今週の「マガジン9」

 経済にデモクラシーを──。

 「時給1500円闘争」を行っているAEQUITAS(エキタス)が掲げているこのスローガン。ツイッターでは「#経済にデモクラシーを」ハッシュタグがつくられ、雨宮処凛さんのコラムでも紹介されていたので、マガ9読者にもお馴染みでしょう。元はといえば、英国在住のライター、ブレイディみかこ氏がヤフーニュースで使った表現。彼女によると、2015年12月のスペイン議会総選挙で左派政党の「ポデモス」が大躍進をした時、党首のパブロ・イグレシアス氏がインタビューで使った「経済を民主化せよ」というフレーズを、日本語に「翻訳」した表現だということです。
 マガ9学校にもゲストで来ていただいたことのある、AEQUITASの藤川里恵さん。自身を「貧困層の出身」だという彼女が、あるデモで「大切な誰かの幸せひとつ守れやしない私に、守りたい平和なんてない。全然、誰のしんどさにも間に合わないんだよ」と叫ぶように語り、「みんなで戦争しなくていいように、社会保障に、賃金に、お金を回す社会にしていきませんか」と切々と訴えたスピーチがあります(こちらで文字起こしが読めます)。これが現在の少なくない若者がおかれている現状であり、当事者の生の声なのではないでしょうか。
 ブレイディみかこ氏の新著『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』(太田出版)には、「日本の左派が経済問題を扱うのを嫌がるのは『反戦、人権、環境問題』は左派が語るべき高尚なテーマだが、経済はどこか汚れたサブジェクトであるかのように扱われており、金の問題は自民党がやること、みたいな偏見があるのではないか」との指摘もありますが…そんなイメージ、確かにあるかもしれません。しかし藤川さんの言葉を引くまでもなく、経済の正しい分配を考えることこそ、今の政治の急務であり、もっとも大切な命題ではないんでしょうか。

 ジャーナリストの斎藤貴男さんは、今週掲載のインタビューで次のように語っています。「会社員も含め、自分で確定申告を行うのがグローバルスタンダード。英米もみんな自分で申告している。ちなみに敗戦時、日本の税制は『あまりに封建的。市民が自分で確定申告をするのがデモクラシーだ』と、GHQにさんざん批判された。しかし大蔵省は抵抗し、『日本人はバカだから、自分たちで申告なんてできない。そんなことしたらみんな脱税をする』という意味の主張をした」。この「お上の感覚」が今もなおずっと続いており、税制による統制が効いているということではないでしょうか。

 次回のマガ9学校では、斎藤さん、経済アナリストの森永卓郎さん、「税」に詳しいお二人のお話が聞ける機会を作りました。森永さんは「リベラル勢力は、もっと経済を勉強するべきですよ」とコラムで書かれています。日々、支払っている消費税を中心に、「税とは何か?」を自分たちで理解し、考え、今後の税制のあり方を提案していくこともまた、「経済にデモクラシーを!」ではないのでしょうか? ぜひ、ご参加ください。

(水島さつき)

 

  

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