マガ9備忘録

沖縄県東村高江のヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設にまつわるSLAPP訴訟は、現在最高裁判所に上告中だ。先日、この受理を求めての最高裁への要請に同行させてもらった。

1996年のSACO合意に基づいた米軍北部訓練場の一部返還に伴い、代替施設としてヘリパッドの建設が計画されたが、完成すると高江の集落を取り囲むようになる。これではたまらないと住民が座り込んだ反対運動に対して、国は争点を「ゲート前の通行妨害」に矮小化して訴えたのだ。

1審那覇地裁での判決では、被告2人への判断が分かれ、なぜ国が住民を提訴したかという背景に踏み込まぬまま1人に妨害行動の禁止を命じた。福岡高裁那覇支部でも、正面からは何も答えず、何をもって妨害とするかの基準も示さぬまま控訴棄却となった。

これを受けて最高裁に上告したが、まだ判断は示されていない。この上告受理を求める署名を携えての要請だったのだ。西門に集合して最高裁の建物の中に入る。担当する訟廷書記官補に第4次署名4603筆を提出し、集まった13人が皆それぞれの思いをもって懸命に要請した。

訟廷書記官補も誠実に応えてくれたが、ここから先が難関なのだという。彼に手渡した署名が、担当調査官や書記官、そして裁判官まで目を通してくれるかどうかは分からないとのこと。裁判官の自由な心証を侵さないようにするためなのだろうが、何とも堅苦しい印象は否めない。

映画『標的の村』の全国・海外での上映や、「ゆんたく高江」などのイベントによって、沖縄県内でも無名だった「高江」の名は次第に知られるようになった。昨年9月から集めた署名は全部で2万筆を超え、高江を応援する人々の輪は確実に広がっている。

その高江では、とんでもないことが起きた。3月17日16時10分頃、まだ米国に引き渡していないN-4-1地区ヘリパッドに、米海軍MH60ヘリコプターが着陸したのだ。国家主権にかかわる問題だろう。

しかし19日、沖縄防衛局は「米軍からヘリコプター1機が不注意により着陸したと回答があった」と公表したのみ。再発防止策も「米側に注意を促した」と木で鼻を括ったような返答だった。

それに先立つ11日、ヘリパッド建設工事で発生した大量の残土を、沖縄防衛局が県の赤土流出防止条例に違反して、無届けのまま別の場所に運んでいたことが発覚している。

一事が万事、この調子だ。地元住民の意思を無視して工事を強行し、条例違反のような不当な手法を重ねている。米軍が絡んでいるから、僻地だからと、住民の基本的人権を蔑ろにしているヘリパッド問題の実相を、最高裁は直視しなくてはならない。(中津十三)

 

  

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その27)最高裁は
「高江」の実相を直視せよ
」 に1件のコメント

  1. ピースメーカー より:

    >国家主権にかかわる問題だろう。

    いつもお馴染みの親米体制批判の為の「国家主権にかかわる」という批判発言ですが、この問題の根本的解決は、米国はおろかあらゆる国の力に依存しないで自国の独立を達成した日本の誕生によってなされるものです。
    「自らの安全を自らの力によって守る意思をもたない場合、いかなる国家といえども、独立と平和を期待することはできない。 なぜなら、自らを守るという力量によらずに、運にのみたよるということになるからである。 『人間社会では、自らの実力に基礎をおかない権勢や名声ほど頼りにならないものはない』(タキトゥス)とは、いつの世でも応用可能な賢い人々の考えであり、評価であったと思う。」とマキアヴェッリは論じましたが、体制批判の道具として国家主権を論じる人々は、国際社会をそこまでドライに捉えず、日本が実力を保有することを忌避します。
    しかし21世紀においても、「自らの実力に基礎をおかない」ウクライナは、ロシアに容易くクリミアを奪われました。
    日本における「独立と平和を期待することができる実力」とは何で、それをどの様のに獲得していくべきかを論じられない人々がいくら「国家主権」などと連呼しても、価値観の違う人には違和感しか与えないのはまさにそこに問題があり、それを避け続ける限り、米軍基地問題は「運にのみたよる」しかない問題となり続けるのです。

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