にたいですから。そうするとこういう不毛で裏切りの多い憲法論議なんかに参加していることに何の意味があるのか。むしろ、それよりも家族と楽しく、お友達と楽しく、そして縁あって私のもとに集まった大学院生たちに、こういう立派な素材を、人材として世に送り出していく作業とか、そういう作業に打ち込むことのほうが、私自身の幸福追求ではないかと。右や左の壁に向かって語り続けることに、もう何も喜びを感じなくなっちゃったんです。それでも語り続けると、自分の性格が悪くなるようで。この問題にいら立っている自分が嫌です。そういう意味です。

 改憲論者として、30年前にアメリカから帰って日本で発言を始めて、そのうち伊藤先生のような方と共感できる、改憲論の前提にあるところは立憲主義だったんだということに行き着いて、数年、下手したら10年くらいこういう観点で語り続けてきて。基本的には、改憲派も護憲派も旧来のそれぞれの勢力が、それぞれの陣地から全く動かず、同じ旗を立てている。この言論することのむなしさみたいな、そういう状況で、今、私は、全く次元の違った幸福追求をしようと立ちどまっているというところなんです。

編集部
 小林先生は、2年前にお話を聞いたときよりも、より深く失望されているということでしょうか?

小林
 そういうこと。あのときは、政権交代をすれば、という希望がまだあったんですよ。

編集部
 まだ・・・政権交代してそんなに時間がたってないじゃないですか。

小林
 でもいくつか出てきている平野官房長官や鳩山首相の発言はひどいですよ。自衛隊の海外派兵は違憲ではないとかね。もちろん、自衛隊の海外派兵について、カンボジアに後始末に行ったのは違憲でないと、まだ言い得ると思うんです。要するに、戦いが終わった後に、下手すると、武力解除されたはずの軍隊が襲ってきたりするから自衛隊でないといけない文民活動というのがあったんですよ。そういうことを鳩山が言ったのかと思ったけど、平野がインド洋の給油についても、合憲だったなんて追認しているとしたら、これは変節ですよ。もう語ることがむなしい。夜の六本木で飲んでいたほうがいいです(笑)。

編集部
 最後のところで大きく意見が違いましたね。伊藤先生は、民主党にまだ期待。小林先生は、失望。

小林
 最近、伊藤先生とは討論にならなかったからよかった。私は、伊藤先生に期待していますから、政治家になってください。ばかな政治家に任せておけないから。伊藤先生が参議院の議員になって、憲法調査会の重要人物でいてくれれば、この国は安泰で、僕は安心してカナダに行ける(笑)。

編集部
 小林先生は、前政権の時には、失望のあまり本気でカナダ移住のための、資料を取り寄せていたそうですが・・・。そして、小林先生は、民主党ではなく、伊藤先生に期待ですか? そのお気持ちはとてもよくわかります。私も個人的な希望として、伊藤先生が都知事になられたら、東京から立憲主義教育が全国に広がっていくのではないか、と夢みていましたが・・・。いずれにしても、「マガジン9条」では、あきらめずにしつこくやっていきたいと思っておりますので、今度ともよろしくお願いします。ということで、先生方、長時間、ありがとうございました!

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