マガ9備忘録

「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し、海兵隊の撤退を求める県民大会」に参加するため、この土日、沖縄を訪れた。私は沖縄県民ではないが、沖縄に心を寄せるヤマトゥとして。梅雨明けした沖縄の日差しに焼かれる2日間だった。

「きょう県民大会」を伝える当日(19日)付と、「怒り、悲しみ限界 6万5000人結集」を報じる翌日(20日)付の紙面で異彩を放ったのが、琉球新報連載の4コマ漫画『がじゅまるファミリー』だ。

この漫画については3年ほど前の小欄で、「地方紙の連載漫画を その地方の漫画家が描くということ」と題して、その地に根ざし地元の人から信頼と支持を受ける漫画として、沖縄タイムス連載の大城さとしさん作『おばぁタイムス』とともに取り上げた。

作者は沖縄の漫画家・ももココロさん。主人公の一家は元気な小学生マンタ君(10歳)を中心にした家族8人で、いつもは楽しく笑いを誘う新聞4コマ漫画だが、この2日間は従来の新聞4コマ漫画という表現の枠を超えていた(引用の画像は、クリックで拡大されます)。

19日付は「アカイナミダ」。闇の中を飛ぶ、光を放つ蝶。ウチナーグチで蝶は「ハーベールー」といい、亡くなった人の魂がハーベールーに誘われて戻ってくると言われている。この蝶が飛び去った後、闇の中、赤い涙がひとしずく落ちる。

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そして20日付は「涙の花…」。闇の中、雨が降り始める。次第に大粒になった雨が、犠牲者を悼む花束を濡らしていく。

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新聞4コマ漫画のある社会面には、沖縄の矛盾が噴出したような事件が多く載る。そうした中で「楽しく」「笑いを誘う」漫画を毎日描くのは、相当つらいに違いない。そうした普段の調子をかなぐり捨て、県民とともに泣く「詩」なのだと、私は思った。

作者のももココロさんは2010年に、主人公のおじぃが沖縄戦の強制集団死(集団自決)体験者だったという4コマ漫画「おじぃの沖縄戦」を慰霊の日前後3回にわたって掲載し、読者に衝撃を与えたことがある。

この2日間の「がじゅまるファミリー」も、人々の心に深く刻まれたことだろう。

(中津十三)

 

  

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