- 特別企画 -

【スタッフコラム】

福島原発さいたま訴訟に思うこと

福島原発さいたま訴訟を支援する会
北浦恵美

 7月に福島原発さいたま訴訟が始まった時、スタッフコラムとして報告させていただきました。その続報です。去る9月24日午後3時さいたま地裁にて福島原発さいたま訴訟第2回期日が行われました。第2回期日では、原告側代理人の吉廣弁護士の意見陳述がありました。津波の予見はできなかったとする東電らに対し、O.P.(小名浜港工事基準面)+10mを超える津波で電源喪失に至る危険性について、平成14年の段階、また、どんなに遅くとも平成18年には東電が認識していた事実を指摘し(国会事故調の報告からも明らかになっています)、にも関わらず、3・11に至るまで国も東電も対策を怠っていたという重大な過失を厳しく糾弾するものでした。
 これに対し、東電の代理人から、「『責任論』は必要がない、早く『損害論』に入ってほしい」という発言がありました。
 裁判終了後に行われた報告集会での弁護団からの説明によると、「東電は原子力損害賠償法で、無過失責任を負っている。このため、責任があろうがなかろうが賠償はする」ということを言っているとのこと。
 一見、煙にまかれてしまうような主張ですが、しかし、これは被害者の主張を門前払いしたうえで、政府が設けた基準を踏まえて賠償さえしていればよしとするもの。
 慰謝料の算定にも、東電が犯した過失の重大さ、その責任の大きさは大きく影響するものであり、何よりも、このような事故を繰り返さないために国と東電の責任を明らかにさせることこそ、原告らが求めていることです。

 あくまでも国と東電の重大な過失と責任を明らかにさせようとする原告側弁護団に対し、無責任論(!?)を主張する東電、のらりくらりの国、裁判所との協議の結果、次回期日以降の日程が下記のように決められました。

 12月10日 (水) 午後3時
  2月18日 (水) 午後2時30分
  4月22日 (水) 午後2時30分

 裁判終了後に行われた報告集会では、福島からこの裁判傍聴のために駆けつけた福島原発避難者訴訟原告団(事務局長)金井直子さんらから福島の訴訟の状況、原告団の思いをお聞きすることができました。
 静かな口調で語られる国と東電に対する憤り、裁判への思いは、切々としたものでした。穏やかな福島での暮らしを返してほしい。それが叶わない悔しさ、事故を2度と繰り返さないことを求める思い、そして、賠償を求めることに対する心ない中傷の言葉に傷ついてきたこと、その中で裁判を支援する人たちがいることが心の助けになっていること、などの思いが語られました。

 この訴訟が事故の原因究明、国と東電の重大な過失を明らかにさせるための一歩であることを改めて感じました。
 アメリカでは大企業が犯した不法行為に対し、「制裁」や「抑止(予防)」の目的でしばしば、多額の懲罰的損害賠償が課される判決が出されます。営利が関係する不法行為においては、企業が欠陥を直すよりも賠償を支払う方がコスト的に利益をもたらし、そのことが被害の反復を招きかねないことが指摘され、これを防ぐため、多額の懲罰的賠償によって社会的制裁を課すことが認められているといいます。
 日本では未だ認められていないこの懲罰賠償。いえ、懲罰賠償どころか、今回の国と東電のとんでもなく多数に対する不法行為に対して、まったく不十分な補償がまかり通っている現実があります。
 そんな現実に対し、そして当然取るべき安全対策をコストカットのために怠っていた国や東電に対し、異議を申し立てる裁判です。
 事故原因究明と重大な過失を明らかにさせる作業が欠かせないものであることを裁判所が認識し、この訴訟が真の被害者救済のための手続きとなることを願います。
 被害者の声に耳を傾けることで、私たちの未来を創っていくことができるのだと思うのです。
 そして2015年1月19日には、さいたま訴訟の第2次提訴を予定しています。先行している第1次提訴を合わせると原告の人数は11世帯37名。今回提訴される方の中には、いわゆる自主避難、幼い子どもへの健康被害を防ぐために、やむなく埼玉へ避難した方がいらっしゃいます。わたしたちは、避難指示区域内からの避難か、自主避難かに関わりなく、東電と国が正当な賠償を行うよう、求めていきます。
 次回期日は12月10日(水)午後3時。さいたま地裁にて行われます。ぜひ多くの方と共にこの裁判の傍聴に参加し、原告の思いに寄り添いたいと思っています。
 どうぞ足をお運び下さい。

≪福島原発さいたま訴訟第1回口頭弁論及び報告集会≫
とき:12月10日(水) 午後3時  さいたま地裁101号法廷

是非傍聴にご参加ください!
※傍聴券が配られる予定です。午後2時半前までにさいたま地裁本館前においでください。
※裁判終了後、午後3時45分頃から弁護団主催の報告集会があります。

場所:埼玉弁護士会館
内容:口頭弁論期日の説明、原告側の主張の概要

〈これまでの関連コラム〉
→ 2017/03/15 福島原発さいたま訴訟報告(10)
→ 2016/08/03 福島原発さいたま訴訟報告(9)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(8)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(7)
→ 2016/01/20 福島原発さいたま訴訟報告(6)
→ 2015/11/18 福島原発さいたま訴訟報告(5)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(4)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(3)
→ 2015/04/15 福島原発さいたま訴訟報告(2)
→ 2015/02/11 福島原発さいたま訴訟報告(1)
→ 2014/11/26 福島原発さいたま訴訟に思うこと
→ 2014/05/28 福島原発さいたま訴訟、第1回期日とその支援のこと

 

  

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