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2012-01-18up

下北半島プロジェクト
映画『ミツバチの羽音と地球の回転』を下北半島で上映したい!

第17回

お正月に下北半島に帰省して考えたこと

 「美しい里山を子や孫に」「土地は売らない 使わせない」
 正月の三が日を過ぎるころ、下北半島・むつ市のとある国道を車で走っていたら、このような文面の立て看板が目に飛び込んできました。崩れかかった古びたものではなく、真新しい白地に、ひとの手による黒の文字。細く長い一本の柱に掲げられた大きくもない看板が、積もる雪を下にはっきりとこちらを向いている。それが、ある集落の端から端まで数百メートルにわたり、2、3メートルほどの間隔をおいて、つまり数十本近くが、道行くひとのほうを向いて道路沿いに立てられていました。車の助手席から身を乗り出すようにして一枚、また一枚と流れる文字を読んでいく。そして次に即飛び込んできたのは「平穏な生活を壊すな産廃」「産廃の毒性はいつまでも残る」という言葉でした。

 むつ市内にあるこの地区は、左右まわりが森に囲まれており、国道に寄り添うように集落が点在しています。山菜の季節など例外はあるでしょうが、それでも国道を逸れて森のなかに入っていくことはほとんどのひとにとって滅多にないように思います。そういった環境に目をつけたのか、産業廃棄物のための土地(保管なのか埋立処分なのかなど詳細は分からず)を買おうという外部の動きがここ十数年、この地区にたびたび忍び寄るようになっています。今回も、そういった申請が自治体にあったことを発端に住民が動いた、という流れのようです。

 産業廃棄物を人目を忍んで山のなかでどうにかこうにかしよう、ということと同じなのかはわかりませんが、実は「使用済み核燃料中間貯蔵施設」の建設が予定されているのもこの地区から目と鼻の先で、国道から逸れた森の中にその場所はあります。すぐそこです。現在、建設工事は止まっているようですが今後は工事再開に向け準備が進められる方向です。

 下北の人間は原発に対してまだ口をつぐんでる、とか、ますます話題にしづらい空気になったとか、なんでこんな状況でも何も変わらないんだとか、事故になったら…と真剣に考えてるのか、とかよく言われているし、私もそう思っている部分がありました。だからこそ、あの映画(「ミツバチの羽音と地球の回転」)の上映がひとつの風穴になってほしいとの願いも込めました。でも、よくも悪くも根はもっともっと深いんだとこの看板に思い知らされるのです。

 一方では美しい里山を子や孫に残したいと願い、化学による毒性に危機感を示し、抑えきれないのであろう怒りを言葉として外に伝える。こういう気概も理路もまだまだこの土地には根付いている。この事実に下北の未来を感じることができる。興味深いことに、行政としても産廃を自分のところに持ってこられることにいい気はしていないようだ、という話も聞きました。
 そしてもう一方で、すぐそこまで、もしくはすでに身に迫っているであろう、今も土や空気や水を汚し健康と生命を脅かし続ける原子力の潜在的危機には同じような反応が起こらない。どうしてこのような開きが生まれるのか、よくよく考え、向かい合わなければわたしたちはきっと一緒に前には進めない。
 だからこそ、わたしはいまここで単純に「脱原発」とだけは言えないし、そういうスタンスでもない。もっともっと、生きた言葉を私は育てていきたい。簡単にはいかないかもしれない、でも、この隔たりを飛び越えて前へは進めないような気がする。進んではいけないような気がする。なぜならこれがわたしたちの歩んできた歴史で、いまを変えたいのだと思うなら、ひとつひとつの悲しみや、矛盾や、ほころびに丁寧に向き合わなければきっと同じことを繰り返してしまうのだろうと思うからです。

 今年の私の目標は「下北半島との信頼関係を、一歩一歩、築いていく」です。ですので、昨年のように多くは報告できないと思いますが、そういうなかでもなにかぽつぽつと発信していければいいなと考えています。
 今年は下北では水面下で地道にやっていこうと思います。青森・下北の土地で逞しく生きる「点」と知り合い、学び、関係をつくり、自然で大きな「線」にしていく。友達になる。ネットワークにしていく。そういうことを時間をかけてやっていきたいと思っています。「こういうことやりたい!」という昨年の映画上映会のようなことも考えてはいますが、今年2012年、カタチとしてのなにかは出来ない・やらないかもしれません。優先したいことは地に足のついた関係づくり&まずは下北を知ること、だからです。

 と、年始に弁解しておきます! 

(Y子)

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お正月に故郷・下北に帰ったY子ちゃんからのご挨拶でした。
2012年、「下北半島プロジェクト」がどう進んでいくかはわかりませんが、
息長く、長期的なスパンで続けていくことが重要なのはたしか。
気長にお見守りいただくとともに、
「こんなことやったら?」のアイデアもぜひお寄せください!

ご意見・ご感想をお寄せください。

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