柴田鉄治のメディア時評


その月に書かれた新聞やテレビ、雑誌などから、ジャーナリスト柴田さんが気になったいくつかの事柄を取り上げて、論評していきます。

shibata

 日本はいま、中国、韓国、ロシアと領土紛争を抱えている。民家に例えれば、隣近所と軒なみ境界争いをしているようなものだ。民家なら引越せば済む話だが、国家はそうはいかない。
 この領土紛争にかかわる大きなニュースが今月、二つあった。一つはオバマ米大統領が来日して、「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲に入る」と明言したこと、もう一つは、来年度から使われる小学校の教科書に領土問題が一斉に記載される、というニュースである。
 尖閣諸島と日米安保の問題は、かつてクリントン国務長官も明言していたことでもあり、そんなに大ニュースだとは思わないが、大統領が明言したのは初めてということで、メディアは今回のオバマ訪日の最大の成果であるかのように、大々的に報じた。
 むしろ、これが大ニュースになったのは、TPP交渉がまとまらなかったことなど、他に目玉がなかったためだろう。領土問題でのオバマ大統領の発言でいえば、日米安保の適用と同時に述べた「領土権については特定の立場はとらない」という見解と「この問題がエスカレートし続けるのは大きな過ちだ。日本と中国は信頼醸成措置をとるべきだ、と安倍首相に申し上げた」という言葉こそ、大きく報じるべき内容だったのではあるまいか。
 つまり、オバマ大統領は日中の領土紛争に対して日本を支持したというより、日本をたしなめたというべきだろう。
 それでも中国はこのオバマ発言に激しく反発し、「中国の領土であり、中国軍はこれを防衛する能力を完全に有している」と国防省の報道官が述べている。要するに、日米首脳会談は領土紛争の解決に向けて前進した部分は全くなかったのだ。
 もう一つの小学校の教科書への記載だが、これは安倍政権の領土教育重視の意向を先取りして、教科書会社が一斉に取り上げたというのだから驚く。内容は、尖閣諸島も竹島も日本固有の領土だというだけのものから、なかには「中国船が領海侵入を繰り返している」とか「竹島は韓国が不法占拠している」と書いたものまで、政府の見解をそのままなぞったものがほとんどだという。
 このニュースに対して、読売新聞と産経新聞は社説に取り上げ、「意義のある一歩だ」と高く評価する論評を掲げた。「国際社会で日本の立場を堂々と訴えることのできる人材育成につながる」というのである。
 日本の立場を国際社会に訴えれば解決するというなら、これほど簡単なことはない。さすがに朝日新聞の社説は、これではだめだ、「おなじ取り上げるならもっとしっかり書いてはどうか」と提言し、「私たちが育てるべきは身びいきなサポーターではなく、問題の解決に動くプレーヤーであるはずだ」と書いているが、解決策については何も触れていない。いや、朝日だけでなく解決策を提言したメディアは全くなかった。
 そこで思い出すのは、日中国交回復したあと中国の鄧小平氏が来日して語った「領土問題の解決は次世代の知恵に任そう」という言葉である。あれから30余年、いま両国とも次世代のリーダーが率いているが、解決どころかますます悪くなっている。そうなれば、次の次の世代の知恵に期待するほかないが、こんな教科書をつくっていて解決の知恵は生まれるのだろうか。

解決に南極条約の知恵を!

