こちら編集部

 自由法曹団の田中隆弁護士から、以下の声明文の拡散依頼が送られてきましたので、ここに貼り付けておきます。なお、昨年のものですが、法律家が指摘する「秘密保護法」の問題点についての講演内容、こちらにもまとめてあります。この時からよい方向への修正は、ほとんどなされなかったのではないでしょうか…。

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 国会を取り巻く怒号のなかで秘密保護法案が強行採決されました。委員会の「修正案」審議はわずか2時間、本会議の開会は6時間近く遅れ、提出会派が退席し、与党からも造反者が出るというまれに見る椿事のなかの強行でした。その採決が世論に歓迎されていないことは、昨夜来の報道でも明らかです。
 「修正」案はおよそ法規とは考えられない奇奇怪怪なもの、だれからも理解されないものになり果てました。
 この恥ずべき法案を参院で廃案に追い込むために、がんばりましょう。

田中 隆

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秘密保護法案の強行採決に抗議し、廃案を求める

1 見せかけの「修正」と強行採決の暴挙

 11月26日、自民党・公明党・みんなの党は、秘密保護法「4党共同修正」案を、衆議院安保特別委員会と本会議で強行採決した。維新の会は採決の際には退席したものの、「共同修正」を行って衆議院通過に加担した。
 秘密保護法案は、パブリックコメントで80%近い反対を受けた法案であり、大多数の国民が反対ないし慎重審議を求めてきた法案である。また、日本新聞協会などのマスコミ界や、日本弁護士連合会をはじめとする法曹界はこぞって反対を表明し、反対の声は学者・研究者、文化人、NGOなど各分野・各層に広がり、海外にも広がった。
 3週間足らずの法案審議を通じて、法案の欠陥や問題点が白日のもとにさらけだされ、担当大臣の答弁が二転三転するなど迷走はだれの目にも明らかになった。迷走の末にまとめられた「4党共同修正」案は、根幹にまったくメスを入れないどころか、指定期間を60年に延長して「永続秘密」まで認め、権限も責任も明確でない首相の関与を認めて「秘密の闇」をいっそう深くするなど、およそ「修正」と言える代物ではない。
 「修正」を口実にした採決強行は、国民的な反対におびえて「逃げ切り」をはかろうとしたものにほかならない。
 全国2000名の弁護士で構成する自由法曹団は、「数の力」をもって国会の役割を放棄し、民意を蹂躙した強行採決の暴挙に、怒りを込めて抗議する。

2 秘密保護法が生み出す国と社会

 秘密保護法案は、
 ① 行政機関の一存で広範な情報を特定秘密に指定し、
 ② 特定秘密の取扱いや提供を厳しく制約して国会や裁判所からも秘匿し、
 ③ 漏えいや「管理を害する方法での取得」などを重罪に処する
という構造を持った法案である。
 法案では、すべてにわたって、行政機関の「秘密の独占」が優先され、「国権の最高機関」である国会の審議権や、裁判所が行使する司法権や、報道・取材の自由や国民の知る権利は、「秘密の独占」に従属するものとされている。
 戦力と交戦権を否定した日本国憲法のもとで、軍事秘密は仮に認められても極めて厳しく限定されなければならない。にもかかわらず、法案は、「ツワネ原則」などの世界的標準よりはるかに立ち遅れたもので、あらゆる面で憲法を蹂躙するばかりか、情報公開を進めようとする世界の趨勢に逆行するものである。
 秘密保護法案強行のただひとつの理由が、「外国との情報共有」にあることは、政府みずからが認めているところである。国会や裁判所などへの提供を拒み、国民やメディアのアクセスを遮断する特定秘密が、行政機関の一存で外国に提供されることになっているのは、そのためである。
 その「外国」が、日米軍事同盟によって結ばれたアメリカ合衆国を意味することは、明らかである。国民や国会よりアメリカを優先する法案が、国家安全保障会議(日本型NSC)や「集団的自衛権」容認の動きと連動して、アメリカの戦争へのよりいっそうの加担を生み出す危険は大きい。
 「秘密の独占」と戦争態勢のために、公務員や労働者は「適性評価」による分断と監視にさらされ、特定秘密を取り扱った公務員らは、終生漏えい罪や過失漏えい罪におびえて暮らし続けなければならない。メディアや平和運動、市民運動などは、取得罪や共謀・教唆・扇動罪による弾圧の危険にさらされながら、活動を続けることになる。
 その社会が、公安警察が跋扈する社会になり、監視や密告に彩られた社会になることは、火を見るよりも明らかである。
 秘密保護法が生み出すのは、一部の者が秘密を独占して他を排除する「情報寡占」のシステムであり、「集団的自衛権」を口実にアメリカの戦争に参戦していく国であり、公安警察と監視・密告が横行する社会である。
 そのような国や社会になることを、自由法曹団は断じて許すことはできない。

3 参議院で廃案に

 自由法曹団は、法律家として法案の検討を行い、緊急意見書「徹底解明 秘密保護法案」(11月5日付)、第二意見書「秘密保護法/日本版NSC 山積する問題」(11月19日付)を発表してきた。2冊の意見書では、構造や問題点、構造上の欠陥、法文の解釈と運用、発生する事態などを、全面的に解明・指摘した。
 衆議院が「審議を尽くした」と言えるためには、少なくもその審議がこれらの問題を全面的に検討し、明確な解明と回答を与えるものでなければならなかった。
 だが、衆議院はその使命をまったく果たさないまま、採決を強行した。
 参議院が同じ誤りを繰り返してはならない。
 秘密保護法案は、参議院において、全面的な批判・検討にさらされ、廃案にされなければならない。それこそ、国民が求める「良識の府」参議院の使命である。
 自由法曹団は、参議院が決然としてその使命を果たすことを求めるともに、広範な市民とともに、廃案のためにたたかう決意を表明するものである。
   2013年11月27日
      自由法曹団
        団 長 篠原義仁

 

  

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