 領土紛争の平和的な解決策としては、①どちらかが譲る②面積半分論③共有領土とする、などが考えられよう。①は、かつて朝日新聞のある記者が署名入りのコラムで「竹島は『友情の島』として韓国に譲ってはどうか」と書いて右翼の猛攻撃を受け、それ以来誰も言わなくなっている。
 ②の面積半分論は、中国とロシアの領土紛争はそれで解決しており、有効な解決策ではあろうが、北方領土はともかく、尖閣諸島や竹島は半分に分けるほどの面積はない。
 ③による解決例の一つとして挙げてもいいと思われるのは、1961年に発効した南極条約である。日本の40倍もある南極大陸は、かつて英・仏・ノルウェー・オーストラリア・ニュージーランド・アルゼンチン・チリの7か国が領土権を主張しており、主張が重なり合った地域では、旗の奪い合いなどの紛争もあった。
 それが、国際地球観測年(IGY=1957~58年)の終わったときに、「南極の軍事利用を禁止する条約をつくろう」と米国が提案し、それにソ連も乗って、反対する領土権主張7か国を説得して制定にこぎつけたのである。
 その時の南極条約の知恵は、「領土権は放棄しなくていいから、凍結して、どこの国でも自由に科学観測のできる地にしよう」というものだった。つまり、人類全体の共有領土にしようという考え方だ。
 この南極条約の制定に日本も大きな役割を果たしたといわれている。戦前、白瀬隊の探検を論拠に南極に領土の請求権があると主張していた日本が、戦後のサンフランシスコ講和条約でそれをいち早く放棄したことが説得力になったというのである。
 この南極条約の知恵を尖閣諸島に応用すれば、日中両国とも領土権の主張を放棄しなくていいから一時凍結し、両国で共同開発を進めたらどうか、というものになろう。小さな島をめぐっていがみ合うよりは、多少譲っても友好を推進するほうがプラスは大きいはず、という考え方だ。
 この「領土紛争に南極条約の知恵を!」という私の考えは、私が南極観測隊に同行して帰国した2006年に、朝日新聞に投稿して大きく掲載してくれたのだが、残念ながら反響はなかった。いま領土問題が一層深刻化しているときだけに、ここで、もう一度、記しておきたい。

混迷の度を深めるSTAP細胞騒動!

 先月も取り上げたが、理研の小保方晴子ユニットリーダーらが「世界的な大発見」と発表したSTAP細胞が、その後、論文に捏造や改ざんがあったとして大騒ぎになっている問題は、今月に入って当の小保方氏や上司の笹井芳樹氏の記者会見、さらには論文の不正を摘発した理研の調査委員会の委員長の論文にも「改ざん」の疑いが出て委員長を辞任するなど、ますます騒ぎは大きくなり、混迷の度も深まっている。
 小保方氏の会見は、発表したときの笑顔とは打って変わって、終始、硬い表情で、ときどき涙を拭いながら、しかし、はっきりした口調で質問にも答えていた。
 たとえば、「STAP細胞はあるのか、ないのか」という質問に対して、ひときわ力を込めて「あります!」と答えた場面は印象的だった。さらに、「私は悪意を持って論文を書いた事実はなく、STAP細胞は何度も確認されている真実なのだ」「論文を撤回したら、間違っていたと世界に認めることになるので、撤回はしない」などと語った。
 一方、質問に真正面から答えなかった場面もあった。実験のコツやレシピを公開する気はないか」という質問には口をにごし、「小保方さん以外にSTAP細胞を確認した人はいないのか」という質問には「1人いるが名前は言えない」とはぐらかした。
 会見は予定をはるかに超えて2時間半、結局、決定的な新事実は出なかったが、この会見を報じたメディアの扱いは、驚くほど大きかった。テレビはNHKが予定番組を吹っ飛ばして生中継を1時間余もつづけ、民放各局もニュースの時間以外にもさまざまな番組に組み込んで詳しく報じ、新聞も、日経新聞を除いて主要紙すべてが一面トップ・多面展開して大々的に報じた。
 テレビは情感を、新聞は論理を伝えるのに適したメディアだとよくいわれるが、その特徴がよく表れたケースだった。テレビは小保方氏の顔を映し続け、「ウソをついている顔かどうか、判断は視聴者に任せる」という姿勢だったのに対し、新聞は小保方氏の言葉を伝え、「科学的な根拠は示さなかった」とテレビよりは厳しい姿勢だった。
 興味深かったのは、翌日の朝日新聞の天声人語、読売新聞の編集手帳など主要6紙の一面コラムにそろって取り上げられ、競作のような形になったことだ。これほどそろうことはめったにないことだから、「どれが一番うまいか」比べ読みしてみることを勧めたい。
 その翌週にあった笹井氏の会見も、STAP細胞の作製には関与しなかったと釈明したうえ、「論文は撤回すべきだが、STAP細胞は検証する価値のある有力な仮説であり、また、その存在を否定したら説明できない現象が確かにある」と語っただけで、決定的な新事実は出なかった。だが、メディアはまたまた大きく報じた。
 ところが、騒ぎはこれだけでとどまらなかった。小保方論文に不正があったと断定した理研の調査委員会の石井委員長の過去の論文にも「改ざん」のような操作があったという指摘が出て、騒ぎはさらに広がった。
 小保方氏の論文の「改ざん」と石井氏の論文の「改ざん」を比べて、どこがどう違うのか、と詳しく画面で比較してみせるテレビ番組まで登場したのだから、驚くほかない。
 こうした騒動を見ていて、私はふと、80年代にあった三浦和義氏の「ロス疑惑」事件を思い出した。あのとき、どのチャンネルを回しても「ロス疑惑」をやっているという状況に、当時、「事件報道の芸能化ではないか」ということがしきりに言われた。それになぞらえて今回のSTAP細胞騒動を見てみると、なかでもテレビや週刊誌の報じ方は、まさに「科学報道の芸能化」ではないかという思いが浮かんでくる。
 確かに「割烹着姿の若いリケジョの大手柄か、大失態か」という「芸能化」の要素があることは認めるが、ことは日本の科学技術の信頼性が問われる大問題なのである。興味本位の芸能化に流されることなく、真正面から正確に的確に報じてもらいたいと、メディアにあらためて伝えておきたい。

 

  

※コメントは承認制です。
第65回 領土紛争の解決にメディアは知恵を出せ」 に10件のコメント

  1. magazine9 より:

    オバマ大統領の発言については当初、尖閣諸島問題について「事態をエスカレートさせるのは『重大な誤り(a profound mistake)』」と語った部分を、多くの日本メディアが「正しくない」と訳して報じたことを問題視する報道もありました(琉球新報など)。インターネットでもかなりの新聞記事が無料で読めるようになっている今、柴田さんが「比べ読みをおすすめ」しているSTAP細胞の一件だけではなく、気になった報道は少なくとも数紙を比較してみる、のを基本姿勢にすべきかもしれません。

  2. ピースメーカー より:

    >この「領土紛争に南極条約の知恵を!」という私の考え

    個人的に完全に間違ったものではないと思いますが、今回の柴田鉄治さんの論理の欠点の一つが「尖閣諸島」にのみ限定していることであり、なんだかんだとおっしゃっていますが、結局は「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲に入る」というオバマ発言に仰天して、条件反射的に「南極条約の知恵」というのを出した感じがします。
    「尖閣諸島」だけでなく、「竹島」「北方領土」、そしてシーレーンという日本の国益を左右する「南沙諸島」の問題も、すべて「南極条約の知恵」というシロモノを応用させられると、柴田さんはなぜ論じられないのでしょうか?
    そして最大の欠点は、これらの問題の根本は各々の国々のナショナリズムが引き起こしたのであり、「領土問題」(あるいは「歴史認識」や「戦争責任」)も、「原因」となるナショナリズムが引き起こした「結果」にすぎないということを柴田さん(だけでなくほとんどのリベラルな知識人)が見ていない、あるいは見ようとしないということです。
    「歴史」や「戦争責任」が問題ならば、フィリピンやベトナムの領土・領海を中国に奪われる道理はありません。
    中国がナショナリズムを抑え、「南極条約」的な国際秩序を優先するならば、そもそも領土問題は発生しません。
    つまり領土問題は、各国のナショナリズムを抑止させる知恵を提示できない限り、解決できない問題なのです。

  3. ピースメーカー より:

    >領土問題でのオバマ大統領の発言でいえば、日米安保の適用と同時に述べた「領土権に
    >ついては特定の立場はとらない」という見解と「この問題がエスカレートし続けるのは
    >大きな過ちだ。日本と中国は信頼醸成措置をとるべきだ、と安倍首相に申し上げた」
    >という言葉こそ、大きく報じるべき内容だったのではあるまいか。

    magazine9 さんのコメント投稿にあるように、左側の人々は上記のオバマ発言を「軽視している」と問題視していますが、逆に右側から「軽視している」として問題視されているのが「米・比軍事協定調印」という報道です。
    http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140428/k10014079581000.html
    このNHKの記事にもありますように、フィリピンから米軍が1992年に全面撤退したのは、冷戦終結に加えてフィリピン国内のナショナリズムの高揚によってもたらされたもの、そして今回の「米・比軍事協定調印」も、中国に領土・領海を奪われるというフィリピンのナショナリズムを刺激した結果、もたらされたものといえるでしょう。
    要するに、米軍を追い出したのも回帰させたのもすべてフィリピンのナショナリズムが「原因」ということなのです。
    今回の報道は、ナショナリズムという存在を直視しなければ国際問題を解決できないということを立証しました。

  4. 憲法第9条の旗?立てた漁船に、日本の市民運動と中国の民主化運動の活動家が乗り込んで、ジョン・レノンのイマジンを大音響で流しながら、尖閣諸島に上陸して、愛と平和のためにベッド・インして、その模様をyoutubeか何かで全世界に同時中継して、「空を見上げてごらん。尖閣諸島はどの国の領土でもありません。世界は一家、人類は皆兄弟!」とかやればいいんじゃないの?
    そういうアイディアはダメ?? 松本さんとかに相談したら、案外簡単にメンツ集まりそうな気がするけどな〜w

  5. 宮坂亨 より:

    南極条約のアイディアは参考になりますね。南極のように「どこの国のものでもない地域」はあってもいいと思います。50年間帰属が決まっていない地域は国連の天領にするようにするといいなぁ。将来的には世界連邦を目指そうよ。

  6. 多賀恭一 より:

    5月下旬から6月上旬にかけて、尖閣諸島周辺で中露による合同海上演習がある。
    中国の狙いは明白だ。このどさくさにまぎれて尖閣諸島に上陸、五星紅旗を立てることだ。
    自衛隊が強引に阻止すれば、中露海軍との海戦になり、日本に少なくない死者が出て、
    憲法9条改悪の世論が高まるだろう。
    日米の政府が自衛隊に自制を支持すれば、日本の国家主権が踏みにじられることになり、
    やはり、憲法9条改悪の世論が高まるだろう。
    日本国憲法9条最大の危機である。
    良識を持つものはあらゆる外交チャンネルを通して、中国の尖閣上陸を止めさせるなければならない。

  7. L より:

    ↑すでにベネトンがやってるよ。http://www.youtube.com/watch?v=arSUUCgDwqs
    http://air.ap.teacup.com/taroimo/1336.html

  8. 松宮 光興 より:

    領土問題は、双方が領有権を主張し続ける限り絶対に解決できないと思います。その点、柴田さんのご意見は傾聴すべきであり、政府は具体策を検討すべきだと思います。
    このコーナーで、北方領土や竹島についての記述がないことを批判する意見もありますが、日本が実効支配していない島について、主導権を持って交渉することはできないと思います。尖閣について共同での管理を実現した上で、韓国やロシアと話し合いを始めなくてはならないと思います。
    ナショナリズムを直視すべきとの意見もありましたが、侵略の「前科」があり、現在実効支配している日本が、ナショナリズムを放棄することこそ、相互理解のスタートだと思います。
    中国は日本の10倍の人口を抱え、遙かに広大な国土を持っていますが、了解の面積は日本より狭いのです。南沙諸島を含め、中国が領海に拘る理由を理解した上で、交渉戦術も考えるべきでしょう。

  9. ピースメーカー より:

    松宮光興さんのご意見を拝見しましたが、率直に言って詭弁だと思いました。
    日本の過去は「侵略」と定義され、ナショナリズムの放棄や中国への領土割譲を「政府」に要求するのに、フィリピンやベトナムの人々からすればあきらかに「侵略」にもかかわらず、「中国が領海に拘る理由を理解」しろとおっしゃっているのですから、フィリピン人やベトナム人が松宮論法によって平和を期待することはありえないでしょう。
    しかも「中国が日本の10倍の人口を抱え、領海が日本より狭いから、領海の確保に拘わっている」という説明、言い換えれば、「国力が国境や排他的経済水域を決めるという立場であり、中国が経済成長を続ける限り、活動可能な地理的範囲が広がるという極めて危険な論理だ。これを聞いて、かつてのドイツにおける『レーベンスラウム(生存圏)』という考え方を思い起こす人もいるかもしれない(by安倍晋三)」ではないでしょうか?
    http://www.47news.jp/CN/201010/CN2010101901001111.html
    私が「南極条約の知恵」というのを「個人的に完全に間違ったものではない」と述べたのは、領土紛争を抱えるどの国も、国力や歴史的背景如何に関わらず、「国際的不和の舞台又は対象とならないことが全人類の利益となる」という目的の為に全ての国を公平に扱うからであり、「侵略の前科」なる建前で、一方の国を差別的に扱うことは、結局は「力の有無」で一方の国を差別的に扱うと何ら変わらず、南極条約の前提から完全に逸脱してます。

  10. hiroshi より:

    あらゆる領土紛争に南極条約の知恵を当てはめる議論は、拙速すぎる様に思います。
    尖閣諸島の領有をめぐる経緯(ウィキペディアより)現地調査の結果、いずれの国の支配下にもないと確認した日本政府は、1895年(明治28年)に尖閣諸島を日本の領土に編入することを閣議決定。同年、尖閣諸島は実業家古賀辰四郎に期限付きで無償貸与される。1880年代後半から1940年(昭和15年)にかけ、尖閣諸島には日本の琉球諸島の住民が建設した船着場や古賀が開設した鰹節工場などがあった。
    中国と台湾が領有権を主張し始めたのは、1968年(昭和43年)に尖閣諸島付近海底調査で石油や天然ガスなどの大量地下資源埋蔵の可能性が確認されて以降である。

    中国は1970年代になるまで領有についての異議を唱えたことがないのと、「日清戦争で奪った」という主張も歴史的に成り立たないので、先ずは領有の正当性を説く外交努力をすべきではないかと思います。
    紛争問題にしてしまえば、共同開発に持ち込めるというメッセージにも取られ、沖縄も共同開発するようになりかねないのではないでしょうか?(考えすぎかなー?)

    竹島の領土問題(ウィキペディアより)
    日本の主張の概略竹島は江戸時代には既に日本人に利用されており(当時の呼称は「松島」)、無主地の竹島は1905年(明治38年)1月の閣議決定で島根県隠岐島司の所管となっている。しかし、第二次世界大戦後の1952年に、韓国の李承晩大統領によって竹島が韓国の支配下にあると一方的に宣言し、武力によりに日本から奪い取っている。李承晩の通告した李承晩ラインは、後の日韓基本条約によって廃止されたにも拘わらず、韓国はその後も不法に軍事占領を続けている。
    韓国の主張の概略独島(竹島)は、古来より韓国の領土であり、古代には于山国として知られていた。1900年には石島として鬱陵郡の管轄となっている。1905年の日本の竹島編入は侵略戦争の始まりであり無効である。日本との間に領土問題は存在しない。従って、国際司法裁判所に付託する必要はない。

    日本政府が竹島を日本領として島根県に編入(1905年)したのは、韓国併合(1910年)の前で、国際法的に根拠があると思いますが、この時代は日本が韓国を植民地化していく過程で、韓国の外交権は奪われ、韓国は異議を唱えることが出来なかったと考えられます。先ずは韓国併合の反省に立ち外交交渉の場を作る努力をすべきではなかと思います。

    「尖閣諸島」「竹島」「北方領土」各々歴史的経緯や地理的状況が違うので、すべてを「共同管理」や「歴史認識」や「戦争責任」や「ナショナリズム」で語り、解決するのには無理があるように思いました。

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柴田鉄治

しばた てつじ: 1935年生まれ。東京大学理学部卒業後、59年に朝日新聞に入社し、東京本社社会部長、科学部長、論説委員を経て現在は科学ジャーナリスト。大学では地球物理を専攻し、南極観測にもたびたび同行して、「国境のない、武器のない、パスポートの要らない南極」を理想と掲げ、「南極と平和」をテーマにした講演活動も行っている。著書に『科学事件』(岩波新書)、『新聞記者という仕事』、『世界中を「南極」にしよう!』(集英社新書)ほか多数。

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